函館渡辺病院夏祭り2007

訪問日:2007年8月7日(火)

場所:函館渡辺病院東棟駐車場

盆踊りの主催者にもいろいろあるが,病院もその一つである。お盆には多くの患者が外泊するので,盆踊りは時期を少しずらして行われることが多い。

函館は北海道では珍しく7月盆を採用している地域である。もともと函館では,明治6年に新暦に改められた際には旧暦の7月15日にあたる日をお盆としていたようだが(いわゆる旧盆),明治43年,月遅れの8月13日とすることに決められた。ところがこれだと函館八幡宮の例祭日とかち合うというので,大正6年,各寺院協議の上,新暦の7月13日をお墓参りとするよう各壇家に通達した。以来,函館では墓参りは7月13日に行うこととなっている。

盆踊りは7月から9月までの長期にわたって行われるのが函館の特色だったが,近年では8月に入ってから行うところが多いようである。これは,かつて開港記念日の7月1日に合わせて開催されていた港まつりが,例年天候不順に悩まされるため,昭和41年から8月に移行したことと関連があるように思われる。最後は9月中旬の亀田八幡宮例大祭の盆踊りで締めくくられる。

函館の盆踊りは,北海道の標準である「子供盆踊り(子供盆おどり唄)+大人盆踊り(北海盆唄)」による2部制を採用していない。特に「子供盆おどり唄」は,道南地方にはまった普及していないと言われている。函館の人たちは札幌のことを奥地と呼ぶが,たしかにもともとは函館が北海道の文化の出発点だったわけで,子供盆踊りなり,北海盆唄なり札幌方面で生まれた新しい文化を受け入れることには抵抗があったのかもしれない。

しかし,だからといって,盆踊りに関して函館独自の何かがあるかというと,これといった盆踊り唄はなく,「炭坑節」など数曲を交互にかけているというのが実態である。盆踊り自体,北海道の他の地域ほどに盛んではないようで,ある意味,本州の盆踊りと状況がよく似ているといえる。

函館渡辺病院は,湯の川温泉の一角に建つ,患者・職員総数1000名を超える大病院である。敷地内にはバザーや売店,ヨーヨー釣りのコーナーなどが出て賑わっていた。櫓のスピーカーからは「北海盆唄」「花笠音頭」「東京音頭」「炭坑節」という全国に名だたる盆踊り唄が交互に流れていた。さすがは函館である。

18:05〜18:35 盆踊り第1部

踊りが始まった頃にはやや寂しかった会場も,徐々に患者さんたちが病棟からで出てきて賑やかになってきた。

曲は「函館みなと踊り」「いいんでないかい−函館港唄−」「北海盆唄」「炭坑節」の4種類で,各2回ずつ踊られた。「函館みなと踊り」と「いいんでないかい−函館港唄−」は函館港まつりのパレードで使用されている曲である。「北海盆唄」は地元湯の川出身の佐々木基晴歌唱のテープが使用されていた。

「炭坑節」は赤坂小梅が昭和22年に吹き込んだレコードが大ヒットし,一躍日本でいちばん有名な盆踊り唄になった。今日使用されていたのは,後年小梅がステレオで再吹き込みしたもので,初版の「月が出た出た三池炭坑の上に出た」が「…うちのお山の上に出た」に修正されている。

それぞれ振り付けの違うこれらの曲を,参加者たちはきちんと踊っていたことからすると,やはりこれらの盆踊り唄が函館では定番なのだろう。

函館みなと踊り動画(2.4MB)
北海盆唄動画(1.9MB)
炭坑節動画(2.4MB)

18時35分,休憩に入り,参加者にスイカが配布された。

18:40〜19:10 津軽三味線演奏会

続いて特設ステージで民謡の演奏会が行われた。ソーラン節,米節,ナット節,じょんがら曲弾き,りんご節,鱈釣り節と演奏され,最後に江差追分の前唄,本唄,後唄が踊り付きで披露された。これはなかなか素晴らしいものだった。

19:10〜19:35 盆踊り第2部

日も暮れて,だんだん盆踊りにふさわしい雰囲気になってきた。第2部は,先ほどの民謡のグループが演奏する「炭坑節」からスタートである。今度は「月が出た出た三池炭坑の上に出た」と唄っていた。その後は再びテープ演奏で,「函館みなと踊り」「いいんでないかい−函館港唄−」「北海盆唄」「炭坑節」が1回ずつ踊られた。

最後に函館名物「いか踊り」が踊られた。これは港まつりのパレード用として昭和56年に創作され,昭和61年に東京でレコーディングされたものだが,およそ踊りと呼べるようなものではなく,ただ飛び跳ねているだけなので,盆踊りに使うのはどうかと思う。

炭坑節動画(生演奏,3.1MB)
函館港唄動画(2.4MB)
いか踊り動画(3.1MB)

19時37分,主催者より挨拶があり,病院の夏祭りは無事終了した。