[富良野・美瑛特集]  [番外・知らなくても困らない「上」富良野の言葉]

知らないと困る富良野の言葉

 今の時代,日本を旅行するのに言葉で苦労するという人は少ないと思いますが,観光客と地元の人の会話で,しばしば言葉が原因で情報が伝わっていない様子を耳にします。

 言葉の問題の一つにいわゆる北海道弁がありますが,これはよく知られていますし,紹介しているホームページも多数ありますから,ここでは取り上げません。このページでは地名などの固有名詞について思いつくままに紹介したいと思います。

市町村名

よみ 意味
富良野 ふらの なんのことないと思われるかもしれませんが,ここからして観光客と地元の人の認識は違います。地元で「富良野」といえば,あくまでも「富良野市」を指します。外の人は上富良野や中富良野を含めて富良野と言うようです。地元でそのように沿線市町村をまとめて言う場合には「富良野沿線」という言い方をします。
富良野沿線 ふらのえんせん これは,北から上富良野町,中富良野町,富良野市,南富良野町,占冠村を指します。上川南部も同じ範囲です。美瑛町は上川中部で富良野沿線には含まれません。
三富良野 さんふらの サンフラワーみたいですが,上富良野町,中富良野町,富良野市の3市町を指します。
上富良野 かみふらの 字で書いてもわからないのですが,地元の人は「かみふらの」と非常に滑らかに言います。これに対し外の人は「かみ・ふらの」と富良野の前で一呼吸置きます。そもそも上富良野の存在自体があまり知られていないので,私も町外の人には「出身は富良野です」ということにしてありますが,実はこれには非常に抵抗を感じています。「かみふらの」と言ってもわかってもらえず,「北海道の真中にあって,北の国からで有名な…」と説明してやっと「あの富良野ね」とわかってもらえます。中富良野についても同じことが言えるでしょう。
上富 かみふ これはもっとも重要です。地元の人は自分の町のことを「上富良野」とはまず言いません。ほとんど「かみふ」で通っていて,自分の町が上富良野だと思い出すのは年に1回,年賀状を書くときぐらいでしょうか。あまりにも「かみふ」がポピュラーなので,町名を「かみふ町」に変えようという動きがあったぐらいです。
しかし,これが観光客と地元の人のコミュニケーションを妨げている大きな原因で,地元の人はごく普通に「かみふ」と言いますが,観光客は全くわからないことが多いようです。
中富 なかふ 上富と同様です。この省略形が通用する範囲は非常に狭く,たぶん富良野盆地の中だけです。旭川ではほとんど通じません。なお,富良野を略して「ふ」と言うことはありません。
南富良野 みなみふらの いちおう町の名前なのですが,地元ではほとんど使うことがありません。というのは南富良野は,幾寅,金山,下金山,鹿越,落合などそれなりに大きな集落が点在しており,町の中心部はあまりはっきりしていないからです。したがって,直接集落の名前で呼びます。単に南富良野という場合には役場のある幾寅を指します。
南富 なんぷ 同様に,上富,中富に比べると「南富」の使用頻度は低いです。南富と言う場合は,富良野高校に対して南富良野高校を指す場合が多いようです。これが転じて町のことを言う場合にも南富と言うようになったのだそうです(やや自信なし)。
占冠 しめかっぷ 正しくは「しむかっぷ」です。占冠の人が実際にどう言っているのかは知りませんが,私など上富良野の人は皆「しめかっぷ」と言っていました。1981年に石勝線が開通し駅名板に「しむかっぷ」と大きく書かれましたので,以降「しむかっぷ」が浸透してきています。また近年,北海道の地名をアイヌ語の読みに戻そうという動きの中でも「しむかっぷ」と呼ぼうということになってきています。その際NHKのニュースでも「占冠を漢字の読みに合わせて"しめかっぷ"と読む人が多い」と報道され,逆に「しめかっぷ」の存在が公認された形になりました。
美瑛 びえ
びえー
ふりがなは「びえい」なのですが,地元の人は「びえ」または「びえー」と言います。微妙な差ですが,言いかた一つで地元の人か観光客かすぐに判別できます。
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その他地名

よみ 意味
省略形
べべ べべ 中富良野町ベベルイのこと。ラベンダー羊ケ丘があるところです。知らなくても支障はないと思いますが,初めて聞くときには何だべと思うでしょう。
がわ 旭川の略です。地元の高校生がカッコつけて言ったりします。岩見沢をザワと言うのと同じでしょう。なお旭川(あさひかわ)については「あさひがわ」「あさしがわ」などいろいろ言い方があります。
読み方が難しいもの
瑠辺蘂 るべしべ 北見の留辺蘂と同じ語源で,美瑛町にあります。「道道瑠辺蘂上富良野線」というのがありますが,北見に行けるわけではありません。
西中 にしなか 「にしちゅう」ではありません。西中富良野(中富良野の西の意)の略だそうです。南中旭中東中(上富良野町)も同様です。
鈴和 れいか 中富良野町の字名。
布礼別 ふれべつ 富良野市,麓郷の近く。
麓郷 ろくごう 北の国からのロケ地であまりにも有名ですが,ドラマでは麓郷の地名はあまり出てきませんし,字を見てピンとくる人は意外に少ないのではないでしょうか。
苫鵡 とまむ 有名な占冠村のトマム・リゾートです。もともと苫務と書いたように思いますが,お土産品で苫鵡という字を目にすることがあります。これは「苫小牧から鵡川をさかのぼったところにある」ことを連想させ,当て字として秀逸だと思います。
地図にない地名
美馬牛峠 びばうしとうげ 国道237号,美瑛−上富良野町界。道道が分岐するので道の案内では頻出。
深山峠 みやまとうげ 国道237号の峠ですが,場所があいまいです。以前は「深山そば」がある場所を指していたように思いますが,ラベンダー畑やトリックアート美術館などいろいろできてからはそちらを指すことが多くなったようです。深山が読めない人も多いようで「深山そば」を注文するのに「シンザンそばください」と言う人もいるそうです。
三の山峠 さんのやまとうげ 国道38号樹海峠のこと。地図には樹海峠と記されていますが,地元の人は三の山峠と言いますし,道路の標識にも三の山峠と書かれています。
バイパス バイパス 国道237号上富良野パイパスのこと。1988年開通。富良野沿線にはバイパスが一つしかないからこれで通用しています。
山手線 やまてせん 道道298号上富良野旭中富良野線のこと。国道237号とともに富良野盆地を貫く2大幹線の1つで,斜線道路旧十勝国道という別称を持ちます。美瑛・上富良野方面と麓郷・南富良野方面を結ぶ裏道で,トラックなどの交通量も多いです。
樹海 じゅかい 富良野市の南部,旧東山村の一帯を指し,樹海西小学校,樹海東小学校,樹海中学校があります。東山の人たちは「樹海の出身です」とか「樹海から来ました」などと普通に言うのですが,初めて聞く人は驚きます。
その他
役場 やくば 町村出身の人には常識なのですが,町村では市役所ではなく役場といいます。観光客の中には地元の人ことを市民という人もありますが,これも町民村民と言います。ちなみに,北海道の住民は道民と言います。きちんと使い分けてください。いいかげんにされるのは地元の人にとってあまり感じが良くありません。
本町 もとまち 上富良野町の町名。「ほんちょう」ではありません。他に大町,中町,錦町などいろいろあります。上富良野町本町では町が続いておかしいように思われるかもしれませんが,はじめが「ちょう」で次が「まち」と読みますので,町民は違和感を感じていません。美瑛も同じです。なお,北海道の市町村で町を「まち」と読むのは森町(もりまち)だけで,他都府県と違う点の一つです。
涙橋 なみだばし 道道581号留辺蘂上富良野線の上富良野橋のこと。上富良野橋という正式名称はほとんど知られていません。涙橋という名の由来は諸説ありますが,大正15年の十勝岳噴火にまつわるものであることは間違いありません。このときは噴火から約20分で市街地まで泥流が押し寄せ,死者・行方不明者137人を出しています。一説には上流から流れてきた遺体が多くたまったのが涙橋のたもとだと言われています。今も町内でお葬式を上げる時には,霊柩車は必ず涙橋を通って火葬場へ向かっていきます。
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観光地

読み 意味
富田さん とみたさん ファーム富田のことです。最も有名なラベンダー園の一つですが,地元の人は「ファーム富田」とは絶対に言いません。「富田さん」あるいは「富田ファーム」と言います。これは重要です。
会田さん あいたさん 十勝岳温泉凌雲閣のこと。経営者の名前で親子2代で温泉を切り開いた功労者です。なおここの露天風呂は道内の露天風呂の先駆けともいえるものですが,野天風呂(のてんぶろ)と言う人もあります。
菅野さん かんのさん 美馬牛峠にあるかんのファームのこと。ラベンダー,ポピーで有名です。
田中山 たなかやま 日の出山公園。ファーム富田と並ぶラベンダー園。今ではほとんど使われなくなりましたが,ある年代以上の人は日の出山とは言わずに田中山と言います。なお日の出山公園も単に日の出山ということが多いです。
北星山 ほくせいやま 中富良野町森林公園,町営ラベンダー園がある山。市街地のすぐ裏にあって,冬はスキー場に,夏も観光用にリフトが運行されます。
なまこ山 なまこやま 富良野市の朝日ケ丘公園のことです。なまこに形が似ていることが由来です。
清水山 しみずやま 地図に載っていないことが多いのですが,ふらのワインハウスのある山です。
大雪山 たいせつざん 道内最高峰・旭岳のこと。もちろん大雪山国立公園全体のことをいうこともありますが,その場合は単に「大雪」と言うことが多いように思います。またその中間の意味で旭岳や,北鎮岳,北海岳の周辺を指すことも多いようで,この場合十勝岳連峰は大雪と別扱いになります。美瑛は大雪のイメージがありますが,上富良野まで来ると大雪のイメージにはそぐわなく,上富良野から見える山々は十勝岳連峰と言ったほうが適当です。読みは「たいせつ」でも「だいせつ」でもどちらでもかまいません。濁音にするのがこの地方の人の癖なのかもしれません。「とうや」は「どうや」,「まんせいかく」は「ばんせいかく」,「ひろお」は「びろお」,「クレーン」は「グレーン」とも言います。
ケンメリ けんめり ケンとメリーの木のこと。美瑛のパッチワークの路の中でも最も有名な木で,1本の木を見るために大駐車場が整備されています。
新プリ しんぷり 新富良野プリンスホテルのこと。使用頻度は非常に高いです。富良野でいちばん大きく立派なホテルです。
トーアス とーあす 富良野ホップストーアスホテルのこと。上富良野の丘の上にあり,客室からの眺めが良いです。
白銀 はくぎん 吹上温泉保養センター・白銀荘のこと。日帰り入浴に向く温泉で,露天風呂の充実度は道内屈指です。近くに北の国からにも登場した有名な露天風呂があります。
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以上,思いつくままに書き並べてみましたが,まだまだ他にあると思います。そしてこういった地名の愛称のようなものは,富良野・美瑛にだけではなく,どこの地域にもあるということを忘れないでください。

●観光客と地元の人の対話に思うこと

 富良野・美瑛は道内を代表する観光地に成長したため,北海道で最初に訪れる地が美瑛・富良野だという観光客も多くいます。そのため,まだ北海道のことをよく知らずに来る人も多いようです。

 私は高校の3年間,上富良野−旭川間を列車で通学していましたが,観光客が驚いている様子をいつも見ていました。たぶん新千歳空港から特急で旭川に来るか,旭川空港から来るかして富良野線に乗りこむのでしょう。

 まず,列車に乗り込むなり,1両〜2両の編成の短さに驚きます。そして列車が走り出すと,単線であることに驚き,行き違い駅では数分の停車があるのですが,子供などはどうして列車が駅に停まったまま動かないのか不思議でしょうがないようです。そして車窓を見るたび「田舎だ,田舎だ」を連発します。実は観光客に「田舎だ」と言われるのは,地元の人にとってあまり気分のよいものではありません。

 富良野線というのは,北海道のローカル線の中でもかなり都会的で,本数も多いほうです。富良野線に乗って田舎だと叫ぶ人には,もっと北海道をきちんと見てほしい,そう思います。

 列車の中では観光客と地元の人がしばしば会話をするわけですが,これが実に通じないのです。方言の問題よりも,観光客と地元の人の意識の差,そして上に挙げたような地元特有の表現が原因になっているようです。地元の人でも一度都会暮らしをして戻ってきたような人は配慮があるのですが,学生やずっと町の中で住んでいる人にはそういう配慮がないのでまったく話しが通じないこともあり,聞いていてもどかしく,つい口をはさみたくなるときもあります。

 観光を町の産業として育てるなら,住民の側が観光客への対応を勉強することも必要でしょう。しかし,富良野・美瑛の場合,農家をはじめとして日常の生活そのものが観光客にとっては観光の対象となっているのであって,住民は観光客から直接利益を得られるわけではありません。その点で観光客を好ましくないと思っている住民もいます。観光パンフレットに「畑への立ち入りはご遠慮ください」とわざわざ書かれているのはそういうことです。したがって,観光客には「見せていただいている」という心を持ってほしいと思います。

 観光を楽しむには観光客の側が勉強をすることが必要でしょう。上に挙げた言葉の例など,覚える必要はありませんが,このような言葉があるということはぜひ知っておいてください。そういう自分の郷土にはないものを見聞きすることがまさに観光の原点なのです。そして,観光客,地元の人,ともに柔軟な頭を持ってコミュニケーションをはかり,お互いに成長できれば最高だと思います。


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