北海観光節旅行記小さな旅行記 2004.12.31

第18回 北の大文字(1)

2004年12月31日〜2005年1月1日

この3年,年越しは中尊寺に門司港カウントダウン,東京ミレナリオと道外で迎えていたが,今年は年末年始の休みが短いので道内に留まることにした。さて,新年をどこで迎えるか。北海道神宮に参拝しようか,長万部の花火大会にでも行ってみようかと思ったりもしたが,考えてみればうちの町にも立派な年越しのイベントがあるのである。

今をさかのぼること17年前,1987年といえば「北の国から」効果で観光客が雪だるま式に増え,上富良野音頭が突然サンバ調にアレンジされるなど,町全体が何か変な方向に向かっているような気がしていた頃だった。そのような中で生まれた北の大文字は,誰の思いつきなのか知らないが,そもそもが京都の真似事であり,本来ならば家族揃って紅白を見て除夜の鐘を突き,初詣をするという大つごもりの夜を邪魔する,今で言えばヨサコイと同じようなろくでなしのイベントだと思っていた。

だから北の大文字は今までまともに見たことがなく,父や妹が大文字設営の手伝いに出かけた後,静かに紅白を見て大晦日の夜を過ごしていた。

ところが1999年元旦のNHK「ゆく年くる年」で北の大文字が生中継される。日本で最も厳粛なテレビ番組といわれる「ゆく年くる年」で紹介されるというのは大変なことである。これは一度しっかりと北の大文字を見なければならないと思いつつ今まで機会がなかったが,今年ようやくその機会を得た。

23時10分 上富良野神社

23時30分に上富良野神社で御神火の出発式がとり行われるとのことで,紅白歌合戦の途中で家を出発する。

 

既に関係者が待機しており,かがり火で暖を採っていた。一般の見物客はおらず所在ない。やがて警察官がやってきて「今日は何人」と尋ねられる。わからないので向こうの関係者に聞いてもらうよう願う。

23時30分 出発式


御神火を授けられた実行委員会会長が社殿から出てきた。


篝に御神火を灯す。


伴走者が松明に御神火を授かる。

誓詞が読み上げられる。

144名の犠牲者を出した大正15年の十勝岳噴火を思い起こし,山を鎮め町民の幸せを願うという大文字焼きの目的が述べられた後,5つの願いが唱えられる。

一,町民の健康とご多幸を祈願する

一,十勝岳の安全を祈願する

一,農業の豊作を祈願する

一,商工業の発展を祈願する

一,若者が一体となり,町の発展を祈願する

 

北の大文字は商工会青年部が始めたイベントである。願いの言葉を聞いて町全体が明るい希望に満ちていたあの頃を思い出した。

23時35分 神社出発

「御神火ランナー」というので,猛スピードで日の出山へ駆けて行くのかと思ったら,子供に合わせてゆっくりとした足取りだった。

前後を警察官に護衛され街の中を歩いて行く。

渋滞気味の日の出山入口。日の出山の駐車場は既に満車で,少し離れたWE'Sの駐車場に回されていた。

続々と集まる見物客。

 

既に会場にはたくさんの人が。23時から豚汁,ココア,綿アメの無料サービスが行われている。

しかし寒い。写真に白い湯気が立ち込めているが,これは何かを煮炊きしているわけではなく,人間の息である。気象台の観測によれば,このときの気温は-16℃。-16℃の中で綿アメを食べるとどんな感じになるのだろうか。


御神火の入場。

大きな松明に点火。ここでまた,5つの願いが読み上げられる。

音声:北の大文字5つの願い(wav,60秒)

安政太鼓がドコドコとなる中,御神火ランナーがスポットライトに照らされて斜面を登って行く。

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