北海観光節>小さな旅行記>JRとバスで巡るラベンダー先どり紀行
「かみふらの周遊観光バス」は昨年から運行が始まり,今年は7月1日から8月6日までの土曜・日曜・祝日に運行される。午前,午後の2コースあり,それぞれ500円で上富良野町内の主な観光スポットを巡ることができる。
大変魅力的なバスなのであるが,まったく宣伝していないので知る人は少ない。
現在富良野・美瑛エリア内を運行している定期観光バスには次のようなものがある。
運行主体 | コース名 | 所要時間 | 料金 |
JR北海道 | ツインクルバス美瑛号丘コース | 55分 | 600円 |
ツインクルバス美瑛号たなたび拓真館コース | 1時間30分 | 600円 | |
ツインクルバス富良野号コース | 3時間50分 | 1000円 | |
かみふらの十勝岳観光協会 | かみふらの周遊観光バス花人コース | 2時間10分 | 500円 |
かみふらの周遊観光バス四季彩コース | 2時間5分 | 500円 | |
ふらのバス | 北の国から丘陵地帯コース | 2時間40分 | 1200円 |
ふらの(花)・びえい(丘)コース | 5時間 | 1700円 |
※ツインクルバスはJRの乗車券類を持っている場合のみ利用可。
近年これらのバスは外国人専用となりつつあるが,なにも日本人の乗車を拒んでいるわけではなく,わたしはむしろ日本人にもっと利用してほしいと思っている。
富良野・美瑛エリアを旅行する場合,マイカーあるいはレンタカーが必須だと考えている人がいるが,これらのバスとJRを利用すれば十分に観光スポットを巡ることができるし,むしろ富良野・美瑛エリアを観光するにはバスやJRのほうが適していると言える。
定期観光バスを利用するメリットには次のようなものがある。
観光旅行に効率を求めるのはいかがなものかとも思うが,仮に効率を求めるならば,マイカーやレンタカーよりもバスのほうが断然有利である。同じ時間で,周遊バスと同じコースを車で巡るのはまず不可能と言って過言ではない。車の場合,まず道に迷う可能性がある。また観光地に着くたびに駐車場に入れるのに時間がかかり,さらに計画を立てて回ったとしても,よっぽど強い意志を持った人でもなければ,道中の景色やソフトクリーム屋などに気をとられて時間が延び延びとなり,結局いくらも見れないで一日が終わってしまうのである。その点バスは,最も効率の良い経路を通り,観光スポットの目の前で停まるので駐車場から歩く必要もなく,さらに見学時間も決まっているので,無用に時間が過ぎていくこともないのである。
富良野・美瑛エリアが従来型の観光地と異なっているのは,観光地が点として存在しているのではなく,エリアのすべてが面的な観光地になっているということである。従って,移動中の車窓も観光の重要な要素になるが,自分で運転していては車窓を十分に楽しむことができない。また,運転しない人であっても,バスの車窓は乗用車よりも高い位置にあるため,見えてくるものがまったく異なり,バスを利用する価値は大きいのである。
これらのバスにはバスガイドが乗車して,さまざまな解説をしてくれる。札幌発着の安ツアーなどの場合,質の低いバスガイドにあたることもあるが,地元発着の定期観光バスの場合,専属のバスガイドが乗車しているので,地元のことはすべて心得ていて,コマーシャルやドラマのロケ地情報など基本的なガイドはもちろんのこと,地域の人の暮らしのこと,畑の作物のことなどにも解説が及ぶ。観光とは目に見えるものがすべてではなく,こうした説明を聞きながら風景を感じることで,より深い感動を味わえるのである。
上富良野駅の改札をくぐると,周遊バスのチラシを持った観光案内所の係員が,気合い万端の様相で迎えてくれた。
「バスに乗りますか」と聞かれて「はい乗ります」と答えると,逆に少々うろたえた様子で,ソフトクリーム屋の帳場で乗車券を買うよう案内された。
わたしが今年最初の客になったようで,不慣れな手つきで乗車券に領収印を押してくれた。
記念乗車券。この券を提示すると,フラワーランドかみふらの,トリック・アート美術館,後藤純男美術館の入館料が割引になる。
駅前観光案内所の前で周遊バスが待っていた。
バスに乗り込むと,運転手さんが
「この周遊バスは今日から運行です」「お客さんが今年最初のお客様です」と言われた。
ほかの乗客はゼロ。まったく宣伝していないので,ほかに乗客がいるとすれば関係者だと思っていたが,ゼロとはひどい。
バスガイドはついていないが,運転手さんの後ろに座ればいろいろ案内してあげますよと言われた。
バスはいきなり銀座通りに入る。
どこから来たのかと問われて札幌だと答え,どこでこのバスを知ったかと聞かれて,昨年から知っていたと答えた。
このまま余所からの旅行者を装うことは無理だと思い,上富良野のことはよくご存知かと聞かれたとき,「地元ですから」と白状してしまった。運転手さんはかなりガッカリした様子だった。
バスはふらのバスの車両を使用しているが,運転手さんはアルバイトで雇われているらしい。
昨年は東洋系の外国人が主な利用者で,日本人は富良野に来て初めてバスの存在を知った場当たり的な観光客がわずかにいた程度とのこと。ラベンダーの最盛期には満員になったこともあるという。
まずは,第一目的地の日の出公園に向かう。
日の出公園
日の出山はラベンダーの時期になると山頂への車道に交通規制がかかるが,周遊バスは通行が許可されている。
まるで空を飛んでいるかのようなダイナミックな車窓が展開する。
かみふらの八景,日の出山公園。ここで25分間の見学タイムとなる。
ラベンダーはまだ開花しておらず,観光シーズンを前にして除草や中耕の作業にいそしんでいた。
この間に,バスは下の駐車場に移動する。
日の出公園11時00分発。北27号道路をまっすぐ西進して,フラワーランドに向かう。
今から106年前,私の家が入植した場所がちょうど写真右手の場所だった。当時家の前で官設鉄道十勝線の建設工事が行われており,祖父の祖母は餅をつき大福にして人夫に売り歩き,生活の足しにしたという。この土地も大正15年の十勝岳噴火で泥の海と化し,終戦後までしばしの間,上富良野を離れることとなる。