北海観光節旅行記釧路発鹿児島ゆき 列島縦断の旅

鹿児島本線


JR鹿児島本線二日市駅

冬はうれしや 二人向って 雪見の酒
苦労しらずの 銀世界
話も積もれば 雪も積む
チョイト 解けますこたつ中
「春はうれしや」

ここまで,年越しカウントダウン,初詣でとこなしてきたが,何か物足りない気がする。昨年の中尊寺の印象が良すぎたからかもしれないが,新年を迎えたという感じがしないのである。

原因は明らかだ。雪と寒さがないためである。雪がなければ冬ではないし,特に夜は暗くて華やかさがなくなる。寒さも身を引き締めるという意味で重要だ。中尊寺ではビリビリくる寒さがあったからこそ,そこをあえてお参りに行く人たちには,「気」がみなぎっていた。

北海道の木古内では,毎年1月13日から15日にかけて,4人の若者が裸になって水をかぶる「寒中みそぎ」が行われる。ただそれだけの祭りなのだが,迫力はすさまじく,何百何千人という見物客を引きつける。水垢離をやってるときの行修者たちはまさしく神に見える。昨年の中尊寺もマイナス10℃くらいいってたと思うが,タイツなしで短いスカートをはいている女性が相当数いた。彼女たちには色気を通り越して神々しさを感じさせるものがあった。やはり神様の前ではいかに寒かろうと裸になるくらいの気概があったほうがいい。

しかしここらの生暖かい地方ではそのような気概を見せつける場面もなく,参拝者は覇気がなくだらだらとしており,厳粛な気持ちで参拝という雰囲気ではないのである。

二日市4:43発→大牟田5:48着 臨時列車初詣号 1両目 クハ810-4

 


暖かいうちに「梅が枝餅」を食べる。3つ目くらいまでは快調に飲み込んでいたが,5つ一気に食べると胸が悪くなった。

H氏によると,福岡から大牟田にかけては治安が悪く,夜中に初詣列車に乗ると,昨年西友元町店を賑わしたようなヤクザな人たちがたくさん乗ってくるという。特に大牟田はそういう人たちが多いから降りないほうが良い,とまでいわれた。

とりあえず車内は平穏で,鳥栖で半分くらいの人が下車した。

 
5:48大牟田着。たしかにガラは悪いが,ヤクザというにはあまりにもかわいらしい少年少女たちである。

後で聞いた話では,JRではなく西鉄の福岡〜大牟田のほうがすごいらしい。

大牟田6:05発→八代7:38着 普通列車 2両編成2両目 クモハ815-17

 
少年少女たちはお疲れのようだ。

ただいま,7時32分。本来ならば初日の出が望める時刻である。


 

一ツ世の中 かんなんしんくの 荒波越えて
男はどきょうでおいでなさい くよくよしたとてしょうがない いつか芽も出る花も咲く
うつり気な浮世のならいに 取り越し苦労はおやめなさい
なやみなんぞはこちゃしらぬ
意地と張りの心が それがゴショウラクタイ

アカチャカ ベッチャカ チャカチャカチャ熊本県民謡「おてもやん」

そうだよなあ。くよくよしたとてしょうがないさ。いつか芽も出て花も咲くさ。いま一度初心に帰り,心を入れ換えて新年に望みたい。

八代7:42発→水俣8:29着 特急なは 7両編成4号車 オハネ25-179

 

熊本を過ぎて八代まで来れば鹿児島はすぐだと思ったが,まだまだ遠い。ここで特急に乗らないと昼までに着かない。


八代海ぎりぎりを行く。向こうに見えるは天草諸島。


立席特急券で居場所がないので,しばらくデッキに立っていたが,元旦から立ちんぼとはあまりにも切ないので,何とか空き席を見つけて座った。乗客はけっこういたが,洗面所やトイレの故障も目立ち,かなりオンボロ列車だった。


47分間の乗車で水俣着。

水俣8:39発→西鹿児島11:10着 普通列車 3両編成1両目 クハ455-301

 
ボックスシートの急行系電車で約2時間半の旅路。最後の最後で汽車旅にふさわしい列車に出会えた。古い車両なので窓からすき間風が入ってくるが,さすがにここまで来ると暖かい。日が差し込むとポカポカとして暑く感じるほどだった。

川内駅にて特急つばめ1号通過待ちのため12分の停車。

古めかしい駅名板と新鋭特急車両 ホームの駅弁屋 駅前には南国系の植物

 

川内駅で駅弁を売っていることは知っていたが,元旦なので売っていないだろうと99%あきらめていた。ところがホームで駅弁屋が営業していたのだある。これはわたしのために駅弁を作ってくれたようなものだ。元旦から,ご苦労様です。どうもありがとうございますと,感謝をし,駅弁を一つ求める。

「べっぴんさん」という弁当で820円也。厚生大臣賞を受賞しているとのことで,中身の濃い,粋な駅弁だった。これまで,何のためにわざわざ鹿児島まで行くのかと疑問に感じていたが,この弁当を買えただけで鹿児島まで来た価値があったと思う。

11時10分,西鹿児島駅到着。

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