北海観光節旅行記映画・京極・流氷 北海道全駅下車の旅

清水沢

8時57分,スーパーとかち1号で新夕張駅到着。自由席からは続々と人が降りてきた。

みんな夕張行きの列車に乗り換えた。今日は夕張が1年でいちばん賑わう日だろう。といっても,1両の列車に全員が着席できる程度の混み具合である。

 
9時23分,清水沢駅到着。下車したのは数人,ほとんどの人はこの先夕張へ向かっていった。
清水沢駅の一連の手動閉塞装置は健在だった。

 
 

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2003

今年で14回目を迎え,動員数が2万人を越える一流の映画祭である。一度行ってみたいと思いつつ,学生のときにはこの時期,試験や論文の提出時期と重なり訪れることができず,今回初めての訪問である。

ともかくこんな山の中にたくさんの人が映画を見に来るというのは不思議な現象である。札幌から家族連れのマイカー族が押し寄せるのだろうか,あるいは道外から飛行機でやって来る人が多いのか,またあるいはいかにもオタクな人たちが集結する怪しい祭典なのか,興味があった。今回は,映画を楽しむというよりも,まず映画祭の雰囲気を感じてみたい。

清水沢健康会館


駅から徒歩10分弱で到着。

今日はここで丹波哲郎劇場が開催され,2本の映画が上映される。14時からは丹波さん本人の舞台挨拶がある。映画祭は13日から17日までの5日間開催されるので別に今日訪れる必要もなかったのだが,わたしは10時からの「砂の器」を見たいがために今日訪れることにしたのだ。

案内書には清水沢健康会館は混雑が予想されるので整理券が必要になりますとのことが書いてあった。しかし常識的に考えて,「砂の器」を見るために,朝の10時から500人もの人がここに集まるとは思われない。それでも,もし入場できなかったらどうしようという不安をいくらか抱えて会場へ向かった。


予想通り,がら空きだった。私は人と趣味が合わないことに関しては自信がある。しかし私の趣味はけっしてマニアックなものではないと思っている。「砂の器」は名作中の名作であり,今回の映画祭で上映される70本の映画の中でもいちばんの名作ではないかと思うのだが,えてして名作といわれるものほど人気がなかったりするものだ。

このあと上映まで30分ほどの間にもうすこし観客は増えたが,95%は地元のおじいさん,おばあさん,おじさん,おばさんだった。映画祭は市民から遠い存在になってしまっていると懸念する意見もあるようだが,ここで見る限りは市民は地域のお祭りとして映画祭に参加しているようだ。体育館の一角では清水沢商店街の人たちが炊き出しをやっていた。

映画は本格的なものだった。私が小学生のときなど,年に1回,町内の小学生1000人以上を集めて体育館で映画鑑賞会が行われたが,テレビを少し大きくしたぐらいの小さなスクリーンに安っぽい映画が映された。映写機の質が悪いのか,画面がチカチカちらつき,見ているだけで辛かった。それで感想文など書かされるのだからたまったものではない。この会場では写真に見えるスクリーンいっぱいに投影され,スピーカーも映画祭のために設置されたものなので,それなりのものだ。

「砂の器」は1974年,松竹の作品で,原作は松本清張である。1999年9月にテレビで放送されたのを一度見たことがあり,その直後に映画の舞台である島根県木次線沿線を訪れたので強く印象に残っている。
やっぱりいい映画だ。今回丹波哲郎劇場を開催するにあたり丹波さんご自身がこの映画を選んだというだけあって,この映画の中の丹波さんはかっこいい。寅さんでおなじみの渥美清や笠智衆もセリフは少ないが重要な役で出ている。

そして泣いた。どうも最近涙もろくなったようでしょうがない。私は大人になったら喜怒哀楽がなくなるものだと思っていたが,そんなことはないようだ。たしかに子供のような鋭い感受性はなくなり,夜も眠れぬようなショックを受けることは少なくなったが,そのぶん子どもの頃にはわからなかった意味がわかるようになったり,人生経験を積んでこその感動というものがある。大人になるのもなかなか楽しいことだ。

12時30分頃映画終了。このまま会場に残る人が多いようだったが,わたしは夕張本町方面に移動する。もしかすると臨時バスが出ているのではないかと期待していたが,地元客以外の人が数名という状況ではそんなバスがあるはずもなかった。


国道452号。こんな山の中で自動車販売店が頑張っている。


清水沢商店街。夕張本町に比べると幾分元気に見える。もともと農耕地の集落であり,炭鉱の街としては後発である。清水沢駅も多いときには1日に7000人の乗降客があったという。

 
13時1分発夕張行き列車に乗る。この列車は札幌から普通列車で来る場合のいちばん早い列車であるにもかかわらず,映画祭関係の客は数名しか乗っていなかった。

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