北海観光節旅行記東京クリスマス

人類は農耕を生業とするようになって,定住することができるようになった。それなのに,自分が生まれた町で働くということ,農耕民族として当たり前のように思われるこのことが,なぜこれほどまでに難しいのだろうか。大学の同期は就職でほとんど東京へ行ってしまった。私は高校に進学した時点で地元の町に就職することはあきらめざるを得なかったが,危ない橋を渡りながらも,何とか北海道に踏みとどまることができた。

しかし,当面北海道に住み続けられるという保障が得られると,今度は東京が妙に魅力的に感じられてくるものである。釧路に就職が決まったとき,私は一つの目標を持った。1年に1回東京に行くことである。東京は住むところではないが,たまに訪れて勉強する価値は大いにある。遊びや仕事ではなく,純粋に東京の文化を吸収したい。過去3年,その目標は一応達成してきた。

東京旅行は飛行機のバースデー割引の関係から,毎年この時期になる。今年は24日に休暇を取ることで4連休となり,ちょうどクリスマスに重なった。

日本人としてクリスマスを祝う必要があるのかどうかは疑問であるが,盆踊りや初詣はまともに経験したことがないにもかかわらず,クリスマスは子供のころから人並みに体験してきた。サンタクロースはうちにも来てくれたし,鯉のぼりがなくてもクリスマスツリーは家にあった。小学校1年生のとき,英語が堪能な叔母がラップランドのサンタクロースに手紙を書いてくれ,サンタクロースから大きな封筒が届いた。「ドラえもん」以外で唯一映画館で見たことのある映画が「サンタクロース」という昭和60年アメリカ制作の映画だった。大学1年までは毎年何らかの形でクリスマスパーティーに参加してきた。近年はクリスマスを一緒に祝う仲間もいなくなったが,聖夜には百貨店のおもちゃ売り場をのぞいて将来を夢見ていた。

宗教的意味合いは別として,世界中で日本ほどクリスマスを盛大に祝う国もないのではなかろうか。日本におけるクリスマスの本場はやはり東京である。今回の旅行ではクリスマスの名所を巡ることを主眼に東京を観光することにした。

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