北海観光節旅行記めざせ奥州,汽車旅千里

旅立ち

明日はお立ちか お名残り惜しや
大和男児の 晴れの旅

作詞:佐伯孝夫 作曲:佐々木俊一 唄:小唄勝太郎「明日はお立ちか」より

無事仕事納めの日を迎え,19時に帰宅。勝太郎さんの脳天にキンキンと響く全曲集を延々と繰り返し聴きながら出発の準備をする。1か月も2か月も前から多大な時間を浪費して時刻表と格闘しているくせに,肝心の細部がまだ煮詰まっていない。毎回そうなのだ。温泉はどこに入るのか,駅から温泉へはどう行けばいいのか,そういうことを一つ一つ調べていく。最近は旅行にパソコンを携帯して,旅先でインターネットから情報を入手する人がいるが,わたしは旅にそういう電脳機器を持ち込まぬ主義である。そのためあらゆる情報は出発前に調べておかねばならない。動く範囲が狭ければガイドブックを1冊持っていけば心強いが,広範囲であればガイドブックを何冊も持っていくわけにもいかないので,必要なページだけコンビニに行ってコピーをする。

そうした準備に追われるうちに日付は変って深夜2時になった。2時9分,ホームページの掲示板に今年最後の書き込みを行う。2時20分消灯。

 
 

2003年12月27日(土)

念入りに目覚ましをかけて4時20分に起きる。これは今までになく厳しい旅立ちになった。もしものことがあっては困るので,部屋を整頓し,机の上に旅行の予定を書き置く。

家から駅までは6km。歩いて行こうと思っていたが,さすがに今日はハイヤーを呼んだ。運転手のおばちゃんは朝からやたらに元気がいい。

「失礼ですがお客さんおいくつですか?」
「26です。」

とっさに歳をごまかしてしまった。実はこの日わたしは27歳の誕生日を迎えたのである。23,24,25,26と何となく年を取ってきたが,26から27になるのは一つの大きな節目だと先輩たちも言う。しかし自分が成長していないのに歳を取るというのは嫌なものである。最近は栃東が11月場所で優勝,ゆず,森山直太郎,はなわが紅白歌合戦に出るなど同い年の連中が活躍している。何かあせりを感じるのである。


釧路駅まで1350円。


5時30分,釧路駅到着。


5時半に玄関が開いたばかりで,ひっそりとした改札口。

釧路6:00発→芽室9:35着 根室本線滝川行普通列車

5時50分,1番ホームに札幌からの特急まりもが到着。まりもからの乗り換え客を受けて5時55分発根室行快速はなさき,5時59分発網走行普通列車,6時00分発滝川行普通列車が次々に発車する。

直別付近で朝日を見る。 9月の十勝沖地震で被害を受け,建て替えられた直別駅。

年末とあって朝早いこの列車も帰省客と旅行客で盛況であり,終始1ボックスに1人以上の乗客があった。わたしの向かいには図体の大きい外国人が居座っている。風邪をひいているのかせきを頻繁にしている。外国人でもせきをするんだと意外に思ったが,体が大きいだけにやかましい。途中で空きボックスを見つけて避難した。

池田で陸別から来た列車を後ろに連結する。 帯広で24分間停車。ここから快速狩勝となり列車番号も変る。

ここまでは一年前の旅行とまったく同じ行程である。


芽室到着。

この列車にずっと乗っていても新得から先に続く列車がないので芽室で途中下車することにした。前から一度来てみたかったスーパー銭湯に向かう。

スーパー銭湯 温泉鳳乃舞

 

温泉のガイドブックなどにはあまり載っていないが,年間24万人の利用者があり1億円近い売上げがあるという人気温泉である。住宅建築の会社が副業で始めたというだけあって建物にもお金がかかっていそうで,露天風呂は芸術的な造りだった。お湯は28.8℃の源泉を沸かして贅沢にかけ流しで利用している。スーパー銭湯と名乗るのがもったいないような,本物の温泉だった。

芽室町は人口約18000人,帯広のベットタウンとして発展している町である。近年駅前に「めむろーど」という立派な複合商業施設ができたが,入ってみて愕然とした。一昔前の田舎のスーパーそのままである。これなら上富良野のダイイチ(わたしの実家の近くのスーパー)のほうがあかぬけしている。靴下がほしかったので衣料品コーナーをのぞいてみたが,田舎の店らしく26〜28cmは「大きいサイズ」として特別扱いであり(田舎の呉服屋は年配の人を対象にしているので若い人に合うサイズを扱っていない),色や銘柄もほとんど選択の余地がなかった(田舎の店はそういうものである)

 

芽室10:35発→新得11:08着 根室本線滝川行普通列車

ここからは,はにわ姿の女子高生2人と,おじさんと少年が乗り込んだ。席の埋まり具合は3割程度でのんびりとした雰囲気である。おじさんと少年は隣のボックスに向かい合わせで座った。おじさんはわたしがそう呼ぶには少し申し訳ないぐらいの歳だが,少年に向かって自分のことをオジサンと呼んでいた。オジサンは鉄道マニアのようで,時刻表を取り出し,少年にこれからの旅行のことを説明している。わからないことがあったらオジサンに聞くのも良いが,まず時刻表で調べてみなさいとか教育的な話しをしている。オジサンと少年はどういう関係なのだろうか。話しを聞いていると,どうやら普通列車で函館まで行くらしい。こりゃわたしとずっと一緒ではないか。
前のボックスには一人旅の女性が携帯電話の写真機でシャリンシャリンと景色の写真を撮っている。窓の向こうには日高山脈がきれいに見えている。後でわかったことだが,この女性も苫小牧まで同じ行程をたどることになる。

新得着。ここで昼食をとることにする。

新得そばで有名なのは「せきぐち」と「みなとや」だが,今日はまだ入ったことのない「みなとや」にしてみる。駅前まっすぐ3分くらいのところにある。

 

11時を少し過ぎたところだというのに,既にお客さんが何人かいた。天そば750円+ライス150円を注文。そばは太さがばらばらのいかにも手打ちという感じだったが,量がやや少なかった。

次へ