境内をゆっくりとまわっていると,時刻は既に1時45分になっていた。国道の渋滞は止まず,これから参拝に向かう人もまだまだたくさんいた。
高館義経堂
一度駅のほうに戻って義経堂に参拝する。先ほど前を通りかかったとき,町内会の人がたくさん繰り出しており,ぜひ寄っていってくださいと言われていたのだ。
時刻は午前2時をまわり,誰もいなくなっていたが,提灯の灯りでほのかに照らされた急な階段を上っていくと,義経公の像を祀ったお堂があった。高館は源義経の館があったところで,芭蕉が「夏草や兵共が夢の跡」と詠んだ場所だという。
熊野三社
中尊寺から毛越寺に向かう途中にある熊野三社。今年も御神酒が振る舞われていた。
毛越寺
平泉駅からまっすぐ続く参道には夜店が並んでいた。
福銭を授かり境内に入る。
時刻は2時半をまわり,人の波は引けていた。本堂の前ではお母さんと息子さんの2人連れがお互いに写真を取り合っていた。わたしも写真を撮るのに邪魔なので早くどいてほしいと思ったが,いつまでたってもその場を離れない。しかし,お互いに撮った写真を見ながら何度も取り直している様子は何とも微笑ましく,日本にもこんなに純朴な親子がまだいたのかと,だんだんいとおしく思えてきた。
駅前の芭蕉館というそば屋が営業していたので,今年初めてのお食事をここでいただくことにする。
店内には一人で参拝に来たらしい貴婦人がおり,破魔矢を嬉しそうに眺めたりしていた。仙台から来たそうで,今度友達と来ることになっているので,今日は下見を兼ねて参拝に来たのだという。もう感動して誰かに話さずに入らないという風で,店主に話しかけていた。
平泉はどの家も立派だと言っていた。店主によれば,世界遺産登録に向けて,家には格子戸を設けるなどいろいろ規制が厳しくなっているのだそうだ。2年後には毛越寺通の電線が地中化されるという。
彼女はまた,ネオンがなく,ケバケバしいものがなかったのに感動したとも言っていた。いちばん良かったのは「かがり火」を大事にしていることだと言った。
「ケバケバしいもの」というのは例えば,仙台の光のページェントのようなものを指しているのだろう。いまの世の中は,ともかく暗いところをなくして何でもかんでも明るくしなければ気が済まないようだが,陰影の価値がわかる人がいるということを知って嬉しかった。