北海観光節旅行記秋の湯殿山・尾瀬

21. 一ノ瀬

大清水の登山口。

入口に山神様があったのでお参りしておいた。沼田街道はここから三平峠,群馬・福島県境の尾瀬沼,さらに沼山峠を経て,会津の桧枝岐までほぼ直線的に道がついている。

江戸時代以前からの街道であるが,昭和に入ってから車道を通す計画となり,昭和40年代の前半,実際に途中まで工事が進められた。

この道路をめぐる経緯については,大清水休憩所の一室に説明板があった。

昭和46年に環境省が発足したことも幸いし,全国的な反対運動に発展した結果,工事は中止された。

大清水から先の車道完成区間については,長年一般車両の通行が禁止されているが,2011年から鳩待峠に集中している入山者の分散対策として,大清水〜一ノ瀬間に乗合自動車の運行が行われている。4年間の実験運行,試験運行を経て,今年から営業運行が開始となった。

一ノ瀬まで約3.5km,高低差240mの区間を,乗合タクシーが約30分間隔で結んでいる。乗ろうかどうしようかかなり迷ったのだが,エネルギー的に,あるいは地球温暖化ガス排出量の観点で考えると,残念ながらタクシーに乗ったほうが負荷が少なくて済む可能性が十分にある。というのは,歩くことで消費するエネルギーを食べ物から得る場合,その食べ物の生産から口に入るまでの過程で使用されている石油の量は,タクシーで使う一人当たりの燃料よりも多いかもしれないのである。車両は低公害車を名乗っており,定員いっぱいで乗るならば,歩くより車に乗ったほうがいわゆる「エコ」である可能性が十分に高い。

ただ,だからと言って自動車に乗ることが良いことのわけがなく,食にそれだけの石油を使っていることが大問題なのである。

大清水9:30発→一ノ瀬9:45着 乗合輸送

というわけで,30分待って乗合タクシーに乗ることにした。ところが切符を購入して財布に納めようとすると「しまうな」と言われ,5分前にはもう乗ってくれと,なかなか口やかましい。

乗合タクシーの運行に伴い,併行する旧登山道が歩く人に開放されていた。

車道を歩く人も多く,タクシーは歩行者優先でゆっくりと進む。

途中右手に奥鬼怒スーパー林道を分岐した。1990年の全通で,スーパー林道としては全国で最後に完成したものだという。

一ノ瀬

 

定刻より早く9時40分,一ノ瀬休憩所に到着した。標高1,426m。

 

売店は車両でのアクセスが可能ということで,値段は高いがメニューは豊富だった。自家製のキュウリやトマトもあった。

 

いよいよここから徒歩で進む。間もなく,三平橋を渡った。昭和45年9月完成とあり,2車線幅の立派な永久橋である。

車道は大きく右にカーブし,森の中に消えていた。この付近にも400台収容の大駐車場が造成される計画だったという。この先,三平峠の近くまで工事が進められたが,1997年に車両全面通行止めとなり,2000年から2001年にかけて,道路跡地に植林がされている。

種子落としマットを通って,地道の区間に入る。現在,沼田街道のうち一ノ瀬から沼山峠の約8kmのみが,歩くよりほかない地道として残されている。

川沿いには立派な擁壁が築かれており,旧街道としての風格を感じる。

しかし,やがて歩きにくい石の道となった。やはり旧街道といっても,生活道路や参詣道としてのいくつもの歴史が重なり合った熊野古道や六十里越街道とは異なり,尾瀬の道は基本的に登山道の色合いが濃いようである。

一ノ瀬を出て18分,岩清水を通過する。本来の岩清水は昭和46年にこの附近に到達した道路建設工事によって枯れてしまったという。

途中,20〜30人に会ったろうか。こんにちはと言ってすれ違う。

道は階段になったり,木道になったり変化に富んでいた。周りの木々はカラマツだ。

三平峠

10時21分,三平峠に到着。標高1,762m。距離にして2.5kmほどだが一ノ瀬から40分弱を要した。高低差が300m以上あるので,さすがに1km10分では歩けない。

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