第16回復活北海盆踊り

訪問日:2007年8月17日(金)

場所:岩内地方文化センター西側イベント広場

いま本州方面から陸路岩内を訪れようとすれば,長万部で特急を降り,普通列車しか走らなくなった山線に2時間揺られ,さらに小沢駅からバスに乗り換えてと,ずいぶん辺鄙な場所にあるように思われるが,日本海が本州と北海道を結ぶ主要な交通路であった時代には,道央の玄関口の一つとして重要な港町だったわけで,明治の半ばには既に人口1万を超えたいた。現在でも後志支庁所在地の倶知安町よりも人口ではわずかに上回っている。

町田嘉章・浅野建二編『日本民謡集』(岩波文庫,昭和35)では,北海盆唄について,「この唄は,元来,新潟県から高島町(小樽市)に移住した集団移民によって伝えられた『越後盆踊唄』の改作。小樽市から更に積丹半島を経て,岩内港に至る漁村一帯の唄となっている」と紹介されており,北海盆踊りの一つの源流の中に存在している土地である。

平成4年に町内の地域づくりグループ「若旺会」が,町を上げて行われていた往時の盆踊りを復活させた。各種旅行雑誌でも夏のイベントとして紹介されており,道内の盆踊りとしては屈指の知名度を誇っている。

初日は北海盆唄全国大会入賞者を迎えての盆踊り,2日目の今日は,仮装大会が行われる予定だった。

会場は国鉄岩内線岩内駅のヤード跡に整備された,岩内地方文化センターのイベント広場である。紅白幕が張り巡らされ,大相撲の巡業を思わせるような幟が並んでいた。おびただしい数の提灯が整然と飾り付けられていたが,あまりにも明るすぎて,盆踊り会場としては逆に情緒に欠ける感じがした。

会場に入ると浴衣を来た男性陣が大勢テーブルに座って歓談していた。はじめ岩内には大規模な民謡同好会でもあるのかと感心したが,浴衣が既に着崩れしており,温泉旅館の宴会場のような雰囲気だった。実は,彼らが盆踊りを主催している若旺会のメンバーだったのだ。

18:00〜19:15 子供盆踊り大会

18時にはまだ会場に子供たちもまばらで,本当にこれから子供盆踊りをやるのだろうかと心配したが,音楽が流れ始めると,浴衣を来た大人の女性が先陣を切って踊り出した。あいにくの霧雨の中,子供たちも徐々に集まってきて,18時46分,輪を2重にという指示が出され,さらに19時02分には3重にとの指示が出された。

音響装置は大変充実しており,持田ヨシ子盤のアコーディオンの深みある音がよく再現されていた。しかし,こういう会場でこそタンポポ児童合唱団盤を使えはどんなに素晴らしいかと思う。

霧雨のため予定が15分繰り上げられ,19時になるとお土産の配布が始まった。子供たちは踊りながらお土産を受け取り,踊りは19時15分まで続けられた。

子供盆踊り動画(3.0MB)

19時15分,地元選出道議会議員による挨拶。

19:18〜21:00 北海盆踊り

パチンコ屋のように明るい提灯の光がかえって寒々しく感じるが,この櫓はめっぽう雨に弱いようで,太鼓にはずっとシートがかけられている。結局,太鼓がなければ唄も歌えないので,今日は大人盆踊りもテープ演奏で行うとのこと。豪華な生演奏を期待していたのでがっかりしたが,このテープがなかなかの曲者で,何と6種類の音源が使われていた。

そのうち歌手名が判明したのは金田たつえ,奥泉勇篁,江村貞一の3名である。金田たつえ歌唱の北海盆唄は日本コロムビアから全国発売されている音源だが,これはかなり異色で,囃子言葉が一切入っていない。しかし空知地方の出身でもともと民謡出の人なだけに節回しは絶品で,市販されている北海盆唄の音源の中では最高傑作といえるものである。奥泉勇篁は札幌の民謡家で,コロムビアからCDとカセットテープが発売されている。現在全国発売されている北海盆唄の音源の中では唯一I型で歌唱しているものである。江村貞一は北海道江差出身の民謡歌手で,ビクターからCDとカセットテープが発売されており,比較的入手しやすい。これは典型的なII型の歌唱である。

ほかに唄い手が判明しない音源がI型が男女各一名,II型で女性歌唱のもの1つあった。そのうちI型で女性歌唱のものは,赤平茂尻の盆踊りで使用されていた音源と同一である。

北海盆踊り動画1(3.9MB)

北海盆踊り動画2(3.2MB)

北海盆踊り動画3(2.5MB)

北海盆踊り動画4(4.0MB)

北海盆踊り動画5(3.2MB)

北海盆踊り動画6(2.0MB)

ところで,今日は仮装大会のはずだが,仮装している踊り手がいない。ポスターでは17日に関しては雨天の場合は18日に順延とあったが,16日は雨天順延と書いていないので,今日盆踊りをやっているということは,ともかく今日が仮装大会のはずである。不審に思って本部で尋ねると,昨日の雨で,日程が1日ずつ繰り延べになったのだという。ポスターの内容とと食い違っている上に,まったく会場で案内がない。内輪だけの盆踊りなら仕方がないが,北海道を代表する盆踊りなだけに遠方からも見物客が訪れているのだから,変更になったことはきちんと案内してもらわなければ困る。

霧雨の中,2時間近いの盆踊りとあって,若旺会のメンバーは中抜けして,またテーブルで宴会が始まっていた。そんな中で,先ほどの子供盆踊りからずぶ濡れになりながらも休むことなく踊り続けている奥様方にはまったく恐れ入った。

盆踊りは予定より早く,21時前に終了。21時からは恒例のもちまきが行われた。今年は餅の数を増やしたという。このときばかりは雨が降っていたのを幸いと,傘を逆さに構えて餅を受けとる強者もいた。