しかおい7000人おどり

訪問日:2007年8月12日(日)

場所:鹿追町中央公園

農村にとってお盆とは,春から休みなく続いてきた農作業が一段落し,ほっと一息つけるひとときである。したがって,独特の凄味がある炭坑の盆踊りや,洗練された都会の盆踊りとは異なり,農村の盆踊りは実に陽気である。広々とした公園に全町民が会しての盆踊りは,ある意味,最も北海道らしい風景といえるだろう。

北海道の穀倉地帯である十勝地方では,各町村でそうした規模の大きな盆踊りが開催されており,しかおい7000人おどりもその一つである。十勝地方の盆踊りの皮切りとして毎年8月12日に開催されることから,近郊の市町村からも多くの参加者があり,道内有数の規模を誇る盆踊りとして知られている。

会場は市街地中心部にある中央公園である。芝生の広場に出店がたくさん出て,賑わっていた。この日鹿追町では久々に最高気温が30℃を超え,絶好の盆踊り日和となった。

17:20〜18:20 こども踊り

子供盆おどり唄のテープは持田ヨシ子盤が使用されていた。大人も適度に輪の中に混じり,本来の振り付けに忠実なきれいな踊りが見られた。踊り終了後は恒例によって子供たちはその場にしゃがみ,お菓子の詰め合わせをもらっていた。

こども踊り動画(3.0MB)

18:25〜 商工会大売り出し抽選会

抽選会が終わると,しばし休憩に入り,その間,三橋美智也の北海盆唄が流れていた。

18:50〜20:30 おとな踊り

賞金総額100万円を超える盆踊りには十勝管内各市町村から参加者があり,踊りの輪は5重,6重にと膨らんだ。仮装の参加者は,踊りの振り付けにも趣向を凝らしていた。山車を登場させた団体もいくつかあった。審査は19時32分に終了し,ここでいったん休憩に入った。

休憩時間中,名誉実行委員長の町長から挨拶があり,今年最初の収穫となる秋まき小麦が豊作であったこと,その他の作物もおおむね良好で推移していることが報告された。

おとな踊り動画(8.5MB)

約20分の休憩後,19時50分に踊りが再開した。太鼓は鹿追太鼓保存会,唄は民謡友の会が担当していた。櫓は盆踊りの規模の割には簡素である。演奏は太鼓と鉦のみだった。

歌唱型はかなり変則的で,間奏部分の囃子ことばは,生演奏ではほとんど聞くことのない「ドッコイジャンジャンコーラヤット」で,そのあとさらに「ドッコイドッコイドッコイナット,チョイサッサーコラサット」と続き,通常よりも4拍分間奏が長く取られていた。また,「数々あれど」の部分を高く唄い出していた。ほかの盆踊りでも唄い手が調子に乗ってくるとこのようになることがあるが,比較的珍しい唄い方である。この日唄われた主な歌詞は次のとおり30種類以上に及び,珍しいものも含まれていた。

北海名物 数々あれど おらが国さの 盆踊り
五里も六里も 山坂越えて 逢いに来たのに 帰さりよか
波の花散る 津軽の海を 越えて蝦夷地へ いつ来たか
ちゃんこ茶の婆 お茶出せ茶出せ 煙草盆出せ キセル出せ
盆が来たのに 踊らぬ者は 木仏金仏 石仏
踊り揃うて 輪になる頃は 月も浮かれて 円くなる
主が唄えば 踊りも締まる 櫓囲んで 盆踊り
主が唄えば 踊りも締まる 櫓太鼓の 音も弾む
唄え踊れよ 叩けよ太鼓 月の世界に 届くまで
唄え踊れよ 叩けよ太鼓 宇宙彼方へ 届くまで
沖でドンどは 波音瀬音 陸でドンどは 樽囃子
はやし太鼓に 手拍子揃え 櫓囲んで 盆踊り
風に明かりを 消させておいて 忍び込むのか 窓の月
一度見せたや 故郷の親に 北海踊りの (この姿)
私ゃ○○○○ ○のないささげ 誰にからまる あてもない
内地出るときゃ 涙で出たが 今じゃ北海道で 笑い顔
内地発つとき 一人で来たが 今じゃ孫ひこ 笑い顔 
盆が来たとて お正月来たて 親父着せなきゃ 丸裸
恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす
江差追分 道南口説 十勝馬唄 盆唄だ
踊り踊る娘が 何故足袋履かぬ 履けば汚れる 褄切らす
そよぐ夜風に ○○○○○○○ 鹿追名物 盆踊り
色が黒くて ○○○○なけりゃ 山のカラスが ○○○○○
はやし太鼓は 男の心 女心は 笛の音
色の黒い人 ○○○○○○○ カラス見るたび 思い出す
惚れているのに 何故気がつかぬ 色気ないのも 困りもの
信州信濃の 新そばよりも 私ゃあなたの そばがよい
晴れた夜空に 太鼓が響く 櫓囲んで 盆踊り
月の夜でさえ 送られたのに 見放されたか 闇の夜に
熊とマリモと 追分節は 自慢話の 種になる
おらが国さで 自慢のものは 一に追分 盆踊り
今年や豊年 姑も嫁も ともに踊ろよ 盆踊り
娘十六七 色○○紅葉 ちらり○○○○ 色がつく
※「○○○」は歌詞不明,(   )内は一般的な歌詞からの推測

踊りは20時30分に終了,ただちに表彰式に移った。この日の司会進行は着物を着た年輩の女性が担当していた。何十年か前からタイムマシンでやってきたかのような純日本調の装いで,横文字にはめっぽう弱いというこの司会者は,言葉が大変美しく,観衆を魅了していた。とりわけ表彰式での受賞者との即興的な掛け合いは見事だった。

個人仮装の部の表彰は,衣装の関係で壇に上がれない参加者が続出し,主催者がステージの下に降りて賞品を手渡していた。注目の団体仮装の部は,3位が士幌町,準優勝が音更町と,隣町の団体にさらわれたが,優勝は鹿追町教育委員会の「フラメンコ」が勝ち取り,20万円の賞金を手にしていた。