義経盆踊り
訪問日:2008年8月10日(日)
場所: 東神楽町義経公園グラウンド
東神楽町で行われる最大の盆踊りである。旭川市のベッドタウンとして宅地造成が盛んに行われているひじりの地区から,忠別川の左岸に拓けた水田地帯を4.5kmほどさかのぼったところに東神楽の市街地がある。役場のすぐ向かいに義経台と呼ばれる義経北行伝説にまつわる小高い丘があり,そのふもとの野球場を兼ねた義経公園が盆踊りの会場である。
17時過ぎに会場に到着すると,北海盆唄の演奏を担当する人たちが練習をしていた。そして役場の広報車が子供盆踊りの唄を流しながら市街を回っていた。
18:00〜18:45 子供盆踊り
子供盆踊りにはよさこいチームの「ひがしかぐら東神酔華の舞」のメンバーが参加していた。この日のプログラムにはヨサコイの演舞はなく,盆踊りのためだけに参加していたのである。これはありがたいことである。
ヨサコイのチームというのは地元のお祭りに参加しても,だいたい自分の出番のことしか考えておらず,その自己中心的な振る舞いがお祭りの雰囲気を悪くしていることも少なくないが,東神楽のヨサコイチームは,花まつりの町民パレードにも地方車を提供するなど非常に親和的であり,珍しく好感が持てるヨサコイのチームである。
テープは持田ヨシ子版の前奏,後奏を一部カットしたものが使われていた。完全にエンドレスではないが,原曲のままよりは踊りがスムーズに流れているように見えた。太鼓は義経桜太鼓保存会が担当しており,子供盆踊りとしてはかなり気合の入った演奏を披露していた。
踊りの振り付けはきれいで,旭川近郊では珍しく,「ちゃんこちゃんこ」の部分の片手を下方へ流す動作をきちんと行っていた。赤くほんのりの後,「灯がともる」で円心に向かって前進するとき,両手をすくい上げてぱっと開く動作だけが原作の振り付けと異なっていたが,これはこれで悪くはないものだと思った。
子供盆踊り動画(MP4,9.3MB)
45分間休みなく踊って終了。段ボール箱の中にはいろいろなお菓子が入っており,子供たちはその中から好きのものを選んでもらっていた。
大人盆踊りが始まるまでの間に,義経桜太鼓保存会による演奏が行われた。これが非常にレベルの高いもので,「かっこいい」と悲鳴のような歓声が聞こえた。
続いて民謡。三味線の玲山会の生徒さんたちの演奏により,ソーラン節,真室川音頭,灘の酒造り祝い唄,長者の山,津軽じょんがら変奏曲が披露された。お師匠さんはご年配に見えたが,リハーサルのときから大きな声を張り上げて歌っており,本当に民謡が好きで歌っているように感じられた。
19:25〜20:50 大人盆踊り
19時25分,予定より10分遅れて大人盆踊りが始まった。
盆踊りは懸賞付きではなかったが,仮装したり独自の振り付けで踊る団体もあった。特にヨサコイのチームの振り付けは凝っており,踊りの輪に花を添えていた。
大人盆踊り動画(MP4,5.4MB)
北海盆唄は標準的なIII型の歌唱だった。唄われた歌詞は次のとおりである。
北海名物 数々あれど おらが国さの 盆踊り
五里も六里も 山坂越えて 逢いに来たのに 帰さりよか
はやし太鼓に 手拍子揃え 櫓囲んで 盆踊り
波の花散る 津軽の海を 越えて蝦夷地へ いつ来たか
唄に誘われ 太鼓に引かれ 今来たこの道 二度三度
唄え踊れよ 叩けよ太鼓 月の世界に 届くまで
今年や豊年 穂に穂が咲いて 道の小草に 米がなる
めでためでたの 若松様よ 枝も栄えて 葉も茂る
主が唄えば 踊りも○○○ 櫓太鼓の 音も弾む
一度見せたや 故郷の親に 北海踊りの この姿
○○○○○○○ ○○○○○○○ 東神楽は 花のまち
主が唄えば 踊りも締まる 櫓太鼓の 音も弾む
今宵めでたい 花嫁姿 親も見とれて うれし泣き
おらがお国で 自慢のものは 一に追分 盆唄だ
お前百まで わしゃ九十九まで 共に白髪の はえるまで
ちゃんこ茶屋の婆 お茶出せ茶出せ お茶がなければ 娘出せ
揃ろた揃ろたよ 踊り子が揃ろた 稲の出穂より よく揃ろた
踊り踊りたし この子が邪魔だ この子騙すような 守り欲しい
盆が来たのに 踊らぬ者は 木仏金仏 石仏
踊り疲れて 寝てみたものの 遠音囃しで 寝つかれぬ
「今年や豊年」「めでためでたの」「揃ろた揃ろたよ」「踊り踊りたし」は外来の歌詞であるが,旭川近郊で比較的多く唄われている。「今宵めでたい」「踊り疲れて」も外来であるが,北海道の盆踊りでは初めて聞いた。「東神楽は花のまち」で終わる歌詞は何度も歌われていたが,上の七七がどうしても聞き取れなかった。せっかくのオリジナルの歌詞なのにはっきりと聞こえないのは残念である。
20時前,係員が輪の中に入って踊り手に抽選券を配りだした。これは踊りの流れを止めることになるし,抽選券の収めどころのない踊り手もいたのでいけなかった。抽選といっても,景品は日本ハムファイターズのオリジナルグッズというどうでもよいものである。抽選券は踊っている人たちだけに当たるとのことだったが,結局数をはけずに見物客にも配っていた。
踊りは20時50分まで,休みなく続けられた。唄い手は交代しながらだったのでよいとして,三味線の生徒さんたちがずっと表舞台で弾きっぱなしだったのは大変そうだった。それでも踊りの後半にはしだいに調子が速くなり熱気が増していった。