第47回大成夏まつり盆踊り大会
訪問日:2008年8月16日(土)
場所: 三番舘横イベント広場(旭川市)
昭和35年8月20日,この場所で行われていた盆踊りを見物をしていた少年が,いんねんをつけられたのに腹を立て,短刀でめった切りにして2名を死傷させるという事件が起きた。この事件をきっかけとして,昭和37年7月に旭川で正調北海盆踊保存会が設立され,唄の節や太鼓の叩き方,振り付けが統一されるとともに,盆踊りの健全化が図られた。その意味で,北海道の盆踊り史を語る上では,欠くことのできない盆踊りであると言える。
事件の起きた翌年は,警察署の道路使用許可が下りず盆踊りが中止されたが,翌昭和37年には復活し,それから回を重ねて平成20年で47回目を迎えた。銀座通りの盆踊りとして長年親しまれていたが,盆踊りは大成夏まつりのメインイベントとして位置づけられている。大成地区は,旭川市内に14ある住民基本台帳上の地区割りの1つで,概ね南北は宮下通〜10条通,東西は11丁目〜17丁目の間にある地区である。
会場は3条通15丁目の丸善三番舘横イベント広場である。丸善三番舘は旭川発祥の総合衣料品店で,社長は阪神タイガースファンとして知られている。
三番舘前の通りは,1条通から4条通までが歩行者天国になっており,銀座通りと呼ばれている。古くは明治時代末から芝居小屋が建ち並び,終戦後は3条通15丁目が,引揚者や旧神農会の露店業者の指定地とされ,いわゆる闇市が立った。旭川市内では,旧アサヒビル,緑橋ビル商店街,17丁目オール商店街と並んで,戦後の青空市場やバラック建てのマーケットの流れをくむ商店街である。近年は,銀座仲見世通りとしてリニューアルされ,東京巣鴨の地蔵通りのような,クラシカルな雰囲気の商店街づくりが行われている。
商店街には老舗の専門店が多く,旭川市内はもとより,道北一円に根強いファンを持つ店も多い。また,大成地区の中央を東西に横切る国道39号・4条通は,病院銀座と呼ばれており,そのため平日の昼間は病院行脚をするお年寄りで商店街が賑わう。
19:00〜 子供盆踊り
盆踊りは15日,16日の2日間の日程で開催予定だったが,前日は雨により中止になった。子供盆踊りは19時からと,比較的遅い時間のスタートで,18時55分になると,婦人部の代表者が先頭に立ち,輪の形成が行われた。ほかの役員も輪の中に加わり,比較的きれいな踊りを見ることができた。ただ,「そよろそよ風」と「シャンコシャンコ」の部分の振り付けの区別はなされていなかった。
子供盆おどり唄は持田ヨシ子盤がオリジナルで使用されていた。それにしても,スピーカーの音量が大きすぎるのはいけなかった。苦痛に感じるほどの大音量で,耳をふさぎながら踊っている子供たちやお母さんも多かった。これでは近くの人と話をすることもままならず,盆踊りの風情が台無しだし,子供たちもかわいそうである。
子供盆踊り動画(MP4,4.4MB)
19時37分,踊りは終了。子供たちはその場にしゃがんでお土産(ポテトチップスのりしお味)を受け取っていた。主催者によると,例年になく子供たちの参加が多かったとのことだった。
太鼓の担当は「あたご夢太鼓保存会」で,子供盆踊り終了後,「となりのトトロ」とSMAPの「ありがとう」の曲に合わせた曲打ちが披露された。
19時55分から大人盆踊りの開会式。大成地区市民委員会会長の挨拶,続いて審査委員長による審査基準の説明が行われた。
司会者は,演歌歌手の司会者のような身なりだったが,穏やかな語り口で好ましかった。
20:00〜 大人盆踊り
仮装の雰囲気はこの盆踊り独特で,何の仮装なのか理解に苦しむものが多かった。中には,この道何十年というような筋金入りの仮装者もいたようである。踊りは20時から21時まで,1時間ぶっ続けで行われた。
大人盆踊り動画(WMV,7.7MB)
最初は個人の仮装参加者と団体の参加者で輪が占められていたが,素踊りの参加者も徐々に増えてきた。踊りと観客の距離が近く,踊り手の汗がしぶきとなって飛んでくるような迫力を感じた。何には鬼気迫りくる踊り手もおり,見ていて若干の恐怖感を覚えた。ヤミ市の時代から世代は変わったとはいえ,この場所には当時の気性の荒い血がまだ流れているようである。
踊りの途中で,観客に抽選券が配られた。
唄と囃子は,児玉笑子社中と門下生,太鼓は引き続きあたご夢太鼓保存会が担当していた。唄は舞台上の女性3人が交替で担当していた。唄われた主な歌詞は次のとおりである。唄の型はIII型で,正調北海盆唄の歌唱型を踏襲していると思われるが,終わりの「ハ エンヤーコーラ ヤット ドッコイドッコイドッコイナット」の後,1拍置いて「コラサット」,さらに1拍置いて「コイドッコイ」と入れているのが独特である。
北海名物 数々あれど おらが国さの 盆踊り
めでためでたの 若松様よ 枝も栄えて 葉も茂る
貴方百まで わしゃ九十九まで 共に白髪の はえるまで
五里も六里も 山坂越えて 逢いに来たのに 帰さりよか
揃ろた揃ろたよ 踊り子が揃ろた 稲の出穂より よく揃ろた
今年や豊年 穂に穂が咲いて 道の小草に 米がなる
高い山から 谷底見れば 瓜や茄子の 花盛り
緑豊かな 平和な里に 櫓太鼓が なりわたる
波の花散る 津軽の海を 越えて蝦夷地へ いつ来たか
一度来てみろ 上川盆地へ 歌で知られた 旭川
唄え囃せよ 叩けよ太鼓 月の世界に 届くまで
山は大雪 雲間に晴れて 蝦夷の昔を 偲ばれる
踊り揃うて 輪になる頃は 月も浮かれて 円くなる
はやし太鼓に 手拍子揃え 櫓囲んで 盆踊り
踊り見に来て 踊りの中で 何時か手を振る 浴衣がけ
主が唄えば 踊りも締まる 櫓太鼓の 音も弾む
おらが国さで 自慢のものは 一に追分 盆唄だ
唄え踊れよ 叩けよ太鼓 月の世界に 届くまで
来たは十七 蕾の頃に 今は二十一 花盛り
花が過ぎても 時節が来れば 様と世帯の 実が結ぶ
はやし太鼓は 男の心 女心は 笛の音
晴れた夜空に 太鼓が響く 櫓囲んで 盆踊り
山で暮せば 侘いもの 水にコブシが 散るばかり
21時ちょうど,踊りは終了。踊りの仕上げには,旭川恒例の早撃ちが行われた。
表彰式に先立ち,実行委員長である銀座商店街振興組合理事長の挨拶,続いて大会長である大成地区市民委員会会長から,同委員会交通部,防犯部,青少年育成部,また児玉笑子社中,あたご夢太鼓保存会に対して謝礼が贈呈された。
踊りの個人賞は金賞1,銀賞2,銅賞3,入賞7,特別賞1,優秀賞1の15個の賞があり,昨日の分と合わせて,それぞれ持ちきれないほどの賞品を受け取っていた。団体賞は6個で,最優秀賞は丸善三番舘が勝ち取り貫禄を見せつけていた。
21時25分から,今年初めての企画である「ありがとう抽選会」が始まった。「見てもらっているのに見ている人には何も当たらない,踊っていても漏れる方もいらっしゃる。そういうことで,踊り子,観客,みんなで抽選会を最後に開きたい」ということから始まった素晴らしい企画である。観客に対してもこのように暖かい盆踊りというのは珍しい。
21時32分終了。