[豊作祈願]若佐地区お盆行事「盆踊り」
訪問日:2013年7月15日(月)
場所:佐呂間町若佐コミュニティセンター
盆は本来,夏の終わりに満月となる旧暦7月15日の行事であったのが,明治になって新暦に改められた際に,新暦の7月15日に行う地域,月遅れの8月15日に行う地域,旧暦の7月15日にあたる日に行う地域にそれぞれ分かれることとなった。現在では,全国的にも,ほとんどの地域で8月13日から16日までをお盆の期間としているが,新暦の7月に盆行事をしている地域も一部に存在している。北海道では,函館市,名寄市付近,北見市付近,根室市の一部が新暦の7月にお盆を行っているという(『北海道の年中行事』(北海道新聞社,1996))。盆踊りに関しては,佐呂間町の若佐地区および栄地区,根室市緑町が,7月盆の盆踊りが行われる地区として知られている(盆行事と関係なく7月に行われる盆踊りとしては,他に札幌市の白石や江別市の大麻などの事例がある)。
若佐地区は佐呂間町の南西部,札幌・旭川方面から網走への短絡路となっている国道333号線沿いに位置している。平成18年には地区の中心部を大規模な竜巻が襲い,ルクシ峠を改良すべく建設が進められていた新佐呂間トンネルの工事関係者9名が亡くなるという痛ましい災害があった。過去には,昭和23年から昭和31年までの短い期間ではあったが,若佐村という独立村だった時代があり,当時5,000人台の人口を有していた。西に4キロメートル離れた栄地区では前日に盆踊りが行われており,旧若佐村村内では2日続けての盆踊りとなる。
ポスターには,若佐自治会,中園川西自治会,武士自治会,朝富自治会,若佐商店会の名があった。純農業地帯であり,お盆行事は,豊作を祈願して行われている。盆行事としては,盆踊りのほかに,ゲートボール大会,パークゴルフ大会,ミニバレー大会があり,実施に当たり,各戸1,500円の会費が徴収されていた。
子供おどり 18:30〜19:30
子供盆踊りは,多くの子供たちがほぼ完ぺきな振り付けで踊っていた。これは,これまでで初めて見たといってよいくらい,極めて稀なことである。上手いかどうかは別問題として,原作の振り付けに終始忠実であり,子供たちはふざけながらも,決して踊りに破たんをきたすことがない。普段からかなり練習し,踊りが体に染みついているように見えた。さすがに,頑なに7月盆の伝統を守っているだけのことはある。
子供おどり動画(MP4,8.3MB)
太鼓は若佐盆踊太鼓の会。音源は,持田ヨシ子盤の子供盆おどり唄が原曲のまま使用されていた。
19時前後に10分弱の休憩をはさみ,約1時間みっちり踊って終了。最後の1曲のときは,これで終わりと放送があったが,よくあるように,最後だけ子供たちが輪に加わるということもなかった。
お土産は,お菓子がたくさん入った詰め合わせだったが,用意していた数が足りず,いちばん行儀よく座って待っていた少女たちの目の前で,底をついてしまったのはかわいそうだった。役員の人たちが呆然とした表情でしばらく協議をし,結局,花火のセットをお菓子の代わりにもらえることになった。
19:30〜 花火大会
続いて防犯協会の主催による花火大会に移った。若佐小学校と若佐保育所に分かれて整列し,花火を受け取っていた。大きな打ち上げ花火でなくても,子供たちにとっては良い思い出になるだろう。見た目にも幻想的な光景がしばらく続いた。
若佐青年会主催による出店。安くてかなり量のあるものが販売されていた。
大人おどり 20:30〜22:00
大人盆踊りは仮装で行われた。驚いたことに,太鼓のみで唄はなかった。同様の事例は,美唄のアルテピアッツァの盆踊りで一度見たことがあるだけである。踊りは北海盆唄と同じであった。
大人おどり動画(MP4,4.8MB)
21時から10分間の休憩,再開後まもなく,突如「北海よされ節」の唄が入った。
たった1人,個人の仮装で参加をし,力の入った踊りを披露していた方が,櫓下でマイクを取ったのである。唄われた歌詞は,つぎの4つのほか,聞き取れないものが4つあった。
そよぐ夜風に 誘いの太鼓 いつか知らずに やぐら下 心も踊る 盆唄に 昼の疲れも どこへやら よされソーラヨーイ
盆の踊りに 化粧はいらぬ たすき花笠 なおいらぬ 心も明るく 輪になって 親も子も来い 孫も来い よされソーラヨーイ
姉と妹に 紫着せて どちらが姉やら 妹やら 姉は山々 山桜 妹吉野の 糸柳 よされソーラヨーイ
○○○○○○○ やぐらの太鼓 ○○○○○○○ ○○○○○ 品のよしあし いゝじゃないか 下駄のへるまで 踊りゃんせ よされソラヨーイ
※「○○○」は歌詞不明
大人おどり動画(北海よされ節入り,MP4,8.4MB)
氏は8つほど唄を披露した後,惜しまれつつ,輪の中に戻っていった。
盆踊りの終了後,お話を伺ったところ,遠軽,湧別,中湧別,上湧別は唄い手が共通しており,前半は女性による北海盆唄,後半は男性によるよされ節というパターンが多いそうである。また,安国,生田原は別の唄い手であるが,やはりよされ節が入るらしい。氏は遠軽の方で,歌詞は現地歌唱をテープに吹き込んで自分で書き起こして覚えたものだという。盆踊りに真摯に打ち込む姿勢にいたく感銘を受けた。
21時25分で踊りは終了。引き続き,若佐郵便局長の司会による表彰式に移った。グランプリのほか,「のりのりでしたで賞」「いつやるのいまで賞」など各賞が発表された。