にいかっぷふるさと盆踊り

訪問日:2014年8月16日(土)

場所:新冠町役場前駐車場

 

苫小牧から太平洋岸を東へ約80キロメートルに位置する日高管内新冠町で,毎年町を挙げて行われる盆踊りである。2001年,新冠町レ・コード館において1952(昭和27)年5月制作の「子ども盆おどり唄」のレコードが所蔵されていることが新聞で報道されて大きな注目を集めたことから,これをきっかけに盆踊りを復活させようと町内の青年らが立ち上がり,2003年から本盆踊りが開催されている。当初レ・コード館駐車場だった会場は,2007年からより広い役場駐車場に移った。2011年には開町130年,町制施行50年を記念して「新冠音頭」が復活し,以来,「子ども盆おどり唄」「新冠音頭」「北海盆唄」の3本立てで行われている。

主催は新冠町青年団体連絡会議,主管は新冠町青年団体協議会,後援に新冠町,新冠町教育委員会が名を連ねている。主管の新冠町青年団体協議会は,町内の異業種の若者が集まりイベントや地域行事の手伝いを行う団体で1964(昭和39)年に発足している。主催の町青年団体連絡会議はこれに商工会青年部,農協青年部,4Hクラブが加わる。若者関係の組織がこれほどしっかりしているのは,同規模の町ではあまりないことのように思われる。

新冠は明治以来,長く御料牧場(宮内省所属牧場)が置かれ,現在は競走馬のふるさととして知られている。太鼓やぐらの横断幕にも2頭の馬が描かれていた。

会場の役場前駐車場では15時から露店が営業を始め,「ていてつ投げ」という馬産地ならではゲームコーナーも開設されていたようである。17時にはビアガーデンも始まり多くの町民で賑わっていた。

17時30分からの子ども対象のお菓子まき。小学1〜3年生と4〜6年生に分けて実施され,4〜6年生の回は人数が少ないので中学生も参加可能となった。まかれたお菓子の中にはさらに「当たり」があり,500円商品券や花火セットが景品として配布されていた。

子ども盆踊り 18:00〜18:20

開始5分ほど前から「踊る方向は時計の反対回り,みんなで輪になって待っていてください」「踊ってもぶつからないくらい大きな輪になって」と誘導がなされ,はじめからよくそろった踊りを見ることができた。

浴衣を来た主催者メンバーも輪の要所に加わり,基本に忠実な振付けで踊っていたが,「赤くほんのり」の箇所で突然勢いよく袖を返す見たことのない所作が現れて驚いた。この箇所は本来の振付けが定着しにくいようで,各地で自然発生的に独自の振付けがなされているケースが多い。一方で,ほとんどの盆踊りで「そよろそよ風」の振付けと混同されている「シャンコシャンコ」の箇所は,本来の型と微妙に異なるものの「そよろそよ風」の箇所とは明確に区別がつけられていた。

音源は子供盆おどり唄の持田ヨシ子盤を使用していたが曲間にテープを巻き戻すような妙な間があった。市販されているテープは5回連続演奏のためここまで長い間は生じないが,もしかするとレ・コード館所蔵の初版SP盤から再録した音源を使用しているのだろうか。なお,2001年に「子ども盆おどり唄」の初版レコードが新冠町レ・コード館に保存されている(美瑛町郷土資料館から寄贈されたものという)ことが判明した際,「全国で1枚だけ保存」(北海道新聞2002.8.3夕刊)などと報道されているが,これはたまたま当時調査に当たった人物が調べた範囲ではほかに見つからなかったということだと推察され,その後初版レコードはインターネットオークションにも出品されていることを指摘しておきたい。

子ども盆踊り動画(YouTube)

わずか10分で踊りは終了。やぐら下で新冠ライオンズクラブの方々が踊った子供たちにお菓子のお土産を配布していた。小さい子供から順に配布し,なくなりしだい終わりとのことだったが結局お菓子は余り,踊っていない子供たちのところまで配りに回っていた。

盆踊りの最後に行われる抽選会の景品には,胡蝶蘭ほか鉢花がたくさん並んでいたのは珍しかった。

新冠音頭 18:30〜18:50

20分ほどの休憩をはさんで新冠音頭の1回目。新冠音頭は1961(昭和36)年,町制施行の記念事業として制作され,1981(昭和56)年の開町100年のときに振付けされたが,以来2011年に本盆踊りで復活するまでの30年間,全町的に踊る機会はなかったという。その後,いまこれを書いている時点で直近の2018年の盆踊りまで,新冠音頭の踊りは継続されている。

この新冠音頭であるが,どうしてこうなってしまったのかと不思議に思われる陰鬱な曲調である。基本的に音頭は明るい曲調が好まれるものだが,その対極にあるように思われる新冠音頭の風変わりぶりは道内のご当地音頭の中でも指折りである。

復活4年目ということで,きちんと踊れるのは町内でもわずかな人しかいないようで,曲の合間に主催メンバーの間で振付けを確認し合っていた。それでも,振付けと曲がなかなか合わず,輪の中で最も上手に踊りを披露していた方が,ときおり踊りを直しに回っていた。

新冠音頭動画(YouTube)

北海盆踊り(仮装あり) 19:00〜19:20

大人盆踊りは北海盆踊りと称し,三橋美智也歌唱の北海盆唄のテープ演奏で行われた。輪は「時計回りで」と誘導があったが,北海盆唄を時計回りで踊るのは少数派である。

北海盆踊り動画(YouTube)

さらに40分の間をおいて20時から2回目の新冠音頭を実施。今度は2回で終了した。

町内の若者らによってよく準備された盆踊りだったが,子ども盆踊り,新冠音頭,北海盆踊りいずれも曲の間に妙な間があったために踊りが途切れ途切れになったのと,輪の中でうちわを配る人がいて踊りを妨げていたのは惜しまれた。

最後は20時20分から抽選会。「仮装あり」とプログラムに記載されていたが懸賞はなく,仮装の人も参加証のみだった。