いくたはら夏まつり
訪問日:2015年8月16日(日)
場所:遠軽信金生田原支店駐車場
生田原は遠軽の南約15kmに位置し,三方を山に囲まれた清らかな山村である。1930年代,北ノ王金山など金銀銅の鉱山で活況を見て,1940(昭和15)年には人口9,000余りを数えた。以降は人口がしだいに減り,1990年代に入ると生田原温泉ノースキング,図書館と一体化した駅舎や,ちゃちゃワールドなどによるまちおこしで注目を集めたが,2005年母村でもある遠軽町と合併した。2015年時点の人口は約1,900となっている。
盆踊りに木造の古式櫓が用いられるとの情報を得て訪ねたところ,思いがけず郷土色豊かな盆唄を聞くことができた。
会場はJR石北本線生田原駅の南約350メートルの遠軽信金生田原支店駐車場である。
17:30〜17:45 生田原太鼓
夏まつりは17時30分からの開始。生田原太鼓の演奏から始まった。
会場内には地域の人たちによる手作りの売店がたくさん出ており,大人も子供も楽しい夏休みのひとときを過ごしていた。
18:00〜18:10 餅まき
餅まきは子ども(小学生以下)と大人で分けて実施。
18:15〜18:45 子供盆踊り
曲は「子ども盆おどり唄」の持田ヨシ子盤が前奏・後奏そのままで用いられていた。生田原小学校の先生2人がお手本として輪に加わっており,比較的きれいな踊りを見ることができた。ただ,例によって「シャンコシャンコ」の振付けは「そよろそよ風」の箇所と混同されていた。
17分経過時点でいったん7分間の休憩を挟んだ。その間,生田原駐在所の警察官から直々に落とし物に関する案内があり,まさに地域ぐるみの盆踊りという感じがした。
太鼓は生田原太鼓保存会のメンバーに限らず,浴衣や普段着の少年少女が叩いていた。何年かぶりに叩いたと話している人もいたが,調子はしっかりしており基礎ができているのだろう。
踊りの終了後は慣例にしたがって子どもたちはその場にしゃがみ,お菓子と綿菓子の2つの袋を受け取っていた。
19:00〜20:00 大人盆踊り
10分ほどの休憩のあと,何の前触れもなくいきなり盆唄が始まった。「北海よされ節」である。野太い声であるが,独特のノリの良さがある。それに,格調高い笛が加わっている。「生田原には唄う人がいる」と,以前遠軽の人から聞いていたが,これほどの盆唄が聞けるとは思わなかった。
歌詞は7775+75+75の比較的よく知られたものが9種類唄われ,唄い手が交代するとともに「北海盆唄」に切り替わった。代わった唄い手は,その前から唄いたくて仕方がなさそうに見えたが,いざ唄ってみると声は良いのだがひどく調子外れで,囃子言葉も途中から合わせるのをあきらめていた。
20分の踊りのあと5分間の休憩。再開後はまたよされ節から始まった。「北海よされ節」と思ったのだが,今度は聞いたことのない歌詞や,7775+75757575+75の長編物が出てきた。オホーツク地域には北海よされ節として固定化される前の,いわゆる「よされ盆唄」が色濃く残っているが,生田原でもまた,北海よされ節の影響をかなり受けつつも,旧来の唄が残っているようである。
さらには,山形県の民謡「真室川音頭」が出てきた。生田原と真室川のつながりはわからない。
さらに20分踊って2度目の休憩。ここで生田原夏まつり実行委員会の代表より挨拶があった。
19時50分より3度目の踊り。今度はよされ節1本で歌詞を総動員して15分間唄い切った。
唄われた歌詞は次のとおりである。
■北海よされ節・よされ盆唄
盆の踊りを 踊らぬ者は 当世不向きの おくれもの 品のよしあし いゝじゃないか 下駄のへる程 踊りゃんせ よされソラヨーイ
音頭とるのは 小粋な若衆 踊るあの娘の 方えくぼ 仲をとりもつ よされ節 添わせ見せたや 花同志 よされソーラヨーイ
そよぐ夜風に 誘いの太鼓 いつか知らずに やぐら下 心も踊る 盆唄に 昼の疲れも どこへやら よされソーラヨーイ
揃い浴衣に ちりめん帯が ぐるり輪になりゃ チョイと可愛い こよい十六日 盆踊り さす手引く手に 花が咲く よされソーラヨーイ
蝦夷の海辺に ながれる唄は 岩にくだけて 寄せ返る 追分まじりの 波しぶき 沖の鴎も 舞い踊る よされソーラヨーイ
山で啼く啼く あのきりぎりす 草と刈られて 丸められ 八百屋お七じゃ ないけれど 馬の背で啼く あわれ○○ よされソーラヨーイ
熊とマリモと 追分節は 自慢話の 種になる 北海名物 数あれど わけて盆唄 よされ節 よされソーラヨーイ
盆の踊りに 化粧はいらぬ たすき花笠 なおいらぬ 心も明るく 輪になって 親も子も来い 孫も来い よされソーラヨーイ
炭鉱(やま)の男は 陽気なものさ 地下は千尺 ○○で掘る 掘れば○○○る 黒ダイヤ みんなあの娘が 気にかかる よされソーラヨーイ
あの娘よい娘だ 村一番の 踊り上手で よく稼ぐ 嫁にやるのか 婿とるか 月の十五夜 気にかかる よされソラヨーイ
盆の十六日ゃ 地獄も祭り エンマ様さえ 踊るそな じゝもおばゝも それ踊れ 今宵お盆だ 夜明かしだ よされソーラヨーイ
姉と妹に 紫着せて どちらが姉やら 妹やら 姉は山々 山桜 妹○○○○ ○○桜 ○○○二親 ○○○○○ よされソーラヨーイ
二十日鼠が 一升二升三升四升 五升樽下げて ○○○○○○と 駆け上る ○○○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ 命からがら 逃げてくる よされソーラヨーイ
○○○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ よされソラヨーイ
○○○○○○○ ○○○○○○○ 男嫌いは 嫌なもの ○○○○○○○ ないけれど ○○○○○○○ ○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ よされソラヨーイ
○○○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ ○○○○○○○ 一杯飲めば ○○○○○○○ 若くなる よされソラヨーイ
さても○○○○ ○○○○踊り ○○○○○○○ ○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○ よされソラヨーイ
揃た揃たよ 踊り手が揃た 手足引く手に しなつけて 歌が揃えば 気もそろう みんな揃って よされ節 よされソラヨーイ
蝦夷地よいとこ 一度はござれ 北は○○○○ 千両箱 波に黄金の 花が咲く 祝う大漁の ○○し唄 よされソーラヨーイ
電信柱に 燕が止まる 停車場停車場にゃ 汽車停まる 港港にゃ 船停まる かわいいねいちゃんには 目に留まる ○○て止まらぬ 色の道 よされソーラヨーイ
■北海盆唄
北海名物 数々あれど おらが国さの 盆踊り
五里も六里も 山坂越えて 逢いに来たのに 帰さりよか
一度見せたや 故郷の親に 北海踊りの この踊り
波の花散る 津軽の海を 越えて蝦夷地へ 帰さりよか
一度見せたや ○○○の人に おらが自慢の この踊り
来たは十七 蕾の頃は 今は二十一 花盛り
唄に誘われ 太鼓に引かれ 今来たこの道 二度三度
唄え踊れよ 叩けよ太鼓 月の世界に 届くまで
踊り揃うて 輪になる頃は 月も浮かれて 円くなる
ちゃんこ茶屋のかか お茶出せ茶出せ 煙草盆出せ キセル出せ
波の花散る 津軽の海を 越えて蝦夷地へ いつ来たか
海は大漁で ○○○○光る 娘も○○○で 肌光る
○○○○○○○ 夜空に響く ○○○○○○○ ○○○○○
ちゃんこ茶屋の婆 お茶出せ茶出せ 煙草盆出せ キセル出せ
盆が来たかて お正月来たて 親父着せなきゃ 丸裸
唄え踊れよ 盆の十六日 みんな踊って 盆踊り
月の夜でさえ 送られたのに 見放されたか 闇の夜に
主が唄えば 踊りも締まる 櫓囲んで ○○○○○
はやし太鼓に 手拍子揃え 櫓囲んで 盆踊り
踊り見に来て 踊りの中で 何時か手を振る 浴衣がけ
あの娘よい子だ 踊りが上手 婿に行こうか 嫁にしよか
沖でドンドは 波音瀬音 陸でドンドは 樽囃子
浜は大漁で 砂利まで光る 姉コ年頃 肌ひかる
盆が来たのに 踊らぬ人は 木仏金仏 石仏
※「○○○」は音声不明瞭により歌詞不明
20:15〜 審査発表
踊り手はほとんどが仮装で,19:40〜20:00を審査時間として,厳密な評定が行われていた。
抽選会などなかったが,最後まで見て「おもしろかった」と言って帰っていく子供たちや,気になった踊り手と連絡先を交換し合う若者の姿もあった。8月16日の日曜日とあって,夏の名残を惜しむように,参加者は少し冷えてきたまちなかを家路についていた。