12時ごろの会場全景。
早食い大会である。3人1チームで,総計10チームが出場。5チームずつ2回に分けて競争が行われた。
お品書きは
1人目……ようかん,蕗もなか,ビール
2人目……蕗汁,蕗もなか,牛乳,蕗パン
3人目……ゆで蕗,蕗もなか,蕗アイス,ポカリスエット
いちばん難儀していたのはようかんで,あのずっしりとしたようかんを1本丸ごと食べなければならないのだ。そのほかにも甘めのメニューが多く,意外とオバサンチームが健闘していた。大阪から自転車旅行の道中に参加したという青年もいたが,非常に苦しそうであった。
蕗をバトン代わりにリレー形式で選手交代。
優勝チームには3万円相当の商品券が贈られた。
参加賞にはポカリスエット6本と胃腸薬。大塚製薬の城下町らしい賞品だ。
ステージでは男女2人の進行役が,軽妙にイベントを進めていく。あまりにもうまいので,どこかのイベント会社に頼んだのかと思ったが,地元の人のようである。人口2800人の町で,これほどの人材を抱えているというのはすごい。
12時50分,皆が待ち焦がれていた時が刻一刻と迫る。
城之内早苗ついに登場。先ほどまでどんよりとしていた空も晴れ上がり,水色と純白のドレスで場内がパーッと明るくなった。
オープニングは「恋桜」から。
続いて,「雪肌草」「酔わせてよ今夜だけ」。
私もファンというほどではないが,城之内さんは好きな歌手である。もともと民謡をやっていたというだけあって,すうっときれいに声がのび,演歌というよりは歌謡曲のようなさわやかさがある。立ち姿も美しく,ステージ上をゆらゆらと移動しながら優雅に歌い,けっこう離れたところで聴いていても歌の心がビンビン届いてきて,鳥肌が立つような感覚になった。やっぱり生で聴くのは違う。
わたしは歌手の歌を生で聴くのはこれが初めてである。というか,いわゆる芸能人をこれまでまともに見たことがなかった。しかしこれで,「お前,芸能人を見たことはあるか」と問われたら,「あります」と自信を持って答えられる。
それにしても,バブルの時代ならともかく,近年の町村のイベントにしてはずいぶんと豪華なゲストである。ところで,なぜ蕗まつりに城之内早苗なのだろうか。それは「空と海と風のまち」という音別町のテーマソングを歌っているからだ。8年前の制作発表会のときにも一度音別町を訪れているそうだ。音別町では朝昼夕の「やすらぎ通信」で毎日3回この歌が流れるそうで,町民にとっては城之内の歌声は大変身近な存在らしい。
進行役の2人も,大物歌手を前にこのときばかりは緊張していたようだが,城之内さんも素人の2人をうまくフォローして楽しくステージを進めていた。
「空と海と風のまち」の後は,新曲の「大連の街から」,そして最後にデビュー曲の「あじさい橋」で締めくくった。
45分間のステージだったが,出演料は200万円だったとのこと。町内の土建会社が自社の創業80周年を記念して協賛金を提供したらしい。
会場のすぐ裏は海。
用意,始め,の掛け声で,砂浜に埋められたカードを探す。埋められたカードは310枚。
私も1枚見つけ出した。
いよいよ,クライマックス。千人踊りの行列が,ステージに再現された霧里の木橋を登って行く。
蕗まつり音頭の出だしは「霧里(ムリ)の河原にドドント,ドントネ」で始まる。昭和40年代の蕗まつりは音別川の上流,霧里というところで行われており,木橋上で蕗まつり音頭が踊られていたのである。
会場内で大きな輪を作って踊りながら練り歩く。スピーカーから大音量で音頭が聴こえてはいるものの,会場内は妙に静かな雰囲気で。一日市盆踊りを思い出した。
輪は徐々に広まり,主催者側の発表で850人というところまできたが,どう見ても踊り手は100人か200人しかいない。大半の来場者は踊りに関心がなく,ただベンチに座って抽選会の開始を待っているようであった。
私は今日,千人踊りに加わる覚悟で来たが,やっぱりこの踊りは難しいのだ。町民なら小学校の運動会などで踊る機会があるので,みな少しは踊れるようだが,初めての人が見様見真似で踊れるようなものではない。ここは見物に徹するのも祭りへの参加の一つのあり方と決め込むことにした。
特賞 | 大型液晶テレビ15万円相当 | 1本 |
1等 | デジタルカメラ5万円相当 | 1本 |
2等 | JR旅行券3万円分 | 3本 |
3等 | 十勝川温泉観月苑ペア宿泊券 | 2本 |
4等 | ニュー阿寒ホテルペア宿泊券 | 2本 |
5等 | 折りたたみ自転車 | 3本 |
6等 | オロナミンC 50本 | 10本 |
7等 | バーベキューセット ピクニックセット |
各1本 |
8等 | 山菜セット3000円相当 | 5本 |
9等 | 音別銘菓3000円相当 | 5本 |
10等 | 蕗アイス引換券(2500円分) | 5本 |
ペア宿泊券など当たっても困るので,手に汗握りつつ自分の番号が呼ばれないように祈っていたが,無事当選しなかった。
しかし,ずいぶんと大盤振る舞いである。何か見ていて痛々しくなってくる。民間主導のイベントとはいえ,役場もだいぶんお金を出しているようである。これだけ大盤振る舞いをして,それに見合った経済効果があるのなら良い。しかしどれほどの効果があるのかは疑問である。わたしもここに来てお金を使ったのは昼の焼きそばとジュース代250円だけだ。多少頑張って蕗パンや蕗アイスを買ったとしても,この祭りで1人あたり1000円以上のお金を落とすのは難しい。
管内のいろいろな郷土芸能を見られたり,蕗パンや蕗の千人なべなど他では食べられないものもあって,それだけで十分に楽しいのだから,別に無理して豪華な賞品を出さなくても良いのにと思う。
特賞の当選番号が読み上げられると同時に,観客はいっせいに帰りだした。
今日は一日,大変楽しかった。イベントを企画してくれた人たちへ感謝の気持ちでいっぱいである。
来年の今頃,音別町はもうなくなっているかもしれないし,わたしも釧路にはいないかもしれない。しかし,もしまた蕗まつりが開催されるなら,ぜひまた来たいと思う。