北海観光節

ふるさと銀河線・存続大集会2005 レポート

2005年2月20日(日)

大雪のため札幌からのスーパーおおぞら3号は18分遅れ。接続については心配ないと思っていたが,4番ホームはやはり遠い。

札幌方面からはもう少し大量の乗り換え客があると思っていたが10名ほどだった。一見してマニアとわかる顔ぶれではなく,むしろテレビ局の記者など商売人が多いように感じた。

池田から陸別までの運賃は1960円で,往復約4000円かかる。一日乗り放題3500円のフリーきっぷを使えば少し安いのだが,池田駅で時間がなく購入できなかった。運転手さんに聞いてみると,今日は日曜なので途中駅の窓口が閉まっており,この先では買えないかもしれないとのこと。こういうイベントのある日なのだから車内で販売しても良さそうなものである。


銀河線の車両はガラス1枚なので,ふいてもふいてもすぐ雲って外が見えない。鉄道の良さは車窓を落ち着いて見られることなのに,これでは鉄道旅行の楽しみが半減してしまう。

 

本日この列車は1両増結して2両編成で運行されている。池田からは1ボックスに1名程度だったが,本別からどっと乗り込んできて立ち客が出るほどになった。最初みな遠慮してなかなか座ろうとしなかったが,お年寄りや女性優先で着席し,若い人が立つことになったようだ。60歳以下の人は「若い人」に入るというような年齢構成である。

私の向かいには奥様方が座ったので聞いてみると,本別では町ぐるみで動員の要請がかかったとのこと。200名の応募があり,約100名が汽車に乗り,乗り切れなかった人たちは町のバスで陸別に向かっているそうだ。

車内は暑く,扇風機が回っていた。この真冬に扇風機とは,あまりにばかばかしくて笑ってしまった。今日何十年かぶりに汽車に乗るという人も多いだろうが,この狭苦しい車内では,銀河線にあまり良いイメージを持たれないのではないか。

奥様方は「せっかくみんな乗っているのだから,何か車内でイベントでもやるのかと思っていたわ」と話していたが,たしかに何もないのは寂しい。楓駅の最終列車の中ではJRがいろいろな企画をやっていたが,そういう発想がないというのはやはり銀河線は役所的なのだ。


陸別到着。駅舎には「乗ろう 残そう 銀河線」の垂れ幕が。


駅前には3台のバスが待機しており,本別の人は前の2台,足寄の人は後ろの1台に乗るよう案内されていた。釧路の人はどうすればいいんだ。

全員バスに乗り切れなかったので,ピストン輸送でまたバスが戻ってくるとのことだったが,小さな町なので会場もそう遠くなかろうと思って,あてずっぽうで歩き始めた。

本別の人にはあきらめムードが漂っていたが,陸別で町を歩いていてちょっと聞えてきたところでは,陸別ではやはり鉄道を残してほしいという思いが一段と強いようだ。


5分も歩かないうちに会場に着いた。


銀河線グッズ販売コーナー

写真撮影コーナー

応援メッセージ

ポスター

メッセージボードには鈴木宗男氏,松山千春氏,八角親方,三井浩二氏らのメッセージも貼られていた。


記念に運転士用の時刻表を買った。入場券が3枚ついて1300円。今日の臨時列車とその回送列車のダイヤの2種類あったが,回送列車のほうを買ってしまった。変なところでマイナーなほうを選んでしまうのが悪い癖である。


会場は超満員。参加者は約1400人だったという。

開会


14時00分,開会。実行委員長と陸別町長の挨拶。時間も押しているということで,簡潔な内容だった。


まず景気づけにということで,訓子府の「銀河生粋」によるヨサコイ。時間がないなら1曲で引き下がれば良いものをふてぶてしくも2曲も踊っていた。銀河線への熱い思いは伝わってきたのであまり悪いことは言わないが,この山の中で「沖のカモメに」のソーラン節は,どう考えたっておかしいのである。

応援メッセージ披露ということで,鉄道写真家・桜井寛氏からのメッセージが読み上げられた。


14時25分,本日のメインイベントであるパネルディスカッション開始。

各パネリスト発言要旨

○浜田勉氏(鉄道ファンの立場)

これまで北海道には50回以上訪れている。それは鉄道が好きだからというだけではなく,北海道自体に魅力を感じるからである。
旅人が旅行の時にいちばん参考にする本は「時刻表」である。路線図に掲載されるということは,それだけで大変な宣伝になる。これがバスになると,全ての停留所は掲載されず,時刻表もいちばん最後のページに回される。バスだと,よっぽどの人でないと行こうという気にはならない。
銀河線に観光客は来てくれるのかという疑問を持つ人がいる。たしかに現状では観光ではなく汽車に乗ることを目的に来ている人が多く,旧周遊指定地も銀河線沿線にはない。しかし,見るべきところは実はたくさんあるのであって,例えば銀河の森天文台である。
銀河線沿線に足りないのは発信力。原石はたくさんあるので,PRすることである。それは1つの町では難しいので,鉄路で結ばれた1市6町が有機的に結びついて発信することが必要だ。
旅人は地元の人がくだらないと思うようなことでも面白がる。例えば,松山千春の看板がスキンヘッドに変わったこと。
旅人にとって北見,オホーツク方面は行きづらいところであり,銀河線に特急が走ることを願っている。

○菅野三千代氏(廃止線沿線住民の立場)

滝上町濁川から来た。渚滑線が廃止されて,翌年営林署が統廃合され,商店街も寂れた。この20年本当に寂しくなった。高校生もバス代が高くなり,紋別に下宿せざるを得なくなった。
銀河線沿線の人たちには,鉄道がなくなると本当に寂しくなるんだということを伝えたい。寂しい思いは私たちだけで十分。銀河線沿線にはそういう思いをさせたくない。銀河線は誕生してまだ17年,これから青春真っ盛りのはずだ。

○村松弘康氏(弁護士)

銀河線は自分の原点であり,空気のような存在。いま,恩返しをしたい。これまでいろいろな企業の経営再建を手がけてきた経験からお役に立てることもあると思う。
再建か倒産かの分かれ目は,経営者の情熱にある。地域のために鉄路を守るんだという経営者の情熱さえあれば,自ずと知恵や応援団はついてくる。
なぜ残さなければならないかという,住民の意思統一が重要である。

○川島令三氏(鉄道アナリスト)

黒字化は簡単である。例えば智頭急行の例がある。ローカル輸送の密度は300人/日・kmで智頭急行も銀河線もほとんど変わらない。しかし智頭急行は特急が走っていることで3500人/日・kmの輸送密度がある。存廃の分かれ目は500人/日・km。石北線の特急が2往復程度銀河線経由にシフトしただけで簡単に存廃ラインを超える。
銀河線に特急が走れば,新千歳空港からオホーツク方面への所要時間が短縮される。さらに15億円で簡易高速化を実施すれば札幌からでも石北線経由より20分短縮される。

○中博氏(株式会社アイ・シー・エフ監査役)

存続の議論でいちばん重要なのは,使命があるのかどうかということ。
銀河線の使命の一つは,100年以上の歴史があるという歴史的使命。もう一つは環境への負荷が少ない交通手段であるということ。さらには,鉄道が景観にとって重要であるということがある。
これまでの銀河線に関する報告書を見ると,現状分析に終始しており,プラスアルファの要素がまったくない。つまりお役所的で経営感覚がないということだ。
民間のやり方を取り入れ,身軽な経営を行えば,必ず黒字化し,上場企業となることも夢ではない。
ひとつのアイデアとして,140kmの沿線を1mごとに区切り,インターネット上で1区画1000円で(仮想的に)販売してはどうか。たぶん14万区画完売するだろう。

パネリストがひととおりの発言を終えた後,観客との討論に移った。

○札幌H大O氏

他の3セク鉄道と比較して銀河線はどうなのか。

○中氏

3セクも民間がやれるか役所としてやるかの違いがある。役所としてやっている限り赤字が続く。鉄道は明治以来「もうける」という発想がないようだが,もうけようとすればいろいろ方法はあるのではないか。

○訓子府O氏

銀河線の沿線に氷室を作って,道東の農産物を集めるという構想を持っている。

○札幌R社S氏

鉄道がなくなる→駅がなくなる→町がなくなる,というが,バスではだめなのか。

○菅野氏

たしかに,今日廃線になったからといって,明日町がなくなるわけではない。しかし駅・駅前は町の中心であるがバス停にはそれがない。バスはやっぱり軽い。鉄道に勝るものなし。
都市間バスが走り,札幌や旭川へは便利になったが,北見や名寄に行くには不便になった。結局車がなければ生活できない町となり,車のない年よりは,子どもたちのいる都会へ出て行かざるを得なくなった。

○陸別S氏

車椅子で北見の病院に通っている。北見駅に昇降機ができて喜んでいたところで廃止の話が出てきて残念だ。

○中氏

駅がなくなると町がなくなるというのは全国で起こっている事実。バス転換で活性化ということにはならない。
バス停はポップソングに過ぎないが,駅にはドラマがある。駅を馬鹿にする町はダメになる。駅があるということは全国と心がつながっているということである。人と人,物も物,事と事はつながって始めて活性化する。

○本別町長

残したいという気持ちは首長も同じである。しかし,これ以上の盛り上がりがなければ廃止も考えなければならないという決断の期限が来月である。

ここで終了予定時刻の15時30分となったが,議論が収束しないということで30分の延長となった。16時の汽車で帰らなければならない人,本別からバスで来た人は退席するように案内がある。私は列車を1本遅らせて残ることにした。


このタイミングで,存続宣言が読み上げられた。

「ふるさと銀河線」存続宣言

一,「バス転換はバラ色ではない」という事を住民みんなで確認し,鉄路の利点を訴えよう。
一,住民のさらなる利用の促進と,会社に対して最大限の営業努力を要望しよう。
一,「ふるさと銀河線」を十勝とオホーツクを結ぶ幹線として沿線の活性化を考えよう。
一,「ふるさと銀河線」存続のための提案を検討・実行する時間を勝ち取ろう。

引き続き観客との討論が続けられた。

○置戸M氏

みんなでカンパすることを提案したい。

○中氏

募金,カンパも良いが,面白みを持って取り組むことが大事だ。悲壮にならずわくわくしてやること。

○陸別K氏

旅行者もいるが守るのは地域の人。北見や帯広に行くのに5回に1回でも銀河線を利用してほしい。

○札幌H氏

この場では「守るぞ!」と思っても,家に帰ると忘れてしまう。家に帰ってから取り組めることは何かあるか。

○中氏

地道な行動あるのみ。傍観はよくない。一人ひとりが手を挙げることだ。たとえは沿線15万住民が手紙に思いを託し,廃止の意向を持っている首長に送ってはどうか。

○浜田氏

地元の人でも列車に整理券があることを知らない人が多い。理屈抜きに乗ってみよう。
池田17時34分着の列車は6分差で札幌行きの特急に間に合わない。しかしこれをずらすと通学に影響が出るとも聞く。どうしたらいちばんよいのか地域全体で話し合うことが大切だ。

○中氏

15万住民が年に1度銀河線に乗っただけで黒字化するということを知らない人が多い。

○村松氏

道も大きな赤字を抱えており,銀河線が赤字であることを悪く言う資格はない。赤字を減らすには収入を増やすしかない。頑張ろうとしている銀河線を安楽死させようというのは,道が自分で自分の首を絞めているようなものだ。銀河線を救うことが北海道を救うことにもなる。

最後に,パネリストによる追加の存続宣言が発表された。

「ふるさと銀河線」存続宣言(追加)

一,私たちは銀河線を未来に引き継ぐ使命がある。
一,銀河線は走り続けることができる。
一,私たちはいまこそ行動しよう。

16時00分終了。

陸別町の粋な取り計らいで,置戸・足寄方面にバスを出してくれた。私は足寄町民になりすまして足寄行きに乗る。

バスの中では気分の高揚した感じがまだ続いていて,役場の吏員の出張には銀河線の利用を義務付けるべきだとか熱く訴える人がいた。ダイヤが悪いから利用しないのではなく,ダイヤに合わせれば良いんだと。まったくその通りである。


約40分で足寄到着。


足寄駅には新名所ができていた。

 
足寄では両国という蕎麦屋がうまいと聞いていたので夕食に入ってみる。たしかにてんぷらも手打ちのソバも上等だった。天ぷら定食1350円。


「アイスクリーム・本・弁当」……この店は何屋さんなのか。


千春ありが塔からの夜景。


北見からの列車は定刻で到着。


車内は蛍光灯の青白い光が薄暗く灯っており,この上なく気持ちが悪い。頭痛がしてくる。このような列車で毎日通っている高校生はかわいそうだ。照明のことを知っている人なら常識だが色温度の高い蛍光灯のような光源で照度を落とすと不快感をもたらすのである。これが白熱灯のような色温度の低い光源だと暗くても気分が悪くなったりはしない。電球色の蛍光灯というのもあるので,半分くらいそれに取り替えれば雰囲気はぐっと良くなるはずだが,そういう工夫さえないというというのは,愚かだとしか言いようがない。


定刻で池田到着。

釧路行きのスーパーおおぞら9号は,大雪のため44分遅れ,釧路に着いたのは22時近くになった。

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