北海観光節小さな旅行記雲海・ガーデンショー・ドライブインの旅

層雲峡温泉

帯広を出て1時間40分,糠平温泉街に入った。バスターミナルの前では,係員が大きく「×」と書かれた札をかざして立っており,バスは勢いよく通過していった。

昭和30年に竣工した人造湖の糠平湖。

 

旧士幌線の橋梁群は国の登録有形文化財となっており,国道沿いに案内板や駐車場が整備されていた。

かつて1000人以上が住んでいたという十勝三股は,いまや見事なまでの笹原と白樺林に変わっている。国鉄士幌線はここが終点だったが,祖母の母親が広尾線で大樹の甥の家を訪ねた帰途,富良野に帰るはずが乗る列車を間違えて十勝三股まで行ってしまったことがあった。そのころ携帯電話はもちろん,普通の電話さえ普及していない時代であるから,三股駅から国鉄の電話回線を通じてうちに連絡が入ったという。昭和35年頃の話である。

いよいよ三国峠にさしかかる。樹海の眺望は圧巻である。

道内最高所の峠,標高1139mの三国峠。

昭和50年竣工の大雪湖。

帯広を出て2時間あまりで層雲峡に到着した。

バスターミナルにあった古めかしい時刻表。

層雲峡温泉街。大雪山国立公園内では最大の温泉郷である。祖母は婦人会の旅行などで,年に2回くらいは層雲峡に泊まりがけで来ていた。子供のころ,そのお土産が楽しみだった。

よく見なければ気づかなかったセイコーマート。国立公園内とて,これほど目立たないコンビニは珍しい。

久々に「黒岳の湯」で入浴する。予定外だったが,タオルを持ってきてよかった。

釧路で勤めていたとき,帰省の道中で黒岳の湯に立ち寄ったことが何度かあった。雰囲気の良い日帰り入浴施設で,いつもたくさんの入浴客で賑わっていた。

ところが,今日はお客さんが一人もいなかった。別に,施設が老朽化して魅力がなくなったというわけではない。

 

層雲峡商店街「キャニオンモール」にも人影がなかった。

ひっそりとした層雲峡駐車場。

層雲峡は昭和32年に現在の石北峠が開通して以来,道東観光の中継地点として非常な賑わいを見せたが,渓谷部分のトンネル化や紋別自動車道の開通によって,かなり厳しい状況にあるようである。それにしても,これほど閑散としているとは思わなかった。

  

飲食店やお土産屋も何店舗か営業していたが,お客さんはいない。大型ホテルが離れたところに建っているため,浴衣でそぞろ歩くといった雰囲気の温泉街でもない。産直ばやりの中にあって,層雲峡ならではというものが見当たらないのも,物足りない気がする。

頼みは黒岳ロープフェイを利用する登山客だが,いまどきの登山客を満足させるには,温泉街全体としてもう少し工夫がほしいところである。大正年間に大町佳月が層雲峡と名付けたころの原点に,いま一度立ち返ってみる必要があるのではないだろうか。

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