北海観光節旅行記旅ならば東北

玉川温泉

休暇村前12:43頃発→田沢湖畔13:12着 田沢湖駅前BT行 羽後交通バス

「鶴の湯入口」から朝もご一緒した夫婦が乗ってきた。帰りは車道を歩いてきたのだろう。向こうは既にバスに乗っていたわたしを見て,また旧道を歩いて戻ったのだろうと思っただろう。そうじゃないのだ。

田沢湖畔バスターミナルで下車する。ご夫婦とはここで会釈をして別れる。

バスの乗り換え時間は15分ほどだったが,湖がすぐ目の前だったので湖を少し散策してお土産を買うこともできた。

 

田沢湖は地図で見たとおりのきれいな円形の湖で,明るい空色をしていた。せっかく思い入れて来たのだから何か記念にと思い,木製のぐいのみを買った。

田沢湖畔13:31発→玉川温泉14:33着 玉川温泉行秋北バス

 

玉川温泉行きのバスに乗り換える。乗客の平均年齢が一気に30歳くらい上がって,周りはみな80を超えていると思われる。雰囲気的には恐山の登山バスと似ており,路線バスではあるが全員が観光客で,テープによる車窓案内があった。

さっきのバスの運転士さんも鶴の湯への行き方を教えてくれて親切だが,今度のバスの運転士さんも非常に親切だ。しかし口の前につけているマイクのスイッチが常にONとなっており,シーハー,クチャクチャという音が全部聞こえてくるので気持ち悪い。

玉川温泉への道は国道341号。冬季閉鎖になるというだけあって国道にしてはなかなかの酷道だった。

 

真っ青な水が印象的な玉川と玉川ダム。この川こそが秋田美人の源だった。

俗に秋田美人といわれるが,秋田に美人が多かった要因のひとつに水が酸性だったということがある。玉川の酸性水が雄物川に合流する頃には弱酸性となり,ちょうど化粧水のような作用をするのだ。しかし1991年に玉川ダム上流に酸性水の中和処理施設が完成したことにより,この化粧水効果がなくなってしまった。いまの秋田の人を見るとたしかに総じて色白なのだが,玉のような肌というのがなかなか見当たらないのはこのためではないかと思ったりする。

玉川温泉

酸性の温泉ならば玉川

玉川温泉については書籍も何冊か出ていて一部には非常に有名なようだが,一般にはあまり知られていない温泉である。何で有名かといと末期ガンに特効があるとされているからである。ほかにもpH=1.2という日本一の酸性泉であること,9000L/minという日本一の湧出量を誇ることもでも知られている。わたしは日本一の酸性泉というのに惹かれて玉川温泉へやってきた。

わたしが温泉を選ぶときいちばん気にするのはpH値である。pHが7より大きければアルカリ性,小さければ酸性ということになるが,アルカリ性の温泉は極力避けるようにしている。俗にアルカリ性の温泉は"美肌の湯"と言われるが,これはまやかしではないかと思う。たしかにアルカリ性の温泉は,お湯に浸かっている間は肌がすべすべになったような気がするが,体が乾くと油が抜け落ちたように皮膚がかさかさになり,爪のまわりの角質などもカチカチになってしまう。

ともかく温泉は酸性が良い。釧路から日帰り圏内にある川湯温泉にはしょっちゅう行っているし,これまでの旅行でも蔵王温泉,恵山温泉など,強酸性の温泉を訪れてきた。しかし,いままで体験したのはせいぜいpH=1.7程度である。酸性の温泉を語るにはこの日本一の酸性泉に入っておく必要があると思った。

温泉の周辺には登別の地獄谷のような噴気孔がある。1周1kmの自然研究路が設けられているので,明るいうちに歩いてみる。

ゴザを持って歩いている人が多い。ここの岩盤からは放射能が出ており,それがガンに効くというのだ。すれ違う人はみんなガンなのかどうか分からないが,意外と俗っぽい雰囲気で,私利私欲がシワに刻まれたような悪人面をした人が多かった。


毒々しい湯の川。

よく本などで見る有名な構図。緑のテントの中をはじめ,あちこちで岩盤浴をしている人がいた。右手には無料の露天風呂も見える。しかし,この絵は玉川温泉の特殊な一面に過ぎないということがわかった。

 

本来の玉川温泉は,東トコロ温泉,新玉川温泉なども経営する湯瀬ホテルグループの立派な温泉宿である。

入浴料600円を払って大浴場に入る。入り口には「長旅でお疲れの時や空腹時,満腹時は避けてください。」という注意書きに始まり,他の温泉にはないような入浴方法がいろいろ書いてある。

浴槽はいくつかあったが,源泉の湯が1つ,露天の湯(無料露天風呂と同じ泉質の湯)が1つ,あとは源泉50%の湯が「あつ湯」「ぬる湯」「気泡湯」「寝湯」などいくつかあった。白湯はかけ湯のみ。

かけ湯で汗を流し,まず50%の湯に浸かる。入るなり体中ビリビリ,チクチク,まったくすごい刺激である。鶴の湯の硫黄泉で肌が軟化していたということもあるかもしれないが,pH=1.7〜1.9の川湯温泉では経験したことのない感覚だ。考えてみればpHは対数であるから,pH=1.2の湯を水で半分に割ったとしても川湯温泉よりpHは低いはずだ。

源泉の湯に入ってみるが,これはもう1分と入っていられない。それでも慣れたおじさんがたは長いこと浸かっている。湯を舐めてみると舌が焼け付くようである。飲泉所もあったが,ストローで飲むかマウスピースをはめないと歯が溶けるというのでやめた。

痛みに耐えつつ合わせて20分くらいは浸かっていたが,最後に浴びた白湯のありがたさが身にしみた。まるで修験道のようである。湯に浸かっている人たちも仙人のような尊い顔をした人ばかりであった。

これはたしかに薬効がありそうである。また来てみたいものだが,この山奥に今度来るのはいつになるだろうか。

 

最近は泉質に特徴のない日帰り入浴施設が増えて銭湯と温泉の違いがわからない人が増えたようである。そのような人は玉川温泉に来るべきだ。にごり湯ではない,硫黄泉でもない,アルカリ泉のように肌がぬるぬるするわけでもない。しかし,入った瞬間に温泉であることがわかるはずだ。

日本一の酸性泉ということは恐らく世界一の酸性泉と言っても良いであろう。日本が世界に誇る玉川温泉である。これで,「お前,酸性の温泉に入ったことはあるか」と聞かれたら,自信を持って「はい,あります」と答えられる。

玉川温泉16:02発→鹿角花輪駅17:11着 花輪駅行 秋北バス

標高約1000mの峠を越え,鹿角市へ下る。


八幡平アスピーテライン入り口。かつての有料道路で,この奥にも良い温泉がいくつかある。いつか通ってみたい道だ。

鹿角花輪駅前。平日にもかかわらずシャッターを下ろした店が多かった。それもそのはず,昨日まで花輪ばやしが行われており,三日三晩不眠不休で踊り続けていたのだ。

鹿角で夕食をと思っていたが,開いている店もなく,国道をしばらく歩いて見つけたラーメン屋に入った。タンメン(みそ)600円+ライス200円。こしょうが効いていてまずまずだった。

時間があるので市街を散策してみる。

鹿角は一度来たことがあって,あまり良い印象を持っていなかったが,国道からひとつ奥の通りに入るとしゃれた商店街があった。


仏壇と文具という珍しい店を見つけた。

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