7月30日(金)
釧路発のまりもが新婚旅行列車と呼ばれたのは昔のこと。今では夜汽車に乗るといったら,親が危篤でかけつけるところだとか,葬式の帰りだとか,訳ありの人ばかりである。いつもは喫煙車の指定席を取るのだが(喫煙はしないが空いているため),今日はうっかり禁煙車を取ってしまった。そうしたら車内は元気な少年少女でいっぱいだった。こういう朗らかな夜汽車もいいものだ。
7月31日(土)
札幌到着。すがすがしい朝である。サンクスで弁当を購入して駅前のベンチでゆっくりといただく。
本日は指定席が満席とのこと。窓が汚く外がよく見えないので,ほとんど寝て過ごした。
東北へ向けてひたすら移動である。同じ北海道から東北へ行くにしても,函館からと釧路からでは大きく違うのだ。
写真右手のスーパー北斗から左手の白鳥へ乗り換え。
函館駅のホームで購入した「おにぎり弁当」。掛け紙には「お弁当」としか書いてなかったので売り子さんに尋ねると,おにぎり2つと幕の内弁当のおかずが半分入っているとのこと。これは必要にして十分な内容で価格も500円と安くて正解だった。
自由席に乗車したが,車内では韓国からの旅行客がやかましかった。アジア系の外国人が多いのは快速海峡のころから相変わらずである。時刻表上では停車することになっていないが,やはり蟹田駅で停車してJR北海道とJR東日本の車掌が交代した。函館から青森までの間,車内改札は行われなかった。
あまり人気のない701系電車であるが,この列車に乗るとやはり東北に来たんだという実感が沸く。
川部駅。JR五能線の分岐駅。またかつての弘南鉄道黒石線の分岐駅だったため,乗り換えのために何度か降りたことがあるが,今日はここで1時間余り時間をとって温泉に行ってみる。
川部は南津軽郡田舎館村の一集落で,名前からしてのどかな所である。駅裏に温泉があるとのことだったので,とりあえず踏み切りを渡って駅の裏手に向かう。曲がりくねった細い道に神社などがあり,青森県いえども北海道にはない日本的情緒を感じる。
しかし15分くらい歩いても温泉が見つからない。これ以上歩くと,汗だけかいて温泉に入り損ねるという最悪の結果になりかねず,少しあせってきた。道を尋ねようにも炎天下のせいか誰も外を歩いていない。
川部温泉
駅から20分ほど歩いてようやく温泉にたどり着いた。わたしは最近神社・仏閣によくお参りしているせいか体調がすこぶる良好で,しばらく温泉から遠ざかっていた。今日は久しぶりの温泉入浴である。
この温泉は予想外に素晴らしかった。
温泉は当然源泉かけ流しで,浴槽から勢い良くお湯があふれ,床の全面に清潔なお湯がさらさらと流れている。泉質はややアルカリ寄りのあっさりした食塩泉だが,こういう暑い日にはアルカリ泉は体の油を抜いてくれるので好ましい。三角屋根のため天井が高く,いちばん高いところに天窓がついている。外の空気は浴室の側窓から取り込まれ,天窓から抜けていく。室内には自然な気流感があり,外は炎天下だが浴室はむしろ涼しさを感じるくらいである。やかましい機械換気のファンはなく,とても静かだ。浴室と脱衣室はガラスの扉で仕切られており,お互いに見通しがきくので,盗難の恐れもない。
わたしは以前,恐山で温泉の理想形を見たのであるが,今回ここで,近代的な公共温泉における理想形というべきものを見ることができたように思う。