さて,予定より早く着いたのでこれからどうしようかとふらふら歩いていると,集落のほうから笛と太鼓の音が聴こえてきた。
江繋神楽
音が聴こえてくるほうに歩いて行くと,八坂神社で祭りが行われており,ちょうど神楽が始まるところだった。
太鼓をはたくのはかなり高齢のおじいさんである。太鼓のひもを肩にかけようとするのだが,それにも四苦八苦している。観客から「手伝ってあげたら」とか声が飛んだが,「好きなようにやらしてやれ」と制止する人もおり,おじいさんはマイペースでゆっくりと仕度をする。
しかし,いざ演奏が始まってみるとおじいさんは実にリズミカルに太鼓をはたく。この神楽をわたしはもう一生見ることができないだろうと悟ったので動画で撮影したのだが,新しいデジカメのため操作を誤って消してしまったのは惜しまれる。早池峰神社で見た神楽にはあまり感銘を受けるものがなかったが,この神楽には感銘を受けた。神楽はほんの3分ほどで終了し,地区の人たちは神社の本殿に入って酒盛りを始めた。
江繋市街
旧小国村では小国と並ぶ大きな集落である。国道はバイパス化されているが,旧道沿いに商店街が残る。人もそれなりに歩いている。川井村は「あいさつ村」を名乗っているので,とりあえず会う人皆にお辞儀をしてすれ違う。
自動販売機で缶ジュースを買って飲んでいると,軒先に座っていたおばあさんが「今日がいちばん暑い」と話していた。気温は恐らく32〜33℃くらいで北海道よりはむしろ涼しく感じたが,このあたりはあまり暑くならない地域なのかもしれない。
西塔幸子記念館
江繋公民館に隣接した立派な記念館。土日祝は休館のはずだが,今日は祭りのためか開放されていた。以前から気になっていたところなので見学できてよかった。
小国川の上流に向かって歩いて行く。
国道340号はほとんどの区間でバイパス化されているが,人家は旧道に沿って連なる。橋梁は昭和10年頃に建設されており,北海道にはない趣を感じさせる道である。昭和10年といえば昭和の大凶作から間もない頃。この道路には凶作や戦争など幾多の歴史がしみこんでいるわけだ。
北海道では見られないこの巨大な葉の作物は,葉タバコ(バーレー種)である。特産の南部葉はなくなったものの岩手県は全国一の葉タバコ生産地である。
しかし山峡のこの地方では商品となるのはタバコぐらいで,畑や水田も主に自給用として作られているに過ぎないようである。
そしてどの家の庭先にもこのようなボンネット型のトラックが停まっていた。林業を生業としているようである。
昭和30年代には江繋・小国地区だけで100棟以上の南部曲屋があったというが,現在ではめったに茅葺き農家を見ることがなくなった。かろうじて残った建物も写真のような哀れな姿になっている。
小国市街
川井村役場小国出張所前にあった公用車。どの車もぴかぴかの新車である。国内屈指の山村ゆえ,補助金などで財政的に恵まれている面もあるのだろう。
Aコープおぐに | 小国郵便局 |
こういう看板を目指して訪ねてくる観光客は年に何人くらいいるのだろうか。
小国川が美しい小国市街。
このバスは小国からさらに上流へ向かい,道又,新田,大仁田を周回して再び小国に戻り,川井を目指す。
これが国道である。本州で言うところの「3ケタ国道」である。北海道では3ケタ国道とてこんな道はありえない。
新田の分岐。村民バスはここで右折し,川井村方面へ折り返す。
なお,今年3月31日まで村民バスのうち1日2便が峠を越えて遠野市の恩徳に至り,遠野行の早池峰バスに接続していたのであるが,この道路の状況を見ていると,峠越えの路線バスが半年前まで運行されていたことのほうがむしろ不思議に思えてくる。
新田からは村道に入り,さらに道は怪しくなる。それでも小さな集落が点々と続く。
国道106号の合流点を右折。
JR川井駅前到着。ここまで乗客はずっとわたし1人だった。