盛岡では泊まらずに,夜船で北海道に戻ることにした。経済性を考えての選択ではあるが,青森まで6210円もかかってしまうのは高く感じる。既にみどりの窓口は閉鎖されており,きっぷは自動券売機で購入するしかなかった。新幹線を立席にすれば少し安くなると思ったのだが,立席+特急乗継で購入する方法が見つからなかった。
がら空きだった。
赤いランプの終列車。
青森駅西口。ここに降り立つたび,もう一生来ることはできないかもしれないという寂しい気持ちになる。
会社の経営状況が思わしくない東日本フェリーであるが,乗船してもやはりそういう感じがした。係員の動きにも以前のようなきびきびとしたところがなくなり,夜行便なのに蛍光灯が煌々とついたままだった。
北海道上陸。北の大地に青春をかける青年たちと一緒に降りたが,わたしにとっては現実世界に引き戻される瞬間である。
西ききょう温泉
フェリーターミナルから30分ほど歩いて到着。源泉かけ流しの公衆浴場。大きなヒューム管を利用した浴槽は民宿つるいに匹敵するユニークさだ。
函館市内だというのにまったく整備されていない農道を歩く。市街化調整区域のゆえだろうが,法律の力で無理やり開発が規制された地域というのは,得体の知れない魑魅魍魎が潜んでいるような気がして居心地が悪い。
温泉からさらに30分ほど歩いて函館本線桔梗駅到着。さわやかな有人駅である。
釧路までの普通運賃9030円。倶知安,滝川経由のコースでは,営業キロ669.9km,普通運賃9870円となる。
改札で青春18きっぷに入鋏を受けて,今日も長い旅が始まる。
普通列車だけで札幌に向かうには数少ない接続のよい列車なので,車内は盛況である。
森で18分停車。高校生のアルバイトが2人も"いかめし"の立ち売りをしていたが,やる気がなさそう。せっかく窓の開く列車なのだから,もうちょっと窓のそばを行ったり来たりすればよいだろうに。
向かいのボックスには駒ケ岳の登山帰りのオジサンが座っていた。そこに八雲から,あばあちゃんとお孫さんが乗ってきた。お孫さんは玉のようにかわいい3歳くらい女の子で,オジサンとすぐに親しくなり,きゃっきゃとじゃれ合っている。わたしもあと30年くらいしたら,こんな子どもに好かれるオジサンになっていればいいと思う。
駒ヶ岳駅からはそのオジサンのほかに学生のグループが20人くらい乗ってきた。彼らもまた,今の世の中にこんな行儀のよい青年がいたのかと驚くほどの好青年だった。長万部で乗り換えるときにも,列車は既に入線していたのにもかかわらず,一目散に乗り込んで荷物を置いて席を取るなどというようなことはせず,ホームで他のお客さんが乗り込むのを待ち,発車時間間際になってようやく荷物をデッキにまとめて積み込み,ロングーシートに遠慮がちに座っていた。山登りで疲れているだろうに,この行儀のよさには感心した。
学生グループの半分くらいは余市駅で下車した。
いろいろな人間模様を見ながら札幌を通過する。
函館本線をひたすら乗り継いで北上。今回の旅は列車に乗る機会が少なかったが,今日になって,やっと汽車旅という雰囲気になってきた。
ダメ押しで帯広まで3時間半。
最後はやっぱり特急に乗らないと間に合わない。
今日はここまで2300円で13時間も汽車に乗ってきたのに,4170円で1時間半しか乗車できないというのはもったいない。
霧の釧路へ到着。
旅行記終了。読んでいただきありがとうございました。
北海観光節
参考資料
・『よさこい/YOSAKOI学リーディングス』,内田忠賢編,開成出版,2003.12
・「ブラジルの太鼓」,石本美由起作詩,上原げんと作曲,伊藤久男,1954.1