国道から4キロメートルほど進んで,バス停・湯ノ花清滝前到着。バスはここで折り返して国道に戻っていった。
バス停のすぐ横に,共同浴場「湯端の湯」があった。
さあ一風呂,と思ったが,この掲示を見て踏みとどまった。
建物に近づくのも躊躇される雰囲気を感じたので,横にあった注意書きをカメラの望遠で撮り,画面で拡大してみると,「部落内の全員が監視人です」とあった。
入浴券は販売所の掲示があるところで購入するようにとあったが,こんな朝から開いている店などない。1000円払ってでも,入る価値は十分にあると思ったが,「部落内の全員が監視人です」というのは,要は,よそ者は入ってくれるなという意思表示である。
残念だが,入浴はあきらめ,早々に湯ノ花温泉を立ち去ることにした。
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天神湯 | 弘法の湯 |
湯ノ花温泉には4つの素朴な共同浴場がある。いずれの共同浴場にも湯端の湯と同様の掲示がされていた。
よそから来る人たちとの確執に長年耐えてきて,ついに耐えきれなくなった結果が,先の掲示だろう。別に住民に悪気があるわけではないと思う。山深い土地に,ぽっかりと開けた,掘れば温泉の出る桃源郷のような集落で,自分たちの財産である温泉に,何の利益ももたらさないよそ者が,浴場を汚して帰っていくのを快く思わない気持ちも理解できる。しかし,ちょっと寂しい光景ではあった。
湯ノ花温泉もコンクリートの温泉旅館などなく,民宿風の温泉宿が20軒ほど建ち並んでいる。
目抜き通りにも人影はないが,恐らく窓の奥からは,監視の目が向けられているに違いない。
周辺の山は,一切立ち入り禁止。勝手にキノコや山菜を採りに入る人がいるのだろう。
各家の玄関には,「訪問販売お断り」の張り紙が執拗に貼られていた。例としてあげられていたのが「魚介類」「油揚げ」「果物」だった。
かつてのりんごの行商など,たしかにいまからすれば,すごい高い値段でほとんど強制的に買わされたものだが,その分,いろいろな情報を運んできてくれて,子供の頃の楽しい思い出でもあった。
それが悪質な訪問販売の一言で片づけられるのだとしたら,これもまた寂しいことだ。あるいは,かつての行商とは別種の,本当に詐欺まがいの業者がいるのだろうか。
きれいな山,きれいな川。
しかし,山は立ち入り禁止,川も釣りをするには入漁券が必要とのこと。
こうしてみると,北海道の自然が,本州の人たちからは「手つかず」に見えて,魅力を感じるというのもわかる気がする。
国道まで農家が点々と続く道を歩く。この辺りの倉は,土壁や石造だった。それぞれの倉が,北海道だったら文化財に指定されそうな立派なものである。
旧舘岩村の市街地に入った。
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旅館 | 自動車整備工場 |
旧役場。
農協。
4年前まで独立した村だったというのが信じられないくらい,ひっそりとしていた。
学校だけは立派だった。
国道を左に折れ,曲家で有名な前沢集落に向かう。
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途中,ほとんどの家に立派な倉があった。これはこの地方独特のものだろうか。