華やかな甲府駅前。
駅前の山交百貨店で,初めて見た曲線エスカレーター。店内では,もう正月の歌がかかっていた。年が明けるまでまだ1日ある。
年越しそばの特設販売ブースも繁盛。
明日は朝から身延山詣でということで,宿場の選択肢は下部温泉以外に思いつかなかった。しかし,宿はことごとく素泊まり不可で,チェックイン時刻が早く指定されていたのでまいった。早いところでは,17時でチェックイン締め切りという宿もあった。そういうのんびりした旅をする人も中にはいてよいと思うが,みんながみんな17時で宿入りするのもまた異常だと思う。
甲斐上野駅で列車交換。予約した宿は,かろうじて19時までチェックインを受け付けていた。申し込みの際に,駅に18時50分着と書いておいたのだが,案の定,18時前に電話がかかってきた。
車中では電話に出られないので,列車交換中,ホームに出て宿に電話する。食事の時間が19時までなので,宿に入ったらすぐに食事をしてほしいとのことだった。遅いと怒られなかっただけ良かった。
18時50分,下部温泉駅に到着すると,宿からワゴン車で迎えに来てくれていた。駅の写真を撮ることもままならなかったが,今日ばかりはしかたがないので,そそくさと車に乗り込んで宿まで送ってもらった。
車の中で,飲み物が1本サービスになるが何にするかと問われたので,ウーロン茶を頼んだ。
本日のお宿,下部温泉湯元ホテル。
言われた通り,まずは食堂に向かった。
女給さんたちに,風呂も入らずに食事をさせてすまないとしきりに謝られる。風呂はいつも食事の後なので全然かまわないのだが,食事の前に風呂に入るのが常識なのだろうか。
「仕事ですか」と問われ,「いえ,観光です」と答えると,一同無言となり,場が冷え切った。男一人で温泉旅館に泊まるのが,そんなにおかしいことか。温泉旅館に泊まるのは連れか家族という常識もそろそろ改めてもらいたいものだ。
山梨県の郷土料理「ほうとう」。料理はおいしかった。
下部温泉は,信玄公の隠し湯と言われ,国民保養温泉地,国民保健温泉地の両方に指定されている名湯である。
食事が終わったところで,温泉街を散策してみる。
部屋の前はすぐ川だった。ちょうど堰があって,ザアザアとなかなか騒がしい。耳栓を貸し出してくれるとのことだったが,キャンプでもする思いをすればと思って,断った。
車のフロントガラスにはシートが被せてあった。霜除けと思われるが,北海道では見たことのない風習だ。
川沿いの細い道に沿うひっそりとした温泉街で,20時前だが,お土産屋などはもう閉まっていた。
一人旅の場合,到着時には布団が敷いてあることが多いのだが,布団がなかった。セルフサービスであるとも,電話で頼むようにとも説明書きがなかったので,押入れから自分で布団を出して敷いた。シーツ類がなかったので,肌が触れて布団を汚すことのないよう,やむを得ず服を着たまま寝た。
湯元ホテルを名乗るだけあって,温泉は良かった。自然湧出の自家源泉を有しており,日本温泉協会による評価項目もほとんどパーフェクトである。源泉温度は29.1℃と低いが,広々とした大浴槽に冷たいままの源泉が並々と注がれていたのは素晴らしかった。
2011年12月31日(土)
朝食は7時30分と指定されたので,時間どおりにいくと,ほかの宿泊客も,ぞろぞろと食堂に向かっていた。洋服を着ていたのは私のみで,ほかの全員が揃いの浴衣に丹前姿であった。観光客というのはわがままなようでいて,妙に行儀の良いところがある。
日が明けて,部屋の欄干から外を見る。鉄筋コンクリートの建物も多いが,ひなびた雰囲気はなかなか良かった。
お土産屋は朝早くから営業していた。
時間が止まったような温泉街。