乗客はわたしだけだった。途中でさっきの彼を追い抜いた。彼も傘を持っていなかったが,どこかで雨宿りできただろうか。
なまはげのゆっこ
大広間では梓愛の歌謡ショーをやっていて賑やかだった。温泉は浴室に入るなりムッとくる,あの日帰り公共温泉特有の嫌な臭いがあった。お湯も死んでおり,長くは浸かっていられなかった。
今日は飢餓旅行になる恐れがあったが,施設内に手ごろな食堂があったので,すかさずここで食事をとることにする。何でもいいからともかく胃袋を満たすのが先決と思い,カレーライス(500円)を頼んだ。
男鹿は交通の便利悪く,一日かけてもいくらも観光することはできない。真山神社を見たら明るいうちに見れるのはあと1ヶ所くらいだ。次はマールを見に行くことにする。
マールの一の目潟,二の目潟を見渡す八望台へはなまはげのゆっこから約3km。人家もまったくない道をてくてくと歩いて行く。
八望台
八望台に着いてまず目にしたのはこのレストハウスの廃墟。男鹿は昭和48年に国定公園に指定されているが,最近は寂れているようである。
二ノ目潟 直径400m |
一ノ目潟 直径700m |
わたしは海や川はあまり好きではないが,湖は好きである。特にこのような火山性のぽっかりと口を開けた丸い湖には心惹かれるものがある。
展望台に上がると立っていれないほど風が強く,肘を手すりにつけてカメラを構えても手ぶれしてしまうほどだった。こんな寒い中でも観光客が何組か来ていた。
次は男鹿温泉のバス停に向かって歩く。男鹿温泉まで約5km。
道路が奇妙に屈曲している場所があった。これは有料道路の料金所の跡であろう。
八望台から北に1km地点に新奥の細道の入り口があった。この道を行けば1kmくらいの短縮が図れそうである。
しかし20mくらい進んで引き返した。道がずぶずぶぬかるのだ。急がば回れ。
男鹿温泉
男鹿温泉は北海道でいうと白金温泉,糠平温泉に相当する規模の温泉郷である。
八望台から約50分で男鹿温泉入り口に。
バスの時間まで1時間ほどあるので温泉に入ってみようと思う。温泉は基本的に一日一湯と思っているが,さっきのなまはげのゆっこでは後味が悪い。
男鹿萬盛閣
登別・洞爺の万世閣はマンセイカクと読むが,ここはバンセイカクと読む。もっとも登別・洞爺の万世閣もバンセイカクと読む人が少なからずいる。
この温泉は良かった。玄関で「入浴だけよろしいですか」と訪ねたところ,着物姿のきれいな若い女将さんが親切に案内してくれた。
温泉は大きな岩風呂一つだけの簡素な造りだが,浴室にはもうもうと湯気が立ち込め,なまはげのゆっこのような異臭はまったくない。泉質もなまはげのゆっこと似た薄塩味の食塩泉だが,お湯の鮮度がまったく違い,体の芯から浄化されるようである。他の入浴客は一組の家族連れだけだった。
懐かしい雰囲気のゲームコーナーと卓球台。 | ありとあらゆる旅行会社の指定を受けている。 |
何か20年位前にさかのぼったような非常に懐かしい雰囲気である。婦人浴場は恐らく男湯よりもかなり小さいと思う。これも昔そのままだ。
温泉から上がると女将さんに「上がられましたか。ゆっくりしていってください」と声をかけられた。
日帰り入浴でここまで親切にしてもらったのは初めてである。今度はぜひ泊まりで来てみたいと思わせる旅館だった。
パブ |
スナック |
今日一日で歩いた距離は約15kmになった。冬道を15kmも歩けるものか心配だったが,暖かく雪がなかったこともあって,たいした距離には感じなかった。
今度のバスも乗客はわたしだけだった。
男鹿線の終着駅・男鹿駅。窓口,キヨスク,こけし亭は既に閉まっており寂しかった。
列車は早くからホームに入っていたが,改札は発車ぎりぎりまで行われなかった。キハ40形3両編成。乗車した車両はオールロングシートだった。
秋田では接続時間が4分しかなかったが順調に乗り換え。酒田までは2時間弱の道のり。モーターがなくて静かなサハに乗車し,少し眠る。目を覚ますといつの間にか車内はわたし一人になっていた。外は雨が激しく降っていた。
酒田到着。
本日の御宿は酒田東急イン。