会津バス若松駅前バスターミナル。これからJRで福島に向かうと,普通列車だといちばん早くて福島到着が20時28分になる。新幹線を使えば19時38分に着くが,余計に1660円かかる。県庁所在地と13万人都市を結ぶ交通がなぜこれほど不便なのかと思ったら,バスの便が充実しているのである。
バスはほとんど全線高速道路を通り,所要1時間20分,運賃1600円で結んでいる。大晦日の夜にもかかわらず,乗客は9名いた。年越しそばも食べないでバスに乗っているということは皆それぞれ訳ありなのだろう。
きらびやかな電飾に彩られた福島駅に到着。
19時20分,紅白歌合戦が始まった。いちおう紅白歌合戦の観覧申し込み葉書は毎年出している。今年はNHKの受信料を払っていることが応募資格に加えられたため若干倍率が下がったものの,やはり届いたのは落選の通知だった。
暖かな電車でひたすら北へ向かう。今頃,新宿のコマ劇場では菅原都々子さんが歌手人生最後となるステージで「月がとっても青いから」を歌っているはずである。
菅原都々子さんは昭和12年に最初のレコードを吹き込んでおり,日本の歌謡曲が本当に美しかった時代を知る恐らく最後の歌手である。まだまだ歌いたいからと自宅の稽古場で発声練習に励み,「江の島エレジーが歌えなくなったらわたくしステージをやめます」とおっしゃっていたように非常に真摯な姿勢で歌に取り組まれていた方だった。それだけに,ご自身で引き際を決めたのだろうが,まだまだお元気なのに明日から歌が聴けなくなるというのは,生き別れになったような何とも言えぬ寂しさを感じる。
仙台では今年最後の勤めを終えた人達が大勢乗り込むも,一ノ関に着く頃には車内ががら空きになった。
きっぷを買う少年達で賑わう一ノ関駅。
車内はほとんどが初詣に行く少年と少女で占められていた。大晦日から元日にかけて運転される終夜臨時列車は,どこの地方でもこんな感じである。男同士,女同士のグループが多いが,意外と一人で乗っている人が多いのは,盛岡あたりの恋人と平泉で落ち合うつもりなのだろうか。