昭和・北海道地図資料館

全国レクリエーション鉄道地図

昭和35年 交通協同出版社

1999年12月に祖父が死んだ。この地図は祖父の部屋で遺品を整理していたときに見つけたものである。かなり使い込んでいるが,戦友会に出かけるときなどに使ったものであろうか。
昭和35年というと高度経済成長に入る直前の日本の転換期であり,北海道が最も賑わっていた頃である。このあと離農が急速に進み,炭鉱の閉山が相次ぐことになる。
鉄道も新幹線やディーゼル特急が誕生する直前の蒸気機関車全盛時であり,地図からも時代の勢いが感じられる。表紙は昭和35年という時代を考慮しても少々時代がかっている。


地図は折りたたみ式で広げると幅約1.5mになる。裏表に印刷されており,全国鉄道地図のほか,都市部,観光地の詳細図がついている。現在も同様の鉄道地図は細々と刊行されているが,本図はとりわけ彩色が美しく,鉄道地図特有の図の歪みも秀逸である。


北海道中央部
函館本線の神居古潭,根室本線の狩勝峠はまだ旧線。旭川電気軌道,士別軌道,北海道拓殖鉄道,雄別鉄道,鶴居村営軌道も当然現役。池北線(現在のふるさと銀河線)が網走本線を名乗っており,石北本線はまだ本線に昇格していない。白糠線はまだできていない。赤の二重線は国鉄バスであり,鉄道線を補完するようにして多くのバス路線を持っていたことがわかる。美瑛からの路線が望岳台を越えて噴火口下まで達しているが,昭和37年の十勝岳噴火により望岳台止まりとなった。


室蘭本線(岩見沢〜苫小牧)付近
今ではなぜこのローカル線が複線なのかと不思議に思われるが,この時代には夕張線,万字線,幌内線,函館本線美唄支線・上砂川支線,歌志内線,私鉄の夕張鉄道,三菱美唄鉄道,三井芦別鉄道を一手に束ね,石狩炭田の石炭を室蘭へ運んでいたのである。現在は石勝線の一部として残った夕張線を除いて,すべてが廃線になっている。


運賃表
神戸〜根室など,今では鉄道で移動する人は皆無であろうが,この当時はこの運賃表も実用性があったのだろう。大阪と青森を結ぶ「日本海」は既にあったが,「白鳥」は翌昭和36年10月のダイヤ改正で誕生する。

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