昭和・北海道地図資料館

MAP-KERCHIEF 北海道

昭和55年 小林

2006年10月,支笏湖のお土産屋で購入。観光地のお土産屋ではときどき掘り出し物が見つかるが,四半世紀も前の地図はさすがに珍しい。東京神田の小林(株)が販売していた全国シリーズの地図ハンカチーフで,綿100%の生地に堅牢染で印刷されている。地図は地図専門メーカーの東京カートグラフィックが編纂しており,小縮尺ながらも密度の濃い内容となっている。


松前半島 1/1250000

○に急のマークは,急行列車停車駅を示している。江差線には急行「えさし」が,松前線には急行「松前」がそれぞれ上り2本,下り1本走っていたが,この年(昭和55年)10月のダイヤ改正で快速に格下げされる。松前線の急行が渡島吉岡駅に停車しているのは青函トンネルの建設基地があったからだろう(地図で「おしまよしかわ」とあるのは「おしまよしおか」の間違い)。この当時,渡島吉岡駅の1日の乗降客数は約500人であった。一方,渡島知内駅も同じくらいの乗降客数があったのにもかかわらず,急行が停車していないのはなぜだろうか。


枝幸付近 1/1250000

枝幸から南西の歌登にかけて延びている工事中の線路は,国鉄美幸線の未成区間である。美幸線は美深と枝幸を結ぶ鉄道線として昭和30年代以降工事が進められ,昭和39年に美深〜仁宇布間が部分開業したものの,完成間際で建設が凍結され,昭和60年9月に営業を廃止している。本地図ではほかに興浜線の雄武〜音標間が未成線として表記され,なぜか札沼線の新十津川〜沼田の廃止区間も未成線の表記で残っている。

歌登市街では真宗大谷派・順信寺が掲載されている。本地図でほかに掲載されている寺院は,善光寺,国泰寺,宗谷護国寺,長応寺(幌延),本浄寺(東利尻)のみで,掲載の基準がいまいち不明である。


知床 1/1250000

国道334号=知床横断道路はこの年9月に開通。知床林道はまだ有料道路の表示になっている。


釧路 1/1250000

この年4月1日,釧路村は町制施行し釧路町となる。釧路湿原というのは比較的最近になって普及してきた地名で,かつては釧路原野と記されることが多かった。「釧路平野」と書かれた地図は珍しい。


富良野 1/1250000

富良野スキー場は戦後まもなくより全国有数のスキー場として知られるようになり,昭和47年に国土計画(株)の経営に移ってからは,国体やワールドカップが開催されてきた。スキー場の名は古くから「国設北の峯スキー場」として親しまれてきたが,北の峯の名ばかりが広まり,北の峯が富良野市にあることは知られていなかった(当時富良野はまったく無名の農村だった)ことから改名の動きが起こり,昭和51年10月に「富良野スキー場」に名称が変更された。しかしこの地図ではまだ北の峯の名前が生きている。なお,「北の峯国際スキー場」という名前が実際にあったのかは不明である。

石勝線が開通する前年であり,富良野にはまだ札幌〜釧路間の特急が停車している。


航空路線の所要時間

千歳,函館,釧路と東京は1時間台で結ばれているが,旭川,帯広から東京へは2時間以上を要している。これは旭川空港と帯広空港がまだジェット化されていなかったためである。各空港のジェット機就航年は,千歳=昭和36年,函館・釧路=昭和48年,旭川=昭和57年,帯広=昭和56年である。なお千歳,函館,釧路は国が設置し管理を行う第2種A空港で,旭川,帯広は国が設置し道(市)が管理を行う第2種B空港であるという違いもあり,空港の格の違いが,ジェット化された時期にも違いとなって現れている。

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