古本屋で購入したものであるが,この地図には甚大な思い入れがある。たしか小学校3年生の頃,私が最初に出会った地図は昭和57年版の塔文社の道路地図であった。学校から帰ると毎日のようにその地図を眺め,よく見るページは図面が黒ずむほどになっていた。ところがその地図をなくしてしまったのである。昭和63年の夏のことである。きっとどこからか出てくるはずだと思いながらもう15年も経ってしまった。
東京地図出版と塔文社はどういう関係にあるのか知らないが,表紙だけ違っていて中身はまったく同じである。札幌の古本屋でほぼ同じ時期のミリオン地図帖を見つけて思わず購入してしまった。ページをめくると少年時代の思い出がよみがえってくる。
凡例
最近の地図にはないアナログな雰囲気が良い。
雄冬 | 浮島峠 | 知床峠 |
新しい国道がどんどん開通していった頃。
札幌広域図1/75000
カラフルな区ごとの色分け。この雰囲気は現在のミリオンマップにも受け継がれている。
支笏湖1/400000
支笏湖は昭和47年の札幌オリンピックを契機として観光開発が進んだ地域である。現在では千歳空港〜ニセコ,洞爺湖方面の通過点の印象が強いが,まだこの頃は美笛峠もダートであり,現在とは違う秘境性を有していたものと思う。支笏湖畔道路は昭和59年まで有料だった。
地図は詳しければ良いというものではない。特に机上旅行の場合にはある程度情報量の抑制された地図のほうが想像が膨らむので好ましい。その点でこの地図は秀逸である。
道道909号 1/400000 現在の道道106号であるが,このときはまだ工事中である。開通してもしばらくはダートの時代が続いた。 |
道道907号 1/400000 現在の452号である。芦別〜桂沢湖は昭和59年に開通し,私はその年の小樽博覧会に行くときに通った。こちらも開通後ダートの時代が長かった。 |
麓郷1/400000 この年「北の国から」のロケがスタートし,翌年に放送が開始された。観光客は増えたが,今もその頃と風景はさほど変わっていないと思う。 |
最近の出版物ではめっきり見なくなったレタリング文字。パソコンのフォントとは異なる味わいがある。
糠平温泉1/79000
地図は情報量や正確さも重要だが,デザインも重要である。この地図帖の観光図はとりわけ配色が美麗で,「行ってみたい」と思わせるデザインである。現在の地図はこの点が欠けている。