5. 鬼峠越え
鬼峠越えの前日に交流会をするのは2008年以来5年ぶりのことだったが,みな大人になって,0時頃にはそれぞれの部屋に入った。長らく使用されていなかった宿泊棟の2階もきれいにリニューアルされて,各部屋には野草の名前が付けられていた。室名板やキーホルダーは旧占冠小学校に拠点を置く「しもかぷ工房」製で,細かなことにも気が行き届いている。
2013年3月24日(日)
7時に朝食会場に行く。食堂も改装された。
照明は裸の蛍光灯からデザインライトとなり,廊下との間は無骨なパーテーションから,飾り棚を兼ねた作り付けの仕切りになった。合板を塗装しただけで,それほどお金をかけているようには見えないが,少しの工夫でずいぶん変わるものだ。
宿泊客は我々一行のほかにもいた。湯の沢温泉の存廃については,村の中でも様々な議論があったと聞くが,奇跡的にも存続の決断がなされて,こうして蘇ったのである。
気温はマイナス3度。風もなく,天候はよさそうだ。
8:00 道の駅しむかっぷ集合 オリエン
昨日からはまたメンバーが一部入れ替わった。毎年参加している人もいれば,今年初めてという参加者も半数程度いる。
隊長の細谷さんからの注意事項を聞く。結局,古いほうの鬼峠を越えることになったようだ。
8:40 鬼峠入り口まで歩いて移動
峠の入り口まで車を使わず,昔の人たちと同じように歩いて行く。
歩いて15分ほどの渡船場跡で会田さんのお話を聞く。毎年同じ話を聞いているわけだが,聞くたびに新たな疑問も沸く。
占冠の劇場で映画を見るのに,ニニウの子供たちが鬼峠を越えてやってきたという話があるが,帰りも渡船に乗っていたのだろうか。
会田さんに聞くと,やはり夜は渡船がなかったのだという。着ているものをまくり上げて,真っ暗の中をみんなで手をつないで川を渡ったそうだが,その頃はそれが楽しかったそうだ。
街灯のない当時は,月夜でもなければ真っ暗だったはずである。そんな中をどうやって峠を越えたのか。会田さんの話では,特に灯りは持っておらず,雨降りでもなければ何となく見えたものだという。
きちんと整列して歩いて行くが,一昨年高速道路が開通してから,この道を通る自動車は激減した。
9:25 鬼峠越えスタート
ここから道道を外れ,峠越えに入る。
気持ちの良い林道を上っていく。
ストックが跳ね上げた雪などが,ころころとどこまでも雪面を転がっていく。
登り始めて40分,小休止し,現在地の説明を受ける。
途中,興味深い木々や動物の食痕にも出会う。
ダケカンバの巨木は,いちばん下の枝が折れていた。
10時40分,ハリギリの大木に到着。このあたりまで来ると,自然豊かな占冠の中でも,まったくレベルが異なる気がしてくる。
続いて,ミズナラの大木を通過。
木工作家の川邉さんが,立ち枯れした木について語る。
ミズナラの大木を過ぎたところから,勾配が急になるが,yさんの愛犬スダチさんが先に駆けていった。
Y字の分岐に差し掛かる。先頭を行くスダチさんは迷わず左折した。この辺りの山は知り尽くしているそうだ。
頂上まではあともう少し。
占冠を一望にする場所があった。
この先,道は植林帯の中に消え,細谷隊長が慎重に進路を見極めながら進む。
11時17分,見事にぴったり峠の頂上に出た。