何が怨念なのかというと,わたしはある理由からこれまでに支笏湖に行ったことがなかったのである。正しく言えば,深夜に通過したことは2回あるのだが,昼間に水面を見たことはなかった。
大学に入ったとき,まわりは道外出身者7割,札幌出身者2割,札幌以外の道内出身者1割と,道内の地方出身者は非常に肩身の狭い立場だった。
2年次になると,みんな免許を取りだし,中古の車を買って友達同士ドライブに出かけるようになったが,そのときも札幌出身者に影響されて,決まって中山峠や石狩そして支笏湖方面に向かうのだった。そして多くの学生は,そういう札幌の影響下におかれた北海道の狭い世界だけしか知らずに,4年ないし6年の学生生活を経て,再び道外へと去っていった。わたしはこのことが非常に面白くなく,中山峠や石狩,支笏湖は決して訪れるまいと思ったのである。
しかし,あの更科源蔵先生が「どんなことがあっても決して住むまい」(『熊牛原野』)と思った札幌の街で,結局は生涯の大半を過ごしたことを思うとき,わたしもいつまでも札幌を避けてはおられず,一度しっかりと支笏湖を見ておく必要があると思ったのである。ちょうど今日が札幌〜支笏湖間のバスの運行最終日であり,この機に支笏湖を訪ねることにした。
2006年10月9日(月・体育の日)
この連休はあいにくの天気だったが,最終日になってようやく青空が広がった。
平日なら激しく混雑する通勤電車。今日は空いている。
支笏湖へ向かう路線バスが通年運行されているのは,千歳からの道道支笏湖公園線のみである。まずはこのアプローチで支笏湖を目指す。千歳駅から3人の乗客があり,途中で1名加わったが,市街の外れにある病院を過ぎると,誰もいなくなってしまった。今日は支笏湖の紅葉まつりだというのにひどいものである。
直線区間が印象的な支笏湖公園線。
第一発電所バス停で降車。
王子製紙千歳川第一発電所
3日前,弐四四さんとえさんに会った際,支笏湖の見どころを尋ねると,両氏とも口を揃えてこの発電所だと言っていたので訪れてみた。
発電所の敷地にはきれいな散策路が整備されていた。入口には千歳川神社があったので旅の安全を祈願しておく。
取水口のある場所から発電所の建物を見下ろすことができる。壮観だ。この発電所は,王子製紙株式会社苫小牧工場に電力を供給するために明治43年に建設されたものだという。