北海観光節小さな旅行記鵡川源流を訪ねて

鵡川源流を訪ねて その5

セミナー「近自然学と河川再生の可能性」 18:00〜19:30

18時からは中央のコミュニティプラザに会場を移し,近自然環境セミナーが行われた。双民館から会場まで湯浅さんに車で送っていただき恐縮した。

今回のワークショップは「しむかっぷふるさとふっつくふくらむ協議会(ふふふ協議会)」が主催している。農林水産省の補助を受けて今年3月に設立された協議会で,占冠村,占冠村教育委員会,占冠村観光協会,占冠村商工会,占冠村農業経営研究会,アルファリゾート・トマム,森林人林業グループ,自然ガイドネットワークぷんぷか,しむかっぷ山菜を楽しむ会から構成されている。

まずは山脇先生の講演。昨年とはまた違う内容でわかりやすいお話が聞けた。太陽のような自然エネルギーは分散して存在しているので,集中利用するのは上手い方法ではなく,需要のあるところで小規模に利用するのが良いというのはその通りだと思った。

報告「15歳が見た近自然とスイス」 19:30〜20:00

昨年の近自然ワークショップに参加していたM君が,この夏単身スイスの山脇先生を訪ねた。丁寧に作り込まれたパワーポイントで,スイスの食と近自然について紹介してくれた。

地域素材のお料理交流会 20:30〜22:00

本日最後のプログラムは道の駅の「ミルクキッチンふらいぱん」での交流会。

乾杯。

店主のコーリー・ルックスさんは,中学生のときにアスペン市との交換留学で占冠に来たのがきっかけで,大学卒業後英語講師として再び占冠に赴任し,そのまま村に居着いてしまった方である。

 

 

占冠の野菜やエゾ鹿を使った料理の数々。ついつい手をつける前に写真を撮り忘れてしまうので,ここに紹介するのはこの日の料理の一部である。

交流会にはエゾ鹿ハンターの高橋さんも参加されており,いつもおっしゃることだが,命をいただくからにはともかくおいしく食べることを考えて捕っていると語っていた。ただ最近,占冠に来れば鹿肉のたたきでも何でも食べさせてくれると誰かに聞いて訪ねてきた人があって,困ったという話をされていた。こうしたイベントでは様々な形で鹿肉を提供しているものの,飲食店のメニューとして常時提供するにはいろいろ課題があるようである。

交流会は23時近くまで続き,宿泊者は双民館の宿泊棟へ向かった。

今日は3号棟に山本さんと清水のTさんとともに泊まった。

6時30分起床。

朝食はまた,「まあらあのくばん」のコッペパンとフレンチトースト。それにジャガイモのスープとトマトジュース,ヨーグルトにコーヒーが付き,大変おいしくいただいた。

2日目はワークショップ3「鵡川の河口を訪ねて」として,ニニウ,穂別ダムを経て河口のむかわ町でししゃも寿司を味わうというプログラムが組まれていたのだが,私は札幌で仕事があったため,残念ながら村営バスで双珠別を後にした。

最後に,今回のワークショップを通じて感じたことを3つだけ書いておきたい。

ふるさとを思う心

今回のワークショップの参加者や会って話を聞いた人の中で,生まれも育ちも占冠という人は意外と少なく,5人か6人だったと思う。ただ,そのうち3人がニニウ出身者だったことには驚いた。1人は3月の鬼峠フォーラムでお話を聞いた会田さんだが,もう2人は今回初めて話しをした方で,1人はドラマ「鬼峠」に出てくる「鈴木さんの家」で小学校3年生まで,もう1人は「鉄夫の家」で小学1年まで過ごし,ともに新入小学校閉校とともに中央に引っ越してきたという方だった。村民がこの種のイベントにあまり参加しない中で,なぜ参加したのかと聞くと,ニニウで育てられた祖父母の影響で地元に愛着を持っているのだと話してくれた。こうしてニニウで育った人たちがふるさとに愛着を持ちながら,いまも占冠に多く暮らしていることが,いまなおニニウが人を引きつけてやまない理由になっているのではないかと思った。

10年先を見ること

「ふふふ協議会」は10年計画でまちづくりをしていこうと設立された協議会である。ここにきてCO2の1990年比25%削減などという政策が打ち出され,いま日本人はまったく先が見えない状況に陥っているように感じるが,占冠は妙に元気である。単に高速道路の建設で景気が良いだけではなく,占冠の人たちはきちんと10年後を見ているのではないかという気がした。
このことについて議論をしてみたが,いま占冠が都会に比べて元気に見えるのは,もし石油がなくなっても,あるいはもし食料が輸入できなくなってもどうにかやっていけるという余裕から来ているようである。日本人1人が使う食料やエネルギーの調達のために必要となる土地の面積(エコロジカル・フットプリント)はどんなに少なく見積もっても2haだといわれているが,日本の生産能力のある土地の面積を人口で割ると0.24haにしかならない。残りは輸入に頼っているということだが,占冠だけで考えるなら,1人当たり40ha以上の土地があるのだから,たしかになんとかなるわけである。

変わり続けること

私も占冠に行くのはせいぜい半年に1度程度だが,来るたびに何かが変わっているでしょうと,今回のワークショップの企画者である山本さんに言われた。そのとき,イザベラ・バードが平取のアイヌ集落を訪ねた際,「初めのうちは魅力に幻惑されてその内蔵する味気なさが隠れて見えないが,やがて時が経つと初めの魔力も消えてしまう」(『日本奥地紀行』)と書いていたのを思い出した。私はどちらかというとこれまで,変わらないことの大切さを訴えてきた。伝統とは変わらないものを大切にすることであり,観光地としての魅力を増すには,変わらないことが一つの条件になるといまでも思っている。しかし考えてみると,そこに住む人,特に移住してきた人たちにとって,変化がないということは耐え難いことなのではないかだろうか。山本さんは,最近ようやく自信を持って他人に占冠への移住を勧められるようになったと話していたが,それは最近の占冠村が変化を続けていることが大きいのではないかと感じた。

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