北海観光節小さな旅行記雲海・ガーデンショー・ドライブインの旅

北海道ガーデンショー2

さて,いよいよ北海道ガーデンショーのメイン会場「デザイナーズ・ガーデン&コンペティション・ガーデンエリア」に進む。

受付で会場MAPをもらったが,いきなり順路がわかりずらく,いらだつ奥様方に係りの人が懸命に案内していた。

最初の作品は招待作家による「石の記憶」。なんだかよくわからない。

ドレスに見立てたというDress Gardenは花がきれいに咲いていたが,いかにもやっつけ仕事のように思われる。

森の中には奇怪なオブジェが点在していた。これらを見て,10年前に帯広競馬場で開催された「デメーテル」という現代アートのイベントを思い出した。十勝にはこういう現代アートを好む気質があるのだろうか。

私も懲りずに,横浜トリエンナーレなど現代アートのイベントをたびたび見に行くのだが,結局そこで何か深い感銘だとか生き方に影響を及ぼすような作品には出会ったことがない。

とりわけ,自然と一体化したアートというのはそもそも成り立たないのではないだろうか。建築もアートの一種であるが,建築と自然の融合ということはこれまでにいろいろ人が挑戦してきて,結局無理だという結論が出ているように思う。

アースガーデンからフォレストガーデンを経て,会場マップではいちばん端に記載されていた「幣のフィールド」にやってきた。会場入り口からここまで歩いて25分。

これはガーデンショー以前からある常設展示である。

  

今回会場の中で見た作品の中では,これがいちばんよいと思った。一般の人たちが粘土で作ったオブジェが苗木の周りに敷き詰めらていた。大学で芸術を学んだりしていない普通の人がつくる作品こそ見ていて面白い。

山が見えれば登ってみたくなる。次は「千年の丘」を目指した。途中「セグウェイ」の体験ツアーの人たちとすれ違った。

丘の頂上から会場を見る。

ガーデンショーのためにつくられた作品群の中で,一つだけ離れたところにある「時の彫刻−コロポックル」。土塁には買ってきた芝が張り付けられ,さっそくずれたりはがれたりしたところが出てきている。頂にはフキが列植されていたが,こういう日当たりも水はけも良いところでフキが育つわけがない。どう考えても植物をわかっている人の作品ではないと思う。

草花のタネが練り込まれた「土のたまご」。タイマグラばあちゃんの味噌玉,あるいは福岡正信師の粘土団子を思い起こさせるものがあるが,その下には砕石が敷き詰められている。これでは芽生えたタネも根付かずに枯れてしまうだろう。

メドウガーデン。こちらは下手なアート色がなく,植物を主人公としたもので,ようやくほっと一息つける空間であった。

北海道ガーデンショーのコンセプトには,

「『庭』は長い人類の歴史の中で,それぞれの国の自然,気候,文化,宗教,生活等と密接な関係を持ちながら,宴,交歓,権力の象徴,精神世界の表現等の場として独自のスタイルを構築してきました。効率化,都市化し自然との関わりを失いがちな現代において,庭の果たすべき役割も変化して来ています」

「北海道では,伝統的な日本庭園や都市型のデザインとも違う,『北海道の風土』に根差した新しい庭のスタイルが生まれ始めています」

などとある。これにはまったく同感で,北海道には伝統的な日本庭園や都市型のデザインとも違う独自の庭のスタイルがたしかにあったと思う。農家の庭や,昭和50年代くらいまでに開発された住宅地の庭は,北海道の気象条件や住宅に塀がないことも相まって実に美しいものである。しかし,そこからガーデニングへと至る過程で「育てる」という要素が失われたのだとしたら,非常に残念なことだと思う。ある意味現在の庭に対する意識レベルをよく表現している北海道ガーデンショーをきっかけとして,庭の意味がもっと深められていくことを望みたい。

次へ