標高600メートルを超える層雲峡温泉で,2月にまさかの雨である。
久々の層雲峡氷瀑まつり。過去には第12回,13回,15回に来ている。今年は第41回というから,実に26年ぶりだ。
ほとんどは東洋系の外国人観光客である。ただ,この氷瀑まつりに関しては,昭和の時代から中国人が多く,会場内に中国語が飛び交っていたのは当時としては新鮮だった。
会場の入り口付近では旅行会社や航空会社提供の氷塁が並んでいた。
氷瀑神社。
会場内は回遊できるはずだが,雨のため閉鎖されていた。
アイスチャペル。
架台の形は変わっているものの,鐘は第12回(1987年)の写真にあるものと同じと思われる。
小学5年生のときのこと。ある日,仕事場でお客さんと話をしていた父から,氷瀑まつりの写真を持って来てくれと頼まれて,意図がよくわからず一式持っていって渡したのだが,目的は鐘の写真であった。
当時父は,上富良野の日の出山公園で開催されていたラベンダー結婚式の実行委員長をしており,この氷瀑まつりの鐘を借りて結婚式に使うことにしたのであった。
いま,日の出山には立派な鐘が常設されているが,1987年からしばらくは,ラベンダーの季節だけ上川町から借りたこの鐘が設置されていた。こんなことを知る人もいまはもうあまりいないかもしれない。
仮設の売店は昔と変わらずだったが,フジカラー旭川で出していた,記念写真は売っていなかった。温泉街がまだ伸び盛りだった,1980年代後半の氷瀑まつりと比べると,やはり寂しくなったという感じは否めない。
雨はますます激しくなってきた。まつりの会場は早めに切り上げて,温泉で体を温めることにしたい。
気温は2℃。しかし,降った雨は,即座に凍りつく。階段の手すりや踏板は,摩擦抵抗がほとんどゼロの状態だ。こんなことは北海道に住んでいても初めてだ。手すりに縛りつけられた綿の網に手をかけて,ようやっとのことで階段を上った。
何とかキャニオンモールにたどり着いた。傘をたたもうとすると,布が板のように凍り付いていてどうにもならない。こんなことも初めてだ。気温はプラスだし,これだけ雨が降っていては,放射冷却も強くないだろうから表面温度が気温に比べて極端に下がることは考えられない。なのに,降ったそばから雨が氷るというのは,ありえない現象のように思われる。
調べてみれば,これは「雨氷」と言って,0℃以下の過冷却状態にある雨粒が,物に触れた衝撃によって凍結する現象だという。
黒岳の湯でさっと入浴。
氷瀑まつり期間中のみ運行されている,臨時バスで旭川へ戻る。乗客は3名だった。
終点,上川森のテラスバスタッチ到着。バスの車体も雨氷に覆われていた。
このあと,特急オホーツクの発車まで1時間と少しあるので,食事をしておく。
氷瀑まつりの入場記念ポストカードを提示すると,上川町ラーメン日本一の会の各店で割引が受けられる。
少し歩いて,あさひ食堂へ。一日20食限定の「幻の塩らぁめん」をいただく。
物産館のぐるめ工房「か夢かむ」も19時半を過ぎてまだ営業していた。何か寂しき旅人のために店を開けてくれているような気がして,少し買い物をしておいた。
AコープはDa*marche(ダ*マルシェ)というスーパーに変わっていた。店内にひと気はなく,会計は店員がしてくれるものの,お金は自分で機械に投入する方式でとまどった。人がどんどん少なくなる地方の町では,こうしてロボット化が進んでいくのだろう。
店内の一画ではチョコレートが安売りされていた。今日はバレンタインデーだ。最後に誰かからチョコレートをもらってから,今年でちょうど30年になる。この間,根本的に何も変わらぬまま時間だけが過ぎてしまった。考えてみれば,取り返しのつかない恐ろしいことである。
JR石北本線上川駅。旭川から50kmと離れていないにもかかわらず,非日常感に溢れる駅である。
悪天候の中,ほぼ定刻でやってきた。
旭川到着。本日の旅は終わり。