出羽神社三神合祭殿には相変わらず初詣の人の長い列ができていた。あと10分ほどでバスは出発する。列の進み方はそれほど遅くなかったが,どう見ても1時のバスには間に合わなさそうである。
大変残念だが,またいつか参拝に来ることを誓い,お札だけ授かって下山することにした。
帰りのバスは来るとき以上に混んでいた。
出羽三山神社で参拝できなかった分,鶴岡市街の神社で初詣をしようと思って,天満宮前でバスを下車した。天満宮前というからには,近くに神社があるはずだ。
八幡神社
バス停の少し先に見えた神社は,八幡神社だった。まずはここで初詣。「八幡さま」は武家の守護神で,全国的に見ると最も数が多い神社だという。
はて,天満宮はどこだろうと思って,道路の向かいを見ると,「伊勢両宮」「春日神社」「鶴岡天満宮」「八幡神社」臨時駐車場という看板があった。ここからそう遠くない範囲に,4つの神社があるということである。神社はたくさん参拝するとありがたみが減るというものではなく,いくつ参拝してもよいそうなので,時間の許す限りいろいろな神社を参拝してみようと思う。
こんなところで神社巡りをすることになるとは思っていなかったが,鶴岡市街の地形図は持ってきていた。地形図に神社の名前は記されていないが,鳥居のマークで神社のある場所だけはわかる。
八坂神社
鳥居のマークを頼りに歩いて,まず見つけた神社は,「祇園さま」こと八坂神社だった。イザナキが生んだ三貴士の末子,スサノオを祀る神社である。
さて,天満宮になかなかたどり着かない。
鶴岡天満宮
ようやく天満宮があった。菅原道真を祀る「天神さま」は,全国で3番目に多い神社だという。
学問の神様だけあって,合格祈願の絵馬がたくさん奉納されていた。合格にかけてか正五角形の珍しい絵馬もあった。
今度はそう遠くないところから,越天楽の音が聞こえてきた。音の聞こえる方角と地図を頼りに神社を探してみる。神社に夜通し灯りがついているのは,一年の中で今宵限りである。何だか神社を探すのがとても楽しくなってきた。こんなにわくわくとした気分を味わうのは,30年前,幼稚園で宝探しゲームをしたとき以来ではないか。
春日神社
藤原氏の氏神,春日大社を中心とする春日信仰。この春日神社も,歴史を感じさせる社殿だった。
伊勢両宮
伊勢神宮内宮の祭神・天照大御神,外宮の祭神・豊受大御神を併せて祀る神社。立派な神符守札授与所があった。
眠り静まった住宅街をばっさばっさと駆け抜ける。忍者か妖怪に間違えられても仕方がないが,今宵限りは許されたし。
鶴岡護国神社
鶴岡公園の一角にあった護国神社。明治以来の戦没者の英霊を祀る神社だが,拝殿は江戸時代に造営された酒井家10代藩主酒井忠器の御霊廟だという。
荘内神社
鶴ケ岡城の本丸址に鎮座する荘内神社。庄内藩の歴代藩主を祭神としている。
時刻は3時を回り,さすがに市内筆頭格の神社いえども,参拝者の姿はまばらとなった。
御城稲荷神社
八幡さま,お伊勢さん,天神さまに次いで多くの神社がある「お稲荷さん」。ここのお稲荷さんは宝永5年(1708)の創建で,鶴ヶ岡城が取り壊されたときも,庶民の信仰が厚かったため,廃社を免れたという。
山王日枝神社
日吉神社の系統に属する神社。この地域では「山王様」「お山王はん」として古くから親しまれてきたという。広い境内を持ち,雰囲気のいい神社だった。
社務所では,地域の人たちが和やかに語り合っていた。どんな御守りがあるかと思ってのぞいてみると,わざわざ係りの人が出てきたくれた。先ほどから,通勤用の御守り,旅行用の御守り,玄関に置くうさぎの木彫りなど,それぞれの神社でなにがしかの縁起物を授かってきたのだが,そろそろネタもなくなっていた。しかし,せっかくなのでまたお札をいただいておいた。
さて,列車の時刻が近づいてきたので,駅へ急いだ。