北海観光節旅行記秋の湯殿山・尾瀬

1. 古牧温泉

2015年9月18日(金)

今年3月27日,JR旭川駅に直結するイオンモール旭川駅前が開店した。駅周辺や買物公園への影響は,いまのところ様子見の段階であるが,思いのほか買物公園の既存店が検討しているようにも見える。旭川西武もしばらくは大丈夫だろう。

駅の内外では,明日から始まる「北の恵み 食べマルシェ」の準備が進んでいた。例年3日間の開催のところ,6回目となる今年はシルバーウィークに合わせて5日間の開催だという。店を出すほうも大変だ。

旭川19:55発→札幌21:20着 特急スーパーカムイ44号

このあとの特急スーパー宗谷でも間に合うのだが,余裕を持って1本前のこの列車に乗ることができた。

車掌さんは,列車通学していた高校時代に見た覚えのある方だった。当時はツンとした青年車掌だったのが,いまやすっかり好々爺なのだから,時の過ぎる速さが嫌になる。

札幌22:00発→青森6:19着 急行はまなす

どれだけ前から並んでいたのかという,はまなす自由席の列車待ちの光景は健在だった。

急行はまなすに乗車するのは,2012年の年末以来2年半ぶりとなる。2013年に相次いだ特急北斗の出火事故以来,JR北海道の疲弊ぶりは痛ましいものがあり,はまなすに乗車するのを気兼ねしていたのである。

それで,苫小牧〜八戸便のフェリー利用も考えたのだが,フェリーの船員もなり手不足が深刻だとの記事が新聞に掲載された。いまやどの交通機関も,さして状況は変わらない。

今年に入ってからJR北海道が強引に進めようとしている,駅や路線の廃止,列車本数の削減も,根本的な原因は人手不足にあると思われる。経営が改善したところで,駅を除雪する人や線路を保守する人がもう沿線に住んでいないのである。老朽化した車両の更新についても,電車はともかく,気動車を作る技術は日本からなくなりつつあるのではないだろうか。

「乗って守ろう」などと言ったのは昔のことで,このままいけば近い将来,戦時中のごとく不要不急の旅行の自粛を迫られることは目に見えている。そうならないように,人口が減る中で交通をどうしていくかを真剣に考えなくてはならない。

8月の寝台特急「北斗星」廃止後は,全国で唯一のブルートレインの名残を留める列車として急行はまなすに注目が集まっており,繁忙期には指定券が取りにくくなっている。

 

寝台車は発売とほぼ同時に売り切れたようだが,運良くキャンセルで空席が出たところを押さえることができた。ただ,最大編成には1両満たない11両編成で,盆暮れ正月の賑わいには至らないように見えた。

寝台の下段には,定年間際と見られる商社のサラリーマンが,あぐらをかいて向き合っていた。

カーテン越しに聞こえてくる東北訛りの語らいには,旅立ちにふさわしい旅情を感じたが,「ゆっくり休もうや」と言いながら,いつまでも話は続き,非常用に携行していた耳栓を使うはめになった。

2015年9月19日(土)

新幹線工事の影響で,青森駅には本来の時刻より40分遅れて6時19分到着。急行はまなすは新幹線の函館延伸によって廃止されることが決定しており,連絡船時代から100年余りにわたって毎日繰り広げられてきたこの青森駅での乗り換え風景も,あと半年で見納めだ。

新幹線,在来線とも,階段を渡ったホームからの乗り換えだった。

青森6:25発→三沢7:31着 青い森鉄道 八戸行き快速列車

はまなすから乗り換えた乗客は,一様に目がうつろで呆然としており,やがて座席に倒れ込んでいた。いまの時代にあっては異様な光景だ。

今日から3日間はJR東日本の三連休乗車券を使う。新幹線,特急は別に料金が必要になるので,なるべく普通列車を使うことにする。

 

まずは体をきれいにするため,温泉のある三沢駅で下車。

駅の横に「電車・バスのりば」があった。忘れかけていたが,三沢からは十和田観光電鉄という私鉄線が出ていたのだ。その全駅乗降などをやったのももう13年前のことだ。

てっきり廃線になったものと思っていたが,はて,まだそば屋も営業している。

ホームもそのままだったが,やはり線路ははがされていた。

古牧元湯

まだ駅の構内かというような駅至近にある古牧元湯。

 

古牧温泉もいつの間にか星野リゾートの経営となっていたが,元湯は公衆浴場の雰囲気を残し,早朝から深夜まで営業している。経営が変わる前の末期には,うす暗い中で警備員が番台に座っている状態だったが,雰囲気もずいぶんと良くなった。

ちょうどはまなすが函館本線を南下していた頃,安全保障関連法案が可決・成立したようである。大型連休を前にしたすべり込みでの決定は,一昨年の御用納めの日に行われた辺野古埋め立て承認を思い出させる。

いまの日本の鉄道の情勢を見ても,世界大戦参戦前の昭和14,15年ごろとよく似ており,本当に気を付けなければならない。何かがおかしいと,皆がどこかで思いながらも,経済のため,会社のためにと,どんどんおかしな方向に進んでいったり,どうでもよいことに労力が注ぎ込まれたりする。もう破滅に至るのは不可避ではないかと思わないでもないが,草の根から声を上げていくことを大事にしたい。

 

北海道ではありえないポスターに,青森に来たのだということを実感する。

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