2020.6.20全面改訂(2000.8.28新規作成,2003.4.6改訂)
根室本線 その1
[滝川→新得]
448.8kmに及ぶ北海道一長い路線・根室本線。滝川~新得間は1981(昭和56)年の石勝線開通により道東への主要経路から外れたが,交換駅の長い有効長や重厚なプラットホームに幹線の趣を残す。一日散歩きっぷ,道北一日散歩きっぷ,ラベンダーフリーパスなどの乗り放題エリアにも入っており,気軽に途中下車の旅を楽しむことができる区間でもある。
2016年8月の大雨被害により東鹿越~新得間で代行バス運行が続くが,湖畔の東鹿越駅での乗り換えはいまだからできる体験。各駅や山あいの集落を結ぶバスとも組み合わせながら,かつての大幹線のいまを楽しみたい。
根室本線[滝川→新得]の概要
●歴史
滝川~富良野間に空知大滝の難所があったため,道東への最初の鉄路は現在の富良野線が十勝線として南へ延びていった。旭川駅が1898(明治31)年に開業した後,十勝線は1900(明治33)年8月下富良野(現在の富良野)に達し,落合にはそれからわずか1年あまりの1901(明治34)年9月に延伸している。1907(明治40)年9月,峠越えの区間が竣工し,旭川~帯広間の十勝線が全通した。
一方,滝川~富良野間は,1911(明治44)年に下富良野線として着工,1913(大正2)年開通した。同時に滝川~釧路間を釧路本線と改称,1921(大正10)年釧路~根室間の開通により根室本線の名がついた。
1927(昭和2)年,狩勝峠の車窓が日本新八景に選定。しかしながら,峠の狩勝隧道は蒸気機関車の乗務員にとって命がけの難所であり,最急勾配を25‰から12‰に緩和した新線が1966(昭和41)年に開通した。また同年金山ダムの建設により鹿越駅が廃止,その前後のルートが切り替わっている。
1981(昭和56)年道央と釧路方面を短絡する石勝線が開業し,本区間を運行していた特急,急行列車の大多数が石勝線を経由することとなった。また,赤平,芦別の石炭輸送は1960年代に全盛期を迎えたが,1989年3月三井芦別鉄道の廃止により石炭列車は姿を消した。
折しも石勝線開通の年にフジテレビでドラマ「北の国から」が放送され,富良野は一躍全国区の観光地になる。スキーの流行も重なり1986(昭和61)年12月特急フラノエクスプレスが運行開始。夏はラベンダー,冬はスキーと,リゾート列車が行き交う賑やかな線区になった。
2016年8月の大雨被害により,東鹿越~新得間でバス代行が続いている(2020年6月現在)。また,同年11月にJR北海道が発表した維持困難線区のうち,特に利用が少ないとされる3線区に富良野~新得間が含まれている。
●車窓
滝川から石狩川の支流・空知川を延々100キロメートル以上さかのぼる。上芦別までは産炭地を行く。街道沿いに細長く続く市街地や,広い駅構内に往時の名残をとどめる。野花南~島ノ下間は空知川の渓谷が素晴らしかったが,滝里ダム建設のため1991年新線に切り替えられ,長いトンネルで通過することとなった。トンネルを抜けると富良野盆地の農村風景となる。晴れていれば十勝岳連峰や芦別岳が見える。
山部を過ぎると空知川の峡谷も狭まり,駅ごとに山あいの集落が点在する。落合で長く車窓に寄り添ってきた空知川の本流は尽き,その先の上落合信号場で石勝線と合流,新狩勝トンネルと過ぎると十勝側に明るい展望が開ける。石勝線の特急は一気に下るが,普通列車はいくつかの信号場に停まりながらゆっくりと下っていく。
全般に新得に向かって左側の車窓が優れている。
●運行系統
定期列車は全列車普通・快速列車で,夏の観光シーズンに札幌と富良野を結ぶ臨時特急が運行されている。
2016年3月のダイヤ改正で列車本数が削減され,下りは滝川を9時台に出る列車のあと15時台まで約6時間の間が空いている。
2016年8月の大雨被害により東鹿越~新得間は代行バスによる運行となっている。基本的に滝川~東鹿越間は従前の列車ダイヤそのままに,列車に代行バスが接続しているが,早朝深夜帯の一部列車と旭川から直通していた下り快速狩勝は代行バスが設定されていない。なお,代行バスはサホロリゾート前で停車するため,ベアマウンテンや旧新内駅へのアクセスが可能である。
滝川9時台発の釧路行き普通列車は308.4kmを8時間以上かけて走破し,日本一長い距離を走る普通列車として知られていたが,不通区間によって系統が分断されている。代行バスを利用して乗り通すことは可能である。
滝川~富良野間では季節運行ながら貨物列車が走っており,「ふらのベジタ号」の愛称が付けられている。
●利用状況
野花南~富良野,落合~新得に振興局界がありこの区間をまたぐ定期利用は少ないが,滝川~芦別~赤平,富良野~幾寅間で通学利用がある。都市間バスが札幌~富良野,旭川~富良野~帯広間で運行されているものの,早朝・夜間帯はバスの便がないため,ビジネス利用も少なからずある。夏の観光シーズンには,滝川~富良野間が列車によっては混雑する。
落合~新得の峠越えの区間も,平常時は乗客がいないことが珍しくはないものの,行楽,帰省の時期には座り切れないほどの混雑を見せ,近年は外国人旅行者で平日も賑わっていた。しかし,2016年一部代行バス運行となってからは,乗り換えを敬遠してか旅行者は激減している。
●車両
基本的にキハ40形が使用されている。代行バスはふらのバスが運行している。
それでは,根室本線各駅停車の旅をお楽しみください