2020.1.4全面改訂(2000.8.19新規作成,2005.8.31全面改訂)
札沼線
(愛称・学園都市線)
「学園都市線」という愛称から私鉄と思われることもあるが,もともとは札幌と留萌本線の石狩沼田をつないでいたローカル線である。札幌近郊では通勤・通学に利用されており,石狩川を渡ったあとは一転して田園を行くのどかな車窓となる。特に1995年の一日散歩きっぷ発売以降,札幌から比較的近いところで非日常的雰囲気を味わえる路線として,多くの人々に癒しや思い出を与えてくれたが,2020年5月,北海道医療大学~新十津川間が廃止となった。
札沼線の概要
●歴史
札沼南線,札沼北線として桑園,石狩沼田の両側から建設が進められ,1935(昭和10)年10月3日に全通した。北竜,雨竜,新十津川,浦臼,月形,当別という石狩川右岸の穀倉地帯を貫く路線であり,ときには災害で不通となった函館本線の代替ルートとしての役回りを務めることもあった。戦時中は資材供出のため桑園-石狩当別間を残して運休。1956(昭和31)年までに全線復活したが,赤字線廃止勧告により1972(昭和47)年6月18日,新十津川-石狩沼田間34.9kmが廃止された。
昭和50年代以降沿線のベットタウン化が進み,大学の移転もあって,桑園-北海道医療大学間は都市圏の輸送を担う線区へと変貌した。1986(昭和61)年11月1日に新川,太平,あいの里教育大の3駅が新設,1991年3月改正では「学園都市線」の愛称が付けられた。複線化,高架化も進められ,2000年3月改正で八軒-あいの里教育大の複線化,桑園-太平の高架化がひとまず完了している。さらに2012年6月には桑園-北海道医療大学間が電化された。
以前より北海道医療大学以北は道内有数の閑散線区であったが,ついに2018年12月鉄道事業廃止届を提出,2020年5月6日が同区間最後の営業日となった。なお,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,4月17日の新十津川10:00発の列車が最終列車となり,以後5月6日までは運休とされた。
●車窓
札幌から桑園までは複線の函館本線とは別にもう1本ある札沼線専用の線路を走る。本線から分岐すると,左遠方に手稲の山が見えてくる。八軒,新川,新琴似と似たような造りの高架駅を通過する。車窓は右も左も雑然とした住宅街である。ただ背の高い建物がないので見通しはとてもよい。
あいの里公園-石狩太美間で石狩川を渡ると,石狩平野の農村を延々北上する。石狩当別からはおおむね国道275号に沿うが,この道路は札幌から道北方面への裏街道として交通量も多い。(以降,廃止区間)列車は速くても65km/h程度でゆっくりと走り,線路沿いには水芭蕉など美しい野の花も見られる。国道よりも近いところに自然があるので,夏なら列車の窓を開けて里山の空気を吸い込みたい。
月ケ岡,豊ケ岡,鶴沼の前後で10‰程度の小さな丘越えがあるほかは極めて平坦な路線で,桑園と新十津川の標高差は17mに過ぎない。
石狩当別までは右の車窓も左の車窓も大差ないが,その先は石狩平野の西端を走るため,新十津川に向かって右側の車窓が優れている。
●運行系統
線内は通過駅がなくすべて列車が運行区間内の全駅に停車する。また桑園側ではすべての列車が函館本線に乗り入れ,札幌駅に直通する。2012年の電化により札幌以遠への乗り入れも容易となり,新千歳空港に直通する列車も設定されている。なお,電化以前にもキハ201系気動車を用いた江別直通の系統が存在した。
札幌駅では基本的に9,10番線を使用し,おおむね20分おきに発車する。行先はあいの里公園行き,石狩当別行き,北海道医療大学行きの3種類で,非電化区間に直通する列車はない。
(以降,廃止区間)北海道医療大学以北の非電化区間を運行する列車は,石狩当別から新十津川まで1往復,浦臼まで5往復,石狩月形まで1.5往復が設定されている。この区間で列車の行き違いができる駅は石狩月形のみである。
●利用状況
札幌-北海道医療大学間は複線化,電化により輸送力増強が図られてきたものの,総じて混雑している。通勤通学の時間帯のほか,昼間でも座れない人がいることが珍しくない。なお,札幌-北海道医療大学間の各駅はICカード乗車券に対応している。
(以降,廃止区間)北海道医療大学以北もそれなりに地元の利用者はおり,冬に駅が雪で埋もれてしまうようなことはない。休日には一日散歩きっぷの利用者で賑わうものの,たいていの人は石狩当別-新十津川を乗り通し,わずかに本中小屋で降りて中小屋温泉を訪れる人がいる程度である。北海道医療大学以北の廃止が決定してからは,特に休日の新十津川直通系統に混雑が見られるので注意が必要だ。
●車両
かつては,50系客車を改造したキハ141系,キハ40形300番台,330番台,キハ48形300番台,1330番台など独特の車両運用が見られたが,現在は札幌近郊の他線区と共通の運用となっており,電化区間では721系以降の普通形電車が3両または6両の編成で運用されている。
(以降,廃止区間)石狩当別-新十津川間は除雪が十分に行き届かない区間を1両で走行するため,従来から強馬力の気動車が使用されており,1996年3月改正からキハ53形500番台に代わってキハ40形400番台が入っている。なお,この置き換えの際に石狩当別以北はワンマン化された。
それでは,札沼線各駅停車の旅をお楽しみください