石勝線

占冠 しむかっぷ 委託駅
勇払郡占冠村字占冠
昭和56年10月1日開業
標高320m  62人
2面3線
南千歳より77.3キロ
新夕張より34.3キロ
清風山(信)より10.0キロ
委託窓口735-1525
土日祝735-1500
(1245-1345休憩)
200.4.1.10乗車

●清風山(信)→占冠の車窓


第2ニニウトンネルを通過するとパンケニニウ川を渡る。この川の上流では戦時中にクロームが採掘され,学校までできたというが今では跡形もない。そして川沿いに走っている道路が道道136号夕張新得線である。この林道は夕張−占冠界で道が切れており,ライダーによる通り抜け報告が幾例かあるものの,川渡りがあるとか絶壁があるとか文章で伝えられるのみの,伝説化した林道である。
 


右手には高圧送電線が走っている。昭和41年まで電気もなかったニニウに,北海道を横断する電気の幹線が通過しているのは皮肉である。
 


次に第3ニニウトンネルを通過すると,ペンケニニウ川を渡る。この下を通っている林道はニニウ自然の国のサイクリングロードで,全国でもまれに見る未舗装のサイクリングロードだという。もしかすると上を見上げて手を振っている家族連れが見えるかもしれない。この2km南に占冠村サイクリングターミナルがある。鬼峠トンネル採掘中に発見された温泉も引かれているので,機会があったら立ち寄ってみたい。
 

Village Japan : the four seasons of Shimukappu / photographs by Nicholas DeVore III. - New York : Weatherhill , 1993無断転載・複製を禁止します

ペンケニニウ川を渡るといよいよ鬼峠トンネル突入である。ニニウに自動車が入れるようになったのは昭和35年。それまでは「鬼峠」を越えて本村へ出ていた。その名前から察せられるように非常に険しい山道だった。今は人家も見えないこの川沿いにもかつては農家が点在していたわけだが,昭和41年に石勝線の建設工事が始まるまではランプ暮らしで,冬季にはまったく交通が遮断されるため乾物・保存食の生活を送っていたというところである。その暮らしぶりは様々な書物にも描かれ,昭和59年には「鬼峠」というテレビドラマが放送された。現在ニニウに農家はなく,旧農地が「ニニウ自然の国」として整備されている。夏には蛍が乱舞する素晴らしい自然とともに,廃屋など開拓の跡が,貴重な歴史・文化遺産として残っている。
 

鬼峠トンネルニニウ側入口 鬼峠信号場跡 鬼峠トンネル占冠側入口


鬼峠トンネルは石勝線工事においても「鬼」である所以を見せつけた。石勝線で最も難工事が予想されたのは新登川トンネルだったが,実際にいちばん難儀したのは鬼峠トンネルだった。
掘れども掘れども進まない。現場の作業員たちは「畜生,鬼峠め」とうめいた。そして昭和43年5月17日午前2時10分メタンガスによる爆発事故が発生した。死傷者8名に及ぶ事故となった。
また石勝線は大部分国有林であり用地取得はスムーズに行われたが,唯一問題となったのが鬼峠トンネルだという。石勝線建設工事誌には「民有地で買収できなくて,着工できなかったケースがただ1件あって,それは鬼峠トンネルの入口なんです。あの山中に強硬な地主がおりました」とある。
1999-2000年の冬には清風山信号場−占冠間で原因不明の列車の窓ガラスひび割れ事故が相次いで話題となったが,これも鬼の仕業かもしれない。
トンネルの中には鬼峠信号場が設置されたが,昭和60年に廃止となっている。信号場跡は今でもトンネル中央部で南側に広くなっている部分があるのでわかる。
 

さて,鬼峠トンネルを抜けると占冠駅は近い。鵡川の清流越しに占冠の中央市街が見えると,線路は少し北へ進み字占冠にある駅に着く。なお,新夕張駅−占冠駅間の駅間距離は34.3kmで,全国最長である。

●占冠駅

しばらくぶりの大きな駅で,委託駅員がいるほか,保線の施設もあり石勝線の駅の中でも重要な位置付けである。特急からこの駅に降り立つと何となくさわやかな気分になる。山村の空気は澄んでおり,240mの長いホームはすがすがしい。1両か2両のディゼルカーで田舎町を訪れるのも良いが,特急で降り立つというのもまた良いものだ。ドラマ「鬼峠」でも最初と最後のシーンが占冠駅だったと思う。
この駅の時刻表には特急列車しか掲載されていない。昔は急行列車もあったがともかく普通列車は運転されていない。普通列車を運転するには駅の間が長過ぎるというわけである。私は石勝線開通直後の昭和56年10月に占冠駅を訪れているが,4才の子供の眼にも,ズラリと赤い列車名が並ぶ時刻表が印象に残った。
私の実家は上富良野だが,東京の親戚が千歳空港から占冠まで列車で来るので,占冠駅まで送り迎えしたことも何度かあった。このように占冠駅は占冠の住民以外にも利用されており,日高町では富内線廃止に伴い,日高−占冠間のバスを増発した。駅を出るとたいてい日高町営バスが待っている。このほか,占冠村営バスが富良野行(3往復)とトマム・落合経由幾寅行(2往復・日曜運休)の2系統で運行されており,列車と組み合わせると行動の幅が広がる。
待合室には村の広報が何ヶ月分か置いてあり,暇つぶしに読むと楽しい。また,委託駅員の女性は親切で,駅ノートの書き込みを読むのを楽しみにしているという。時間があったら旅の思い出をつづってみよう。

待合室には黄色い蛍光灯が灯る。 左:待合室,右:駅事務室 ドラマ「鬼峠」にも登場したホーム。

●見どころ

□物産館

占冠駅前にあり,お土産を買うのに最適。占冠オリジナルのおいしい食べ物がいっぱい。特におすすめは蕗クッキー,蕗ようかん,熊肉・鹿肉の缶詰。山菜も手ごろな値段で多くの種類がある。民営なので,トイレやごみ捨てだけの利用は遠慮しよう。(2003.10訪問)

▽郷土資料室

もともと2階の一室が展示室となっていたが,平成11年郷土資料室として改めてオープンした。無人。(H11.11訪問)

▽レストランメープル

物産館2階のレストラン。きっちん占山亭にかわって,2003年12月にオープン。手ごろな値段で粋な料理を味わえる。定食のほかラーメンもあり。 (2004.1食事)

ありし日の占山亭。占山亭は1998年6月オープン。寒村にあってひと際暖かな光を放っていたレストランであったが,店長さんは年齢的なこともあり,中途半端な仕事はできないということで惜しまれつつも2003年11月に閉店した。

 


占冠村には「占冠」と「中央」という2つの大きな集落があり,駅があるのは「占冠」のほう。中央へは駅から国道を南(右)へ1.5kmほど。

占冠村字中央。 鬼峠から中央市街を俯瞰する。

□道の駅自然体感しむかっぷ

国道を南に1.5km。生活情報センター・ショッピングモール。建物が整備されたのは1996年ごろだが,2000年8月に道の駅に指定された。トイレはきれい。ショッピングモールにはスーパー,電気屋,レストラン,お土産屋など5店舗が入っている画期的な施設で,酷寒の村の商店街のあり方を提案しているように見える。ここのレストラン「ミルクキッチンふらいぱん」は雰囲気が良い。(2000.8訪問)

□コミュニティーセンター

ショッピングモールの裏手にあり,セットで整備された建物。過疎の町らしく,平屋建てのゆったりとしたスペースが心地良い。図書館があり,村の図書館とは思えないほど充実している。次の列車まで時間があったらぜひ訪ねてみよう。(H11.1訪問)

□赤岩青巌峡

駅から7km。貸し自転車の利用が便利。層雲峡にも匹敵し内陸では道内随一の景勝地ともいわれる。巨大な赤い岩と青い岩がごろごろしており,紅葉の時期は最高。赤岩橋は昭和35年に完成。昭和37年の洪水では赤岩橋の上まで川の水位が達したというから驚き。ロッククライミングのメッカ。ラフティングの起点であり,いつもツアー客で賑わっている。ローソク岩などを巡る遊歩道があるが,熊が出そうで怖い。2001年から,赤岩トンネルの工事が始まったが,工事の影響で土砂崩れが発生し,赤岩の絶景が台無しになった。

□湯の沢温泉 占冠村農業者センター

国道237号を富良野方面に7km。富良野行きの村営バスの利用が便利。一日3本,全国版時刻表にバス時刻の掲載がある。国道から立派な橋を渡り堂々とした入口広場を持つ。冷泉。湯の沢は昔炭焼き部落のあったところで,山間の雰囲気は趣深い。浴槽には熊の口がら湯が注がれており,子供に人気。「たまには娘と・はじめてパパと しむかっぷル!」というリーフレットが秀逸。なお,村営バスでは金山峠を越えて金山駅で根室本線に乗り継ぐことができる。

日帰入浴1130-2100 無休 360円

(信)清風山 北海道駅前観光案内所 (信)東占冠