バスで上トマム市街に戻り,ペンションイング・トマムで昼食をとった。占冠村商工会の会長でもあるオーナーの夏井氏から,100%占冠産の食材を使ったご当地グルメの売り出しを目下画策中とのお話しがあった。
太平洋・島サミットを経て,占冠の人たちは大きな自信をつかんだようだとある人が言っていたが,今回のワークショップもそうだし,ご当地グルメの企画にしても,村全体がいま非常に前向きになっているように感じる。
昼食には占冠産エゾ鹿のハンバーグ。
13時30分,イング・トマムを後にし,上トマムから,中トマム,下トマムとバスで鵡川沿いを下っていく。写真の場所は下トマムの中心部で,かつては駅逓や営林署の担当区,簡易郵便局,開拓診療所が並んでいたというが,いまその跡を見つけるのは難しい。
バスはポロカトマム川の入り口で停車した。
「占冠村史」よりホロカトマムの砂金掘りの景
ホロカトマムは夢の世界,憧れの世界と呼ばれた砂金産出地で,明治から昭和の初めまで大規模な砂金採取が行われた。戦後は農業開拓者が入り,昭和30年から同45年まで下苫鵡小学校ホロカ分校が置かれたが,このことも忘れられつつある。
バスは次にユウベノ沢分岐点の近くで停車した。ここには鵡川本流に設置されたものとしては村内で唯一の堰堤がある。下流側の道路の浸食を防ぐ目的で設置されたものではないかという。
こうしたちょっとした堰であっても,魚には大きな障害となるが,条件の良いときにはサクラマスの遡上も見られるという。
14時15分,字占冠に入り,名橋占川橋のたもとで下車した。この先の鵡川は一時期トマム川と称していたが,いつの頃からか鵡川の名に戻され,地形図にも鵡川と記載されるようになった。源流から河口まで全部鵡川になったから,こうしたツアーも企画されるようになったわけで,本当に良かったと思う。
字占冠市街のすぐ裏手にあたるが,ここでも鵡川はかなり自然に近い状態で流れている。自然の丸い石が厚く積み重なった河原もいまでは珍しくなった。先月は大きなサクラマスのホッチャレが見つかり村で話題になったという(右の写真はその再現)。
次に山女魚養殖場を訪ね,管理している会田氏の説明を聞いた。
山女魚(やまめ)とは,俗にヤマベと呼ばれていた川魚で,サクラマスのうち海に下らず一生を川で過ごす個体をヤマメというのだそうだ。森林での殺虫剤散布や鵡川の水量減少により占冠では長い間サクラマスの遡上が見られなかったが,長年の放流の成果が実り,一昨年から再び遡上が見られるようになったとのこと。
養殖場のすぐそばでは,開通間近の高速道路が頭上を横切っていた。ここは高速道路建設前の埋蔵文化財調査で,4000年前の鹿漁の遺跡が見つかった場所だという。
シム川はヤマメが多く,かかる橋も「やまめばし」と名付けられていた。
シム川上流のヤマメ産卵床に向かう。
占川3号橋から産卵床を見下ろす。見える人にはヤマメがたくさん見えたらしかった。