北海観光節小さな旅行記芦別の北のほう

芦別の北のほう その1

2014年5月18日(日)

この春,芦別がにわかに熱くなっている。NHK連続テレビ小説「花子とアン」で注目されている『赤毛のアン』をテーマにした公園,「カナディアンワールド公園」が芦別にある。そして,オール芦別ロケの映画「野のなななのか」が5月から全国で上映されている。

芦別市は,実家の上富良野から見て隣町みたいなもので,子供のころから家族で札幌に行くとき,あるいは札幌での学生時代の帰省のときなど100回以上は通っていると思うが,通るだけであって,きちんと見る機会はあまりなかった。特に,野花南,上芦別,頼城といった市の南部は通るだけは何度も通っているのだが,油谷,黄金,新城など市の北のほうは,通ることすらそんなになかったので,この機に訪ねてみることにした。

その1
(本ページ)
深川,神居古潭,新城峠
その2 新城界隈
その3 黄金水松,黄金本通
その4 カナディアンワールド公園前半
その5 カナディアンワールド公園後半,芦別温泉
その6 油谷,旭,旭ヶ丘公園
その7 北海道天徳大観音前半
その8 北海道天徳大観音後半
その9 芦別市街
その10 上芦別,帰路

旭川8:25発→深川8:43着 特急スーパーカムイ12号

芦別に行くなら,中央バスの芦別行きに乗れば簡単なのだが,せっかくなので未成となった国鉄芦別線のルートで向かってみる。

深川駅では朝から駅弁屋さんが店を開いていた。今日は飢餓旅行になる可能性があるので,弁当とウロコダンゴを買っておく。「駅弁マーク」付きの正規の駅弁は番屋めし(土日限定),助六寿司,幕の内の3種類。いまどきまったく貴重なことである。

いつの間にか洋風の街並みになった駅前の商店街。深名線代替のJRバスのほかは駅前にバスが乗り入れしておらず,十字街まで少し歩く。

深川十字街9:01発→神居古潭神社前9:19着 空知中央バス 深旭線

神居古潭の分岐まで,いま乗ってきた函館本線に沿って戻る形になる。


ニューエスト北海道道路地図帖(1967)

芦別線は,芦別の石炭を留萌港へ搬出することを第一の目的として建設が進められた未成線である。根室本線は石勝線がなかった時代,道央と帯広,釧路を結ぶ大動脈であって,加えて赤平,芦別の炭鉱を抱えており,1本の線路では各駅の交換設備と今はなき一ノ坂,幌岡,高根の3信号場をもってしても容量が逼迫していたのである。

芦別線は1957年に工事線に昇格,芦別側では実際に工事が相当進んで,1968年には芦別〜新城間の路盤が完成している。

道道ではあるが,2車線の広々とした道を旭川方面に向かう。

納内は1963年に深川合併するまで独立村で,駅前には商店街が残っている。芦別線はこの納内が分岐駅になる計画だった。

通信制のクラーク国際記念高等学校の北海道本校。

 

庭先のチューリップや水仙がきれいな農家,水田に浮かぶような農家と,素朴な田園風景が続く。

道道旭川深川線と国道12号の合流点にあるのが,神居古潭神社前バス停。ここで芦別行きのバスに乗り換えとなる。

神居古潭神社に参拝しておく。神居古潭とはアイヌ語で神の里の意味だから,すごい場所にある神社だ。

神居古潭神社前9:31発→新城9:50着 北海道中央バス 芦旭線

ほぼ定刻でバスがやってきた。芦別と旭川は昔から経済的な結びつきがあるとはいえ,中央バスでの運行が続けられているのはいまや奇跡的である。

まもなく国道から分かれ,道道4号芦別旭川線に入る。西に火山・イルムケップ山,東には人を寄せ付けない幌内山地に挟まれた,地峡のような場所をこれから通っていく。

更進といういかにも開拓地らしい名の集落。郵便局のある小市街をなしており,深川市中心部を結ぶ路線バスも入っているので,時間帯によってはここで芦旭線との乗り換えも可能である。

新城峠に至るまで,珍しく川が郡境になっており,橋を渡るたびに旭川市と深川市を行ったり来たりする。ここは,旭川市内で最も西側にある集落・豊里の小中学校跡。2006年3月に閉校し,校舎は障害者の授産施設として利用されている。

バス停の名もいよいよ開拓の前線らしくなってくる。

農家の前の立派に木には「杉」と書かれた札が付してあった。開拓者が郷里の越前から持ち込んだもので,旭川市の指定保存樹木にもなっているという。後ろの住宅も北海道では珍しい縁側が設けてある。

深川で最も奥地に位置する菊丘の入り口。1966年に菊丘湯の花温泉が営業を開始しているが早いうちに廃業したようである。この辺はほかにも沖里河温泉鳩の湯,深川温泉観光ホテルなどがあって温泉の出る土地らしいが,ことごとく廃業している。

そして,ちょっと上りにさしかかったかと思うと,もう峠の頂上である。新城峠は標高200m足らずで峠と呼ぶにはあまりにもあっけない。

 

しかし,峠からの眺めは雄大で,峠を越えた瞬間,ぱっと景色が明るくなる。山の北斜面と南斜面の違いだろうか。

深川側は随分前に水田が消えていたのに,芦別川は峠の頂上から水田に水が張られており,まるで天水田のようだった。

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